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ヤキモチ妬きな彼からの狂おしい程の愛情

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「莉世、最近どうなの?」

 久しぶりに纏まった休日をもらった私は実家へと帰省し、約二年振りに高校時代の親友たちと食事へやって来た。

「うーん、まぁ休みはなかなか取れないかな」
「だよね、だってあの雪蛍ゆきほのマネージャーだもんね!」
「そうそう!  超ー羨ましい!」
「芸能人沢山いる中で働けるとか、良いよねぇ」

 雪蛍くんの担当を受け持ってから一年ちょっと、交際を初めてから約半年以上が経過している現在、周りからは彼のマネージャーというだけで羨ましがられているけれど、交際している事は内緒なので、誰も知らない。

 元々一緒に過ごす時間が多かった事もあって事務所をはじめ、周りには一切バレてはいない。

 ただ最近、私に新人マネージャーが付く事になり、一緒に過ごす時間が少しだけ減りつつあった。

「ってか莉世、今は新人教育もしてるんでしょ?」
「うん、社長がそろそろいい頃合いだろうって」
「莉世は本当出世コースまっしぐらね。まぁ就職先がSBTNエンターテインメントって時点で分かってはいたけどさ」
「このまま結婚相手も芸能界から見つければ、ますます将来安泰よね」
「羨ましい~!」

 それに、みんなが言う程、芸能界は甘くないし、収入は良いけれど日々の生活の悩みは尽きない。

 マネージャー業は不規則な生活で体調を崩す事も多々あるけれど休んではいられないし、休みだってあってないようなくらい、休める気がしない事もある。今回は新人が付いている事もあって久しぶりにこんな風に纏まった休みが貰えたけれど、普段ならこんな休みは取れないのだから。

「あ、ごめん、ちょっと電話が……」

 着信音が鳴り画面を確認すると相手は雪蛍くんから。

「もしもし、雪蛍くん?」

 皆に断りを入れた私は、小声で電話に出ながら個室を出た。

『莉世、アイツどーにかしろよ』
「どうしたの?  何かあった?」
『アイツどん臭すぎて本当イラつく』
「もう、そういう事言わないの。小柴こしばくんだって、一生懸命やってるんだよ?」

 雪蛍くんの言う『アイツ』とは、新人マネージャーの小柴  圭人けいとくんの事。

 人懐っこくて明るい男の子で何に対しても凄く一生懸命な子なんだけれど、空回りばかりしてミスが多く雪蛍くんに怒られてばかり。

 まるで以前の自分を見ているようで他人事とは思えないのはここだけの話。

『ところでお前、今何してる訳?』
「私?  今友達とご飯食べに来てるよ」
『へぇー……それって、男も居る訳?』
「居ないよ?  女の子だけ。女子会だもん」
『……ふーん、どーだか』
「もう、本当だってば。疑わないでよ、雪蛍くん」
『……悪い、ただ、心配だっただけ。別に疑ってねぇよ』
「……そっか、なら良かった」

 彼は少しヤキモチ妬きで、私が休みの間、休憩時間になるとこうして電話をして来たり、メッセージアプリでやり取りをする。

 雪蛍くんは我儘でちょっと俺様なところは相変わらずだけど、最近では甘えてくれたりと可愛いところもある私の自慢の彼氏だ。

 友人からも羨ましがられ、素敵な彼氏もいて、まさに順風満帆な毎日を送っている私だけど、そんな毎日が一変する出来事が起こるなんて、この時の私は夢にも思わなかった。

 連休最終日、普段なかなか帰省出来ない私はギリギリまで実家で羽を伸ばし、午後になる頃にようやく実家を後にした。

(実家に帰ると、ついつい長居したくなるのよね)

 帰省した後はいつも思う。

 ホームシックというより、何もしなくても温かいご飯が出てくる事や、あれやこれやと世話を焼いてくれる両親の元に居るのが心地よくて、一人暮らしのアパートに帰りたくなくなってしまうのだ。

 でも、それはあくまでも昔の事で、今は違う。

(雪蛍くんに、早く会いたいな)

 四日ぶりに会う彼氏の事を思うと、いつになく足取りは軽い。

(今日はファッション誌の撮影とインタビューだけって言ってたから、早く終わるよね。ご飯作って待ってよう)

 都内に戻って来た私は一旦自分のアパートに寄って荷物を置き、それから車で雪蛍くんのマンションへ向かう事に。

 途中、スーパーに寄って夕飯の材料を買い込み、雪蛍くんに部屋で待ってる旨を伝えるメッセージを送った私は合鍵で部屋の中へ入る。

「うわ、結構散らかってるなぁ……」

 マネージャーの私は、家事全般など彼の身の回りのお世話もする。

 今、彼に付いてる新人マネージャーの小柴くんにもやらせようとしたら雪蛍くんが、「男は絶対、部屋に入れない」なんて言って断固拒否したから仕方なく身の回りのお世話はだけは全て私の担当になった。

 勿論、『彼女』としては、嬉しい限りだけど。

 早速散らかった部屋を片付け、ささっと洗濯や掃除を終えるとすぐに夕食の準備に取り掛かる。
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