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ヤキモチ妬きな彼からの狂おしい程の愛情
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《莉世side》
あの日から何もする気が起きなくて、少し風邪をひいた事も重なってほぼ一日中ベッドの上で過ごしている。
風邪は二日程で良くなったものの、心の方のバランスが保てなくて、仕事に復帰出来ないでいた。
(もうすぐ、一週間になる……いい加減仕事に復帰しないと)
仕事は勿論だけど、毎日心配してくれる雪蛍くんの事を思うと、いつまでも休んでいる訳にはいかなかった。
(でも……どんな顔して雪蛍くんに会えばいいのか、分からない……)
あの日の事は、誰にも相談出来ていないし、原さんからの連絡も無い。
もしかしたら、相手は原さんではない別の誰かだったのだろうか。
やっぱりあの時、誰だったのか確認するべきだったのかもしれない。
後悔の念が頭を駆け巡り、考えるだけで胸が苦しくなる。
そんな時、静かな部屋に来客を知らせるインターホンが鳴り響く。
時刻は午後十一時過ぎ。こんな時間に訪ねて来るなんて、一体誰なのだろう。
気にはなるも、立ち上がる気力すらない私はそのまま居留守を決め込んで布団を頭から被った。
けれど、それから何度も鳴り響くインターホンに耐え切れなくなった私は何とか起き上がり、誰が来たのか確かめてみると、
「え……雪蛍……くん?」
カメラに映っていたのは険しい表情を浮かべた雪蛍くんだった。
会いたいけど、会いたくない。そんな思いが交差する。
「おい、莉世! 居るんだろ? 話がある! 開けてくれ!」
すると、インターホンを鳴らしただけでは出ないと悟った雪蛍くんが声を上げて開けるよう懇願する。
こうなってしまうと、ご近所にも迷惑が掛かるし、何よりも雪蛍くんが私の部屋の前に居るだなんて知られては大問題だ。
私は急いで玄関まで向かってドアを開けると、
「莉世……」
「雪蛍くん……」
険しい表情が一変して、今にも泣き出しそうな悲しげなものに変わり、私を強く抱き締めた。
ドアが閉まる音だけが、室内に響く。
雪蛍くんは私を抱き締めたまま、何も言わない。ただ、温もりだけが伝わってくる。
会いたかった、ずっと触れたかった、こうして、抱き締めて貰いたかった。
あの日から不安で堪らなくて、どうしていいか分からなくて、一人悩んでいた私にとって雪蛍くんの温もりは温か過ぎて、自然と涙が溢れて来た。
「莉世、ごめんな、気付いてやれなくて。もういい。一人で悩まなくていいから、俺に全てを話してくれ」
「雪蛍くん……?」
「大丈夫、俺は莉世を信じる。何があっても、俺は莉世を信じてる。だから、あの日あった事を、全て話してくれ」
「!」
彼のその言葉で、全てを理解した。
雪蛍くんは知ってしまったのだ。
あの日の事を――。
「うっ……えっ……、ゆ……きほ、くん……」
雪蛍くんの優しさに安心した私は堰を切ったように泣き出してしまった。
「ひっく……わ、私……っ……ごめ、なさ……っいぃ……っ」
「莉世は何も悪くねぇよ。謝る事なんてねぇんだ」
「で、……でも……っ」
「泣きたけりゃ泣けばいい。辛い事を一人で我慢するなよ。一人で抱えるなよ。俺が傍に居る。ずっと居るから。不安な思いは全部吐き出せよ」
子供のように泣きじゃくる私を、優しく背中を撫でてあやしてくれる雪蛍くん。
これじゃあ、どっちが年上だか分からない。
怖かった。ずっと、不安だった。
あの日の事を知った時、雪蛍くんは、どう思うだろうって。
嫌われてしまったら、どうしようって。
でも、そんな心配はいらなかった。
雪蛍くんは、全てを受け入れてくれる覚悟だったのだから。
雪蛍くんの優しさに甘え、ひとしきり泣いた私は落ち着きを取り戻す。
「落ち着いたか?」
「……うん」
「それじゃあ、あの日の事、順を追って話してくれ」
息を整えた私は雪蛍くんに言われ、あの日の事を振り返りながら話す事にした。
あの日から何もする気が起きなくて、少し風邪をひいた事も重なってほぼ一日中ベッドの上で過ごしている。
風邪は二日程で良くなったものの、心の方のバランスが保てなくて、仕事に復帰出来ないでいた。
(もうすぐ、一週間になる……いい加減仕事に復帰しないと)
仕事は勿論だけど、毎日心配してくれる雪蛍くんの事を思うと、いつまでも休んでいる訳にはいかなかった。
(でも……どんな顔して雪蛍くんに会えばいいのか、分からない……)
あの日の事は、誰にも相談出来ていないし、原さんからの連絡も無い。
もしかしたら、相手は原さんではない別の誰かだったのだろうか。
やっぱりあの時、誰だったのか確認するべきだったのかもしれない。
後悔の念が頭を駆け巡り、考えるだけで胸が苦しくなる。
そんな時、静かな部屋に来客を知らせるインターホンが鳴り響く。
時刻は午後十一時過ぎ。こんな時間に訪ねて来るなんて、一体誰なのだろう。
気にはなるも、立ち上がる気力すらない私はそのまま居留守を決め込んで布団を頭から被った。
けれど、それから何度も鳴り響くインターホンに耐え切れなくなった私は何とか起き上がり、誰が来たのか確かめてみると、
「え……雪蛍……くん?」
カメラに映っていたのは険しい表情を浮かべた雪蛍くんだった。
会いたいけど、会いたくない。そんな思いが交差する。
「おい、莉世! 居るんだろ? 話がある! 開けてくれ!」
すると、インターホンを鳴らしただけでは出ないと悟った雪蛍くんが声を上げて開けるよう懇願する。
こうなってしまうと、ご近所にも迷惑が掛かるし、何よりも雪蛍くんが私の部屋の前に居るだなんて知られては大問題だ。
私は急いで玄関まで向かってドアを開けると、
「莉世……」
「雪蛍くん……」
険しい表情が一変して、今にも泣き出しそうな悲しげなものに変わり、私を強く抱き締めた。
ドアが閉まる音だけが、室内に響く。
雪蛍くんは私を抱き締めたまま、何も言わない。ただ、温もりだけが伝わってくる。
会いたかった、ずっと触れたかった、こうして、抱き締めて貰いたかった。
あの日から不安で堪らなくて、どうしていいか分からなくて、一人悩んでいた私にとって雪蛍くんの温もりは温か過ぎて、自然と涙が溢れて来た。
「莉世、ごめんな、気付いてやれなくて。もういい。一人で悩まなくていいから、俺に全てを話してくれ」
「雪蛍くん……?」
「大丈夫、俺は莉世を信じる。何があっても、俺は莉世を信じてる。だから、あの日あった事を、全て話してくれ」
「!」
彼のその言葉で、全てを理解した。
雪蛍くんは知ってしまったのだ。
あの日の事を――。
「うっ……えっ……、ゆ……きほ、くん……」
雪蛍くんの優しさに安心した私は堰を切ったように泣き出してしまった。
「ひっく……わ、私……っ……ごめ、なさ……っいぃ……っ」
「莉世は何も悪くねぇよ。謝る事なんてねぇんだ」
「で、……でも……っ」
「泣きたけりゃ泣けばいい。辛い事を一人で我慢するなよ。一人で抱えるなよ。俺が傍に居る。ずっと居るから。不安な思いは全部吐き出せよ」
子供のように泣きじゃくる私を、優しく背中を撫でてあやしてくれる雪蛍くん。
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怖かった。ずっと、不安だった。
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嫌われてしまったら、どうしようって。
でも、そんな心配はいらなかった。
雪蛍くんは、全てを受け入れてくれる覚悟だったのだから。
雪蛍くんの優しさに甘え、ひとしきり泣いた私は落ち着きを取り戻す。
「落ち着いたか?」
「……うん」
「それじゃあ、あの日の事、順を追って話してくれ」
息を整えた私は雪蛍くんに言われ、あの日の事を振り返りながら話す事にした。
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