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ヤキモチ妬きな彼からの狂おしい程の愛情

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《雪蛍side》

「渋谷さん、おはようございます!」

 朝、マンションの駐車場に行くと、待っていたのは新人マネージャーの小柴だった。

「何でアンタが居るんだよ?  今日は莉世の担当だろーが」
「はい、その……実は南田先輩から連絡がありまして、体調が悪いから病院へ行きたいと。それで僕が代わりに……」
「病院?  って、平気なのかよ?」
「えっと、その……詳しい事は分かりませんが本人は風邪だろうと……」
「……ふーん。まあいい。仕事に遅れる訳にはいかねーからな。さっさと頼む」
「は、はい!」

 小柴から聞いた話は俺を驚かせたのと同時にイラつかせるものでもあった。

(アイツ、何で俺に直接言ってこないんだよ……)

 昨日の事もそうだ。何時間も連絡がつかなくて俺がどれだけ心配した事か。

(……そんなに体調、悪いのかよ……)

 何だか不安に駆られた俺は莉世にメッセージを送ってみた。

 すると、少しして返事が返ってきて、【ごめんね、ちょっと風邪を拗らせたみたいで……今日病院に行って来るから心配しないでね】と記してあった。

 本当なら、俺が直接行って看病してやりたいけど、仕事もあるし、周りに勘繰られても困るから、【無理するなよ。何かあったらすぐに言えよな】悩んだ末にそれだけ送った俺はひとまず仕事に集中する事にした。

 結局莉世は本格的に風邪を拗らせたらしく、数日間は安静にするよう医者に言われたといって暫く俺の管理は小柴がする事になった。

 相変わらず要領を得ない小柴に苛立ちを感じるも、そんな事は何だかどうでも良くなってくる。

(莉世、どうしてるかな……)

 様子を見に行きたいけど朝から夜までスケジュールが詰まっていて時間が取れず、メッセージでのやり取りしか出来ていない。

 会えない時間が長過ぎて、莉世に触れた過ぎて、俺の身体はそろそろ限界を迎えそうになっていた。

 そんなある日の仕事終わり、映画の撮影も終盤を迎えている事、残りの撮影の英気を養う為にメインキャストで食事に行く事になった。

 その席には勿論桜乃も居て、終始俺の隣を陣取ってくる。

(あーうぜぇなぁ……)

 聞いてもいない事をペラペラ話し、人のプライベートな事を聞いてくる。

 あまりの鬱陶しさにうんざりした俺が早めに引き上げようとすると、

「ねぇ雪蛍くん、ちょっと……大切な話があるんだけど、この後時間貰えないかな?」

 意味深な言葉を口にした。

「何だよ、話って」
「ここじゃあちょっと……。そういえば南田さんの姿が見えないけど、彼女は?」
「あー、アイツは風邪拗らせて休んでるぜ」
「……そう、風邪を……。それって、本当に風邪が原因なのかな?」
「は?  それ、どういう意味だよ?」
「……時間を取ってくれるなら、詳しく話すよ」
「……分かった。とりあえず一緒に出るのはマズい。十分後、この紙に書いた店まで来てくれよ」
「うん、分かった」

 桜乃の話というのはどうやら莉世に関係がある事らしく、俺の心はいつになく動揺していた。

(莉世……お前、本当に風邪なのか?  それとも、何か他に理由があるのか?)

 不安な俺は莉世の声を聞きたい衝動を抑えながら、指定した知り合いのBARまで歩いて行く。

 そして十分後、約束通り桜乃がやって来ると、

「実はね、結萌……南田さんの事である話を聞いちゃったの」

 そんな前置きをして、莉世に関する話を始めた。
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