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ヤキモチ妬きな彼からの狂おしい程の愛情

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「あの日の事はね……途中からの記憶が、あまり無いの。待ち合わせ場所はホテルのラウンジで、原さんの方が先に着いてて、私は一人でラウンジに向かった。私が通された所は個室みたいな造りで、周りの様子とか、声は聞こえないような場所だった。三人でって話だったけど、桜乃さんはシャワーを浴びてから来るって言って、暫く原さんと二人だった」
「ああ、そうらしいな。実はな、俺があの日の事を知ったのは、桜乃に言われたからなんだ」
「え?  桜乃さんに?」
「ああ。あの日アイツはシャワーを浴びてから遅れて待ち合わせ場所に行ったって言ってた。そしたら、莉世と原が二人で話があるから場所を変えるって言ってて、アイツはそのまま帰ったって」
「え? 嘘……」

 あの日の事を桜乃さんから聞いたという雪蛍くんの話を聞いた私は、思わず声を上げる。

「そんな、二人で話があるなんて言ってない……そもそも、私たちがラウンジから出る時に桜乃さんは来なかったはず……」

 桜乃さんの話は何かがおかしい。

 あの日は確か、私がもの凄い睡魔に襲われて我慢出来ないくらい眠かったから、話は後日にして欲しいとお願いしてラウンジを出たはずなのだ。

 その事を雪蛍くんに話すと、彼の表情は険しくなる。

「急に、眠くなった?」
「うん。あの日も睡眠不足だったから、いつもの事かなって思ったんだけど……」
「莉世、待ち合わせ場所に着いた時からお前の分の飲み物が用意されてたのか?」
「ううん、私が着いてからお店の人が水を持って来てくれて、コーヒーも自分で頼んだよ?」
「……そうか。その後で、席を立ったりしてねぇか?」
「え?  ううん……席を立ったりはしてないよ…………あ、でも一度小柴くんから仕事の書類の確認がしたいって電話があって、席に着いたまま一分くらい小声で話をしたかな」
「その時、原に背を向けてたか?」
「うーん、そうだね、背を向けてコソッと小声で話してたかな……」
「そうか。なら急な睡魔は恐らく薬を盛られたんだよ」
「え?」
「だっておかしいだろ?  確かに睡眠不足ってのは否定出来ないけど、記憶を無くすくらいの眠気なんて」
「あの時の眠気は本当に酷かった……けど、そんな事……」
「恐らく、量はごく少量だったんだろうけど、即効性があったんだと思う。睡眠不足も相俟って効き目が強かったんだ、きっと」
「……そう、なのかな……」

 雪蛍くんの言葉を聞いた私の身体は微かに震えていた。

 まさか自分が、そんな事をされただなんて、思いもしなかったから。

「とにかく、一度原に話を聞こう――」

 そう雪蛍くんが言うのとほぼ同時に、私のスマホから着信音が鳴り響く。

「ごめん、ちょっと確認するね」

 一言断った私はベッドの上に置いてあるスマホに手を伸ばして取り、電話を掛けてきた相手を確認すると、

「あ……」
「どうした?」

 画面に表示されていた名前は原さんだった。

 それを知った雪蛍くんは私から強引にスマホを奪い取ると、スピーカーに切り替えて電話に出た。

「何の用だ?」
「……あれ?  その声は……渋谷くん?  これ、南田さんの電話、だよね?」
「だったらどうだってんだよ?」
「……えっと、彼女に用があるんだけど、傍に居るなら代わって貰えないかな?」
「莉世に何の用なんだ?  俺には聞かれちゃまずい話なのか?」
「…………」

 彼の鬼気迫る声に圧倒されたのか、原さんは黙り込んでしまう。

 どちらも声を発さず、数分の沈黙が続いた後、

「……それじゃあ明日、直接会って話したい事がある。そう南田さんに伝えてくれないかな?」

 私が聞いているとは思っていない原さんが雪蛍くんにお願いするも、その言葉は彼をより一層激怒させた。
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