愛を教えて、キミ色に染めて【完】

Ⅴ

7

「伊織さん……本当に？」
「ああ」
「でも、私……綺麗じゃ……」
「それ以上言うな」
「だけど……」
「もう、黙れよ――」
「――っんん」

　どうしても納得がいかない円香は言葉を続けようとしたのだけど、それ以上言わせたくなかった伊織は強引に彼女の唇を塞ぎ、

「……ん、はぁ……っ、い、おり……さ、っ」

　荒々しい口付けで少しずつ円香の力を奪っていく。

　強引だけど、決して無理矢理という訳ではなく、その中にも優しさのある情熱的なキス。

　まだどこか遠慮がちで、少しだけ彼女の身体が拒んでいる様に思えた伊織は、自身の舌で円香の舌を絡め取って口内を懐柔していく。

　そんな伊織の優しさが嬉しかったのか、止まりかけていた涙が円香の瞳から再び溢れ出した。

「……嫌だったか？」
「ち、違う……そうじゃ、ない……。う、嬉しくて……好きな人に触れられるのも、キスされるのも、本当に嬉しくて……幸せで、涙が……出てきただけ……」

　彼女のその言葉に、伊織は胸を打たれた。

「円香、嫌な事はもう、忘れちまえよ」
「……そうしたいけど、出来ない……っ」

　伊織だって、そのくらい解っている。

　心と身体に負った傷をすぐには癒せない事も、忘れられない事も。

　それでも、伊織には自信があった。

　自分ならば、円香の心を癒してやれると。

「大丈夫、出来るさ。俺だけを見て、俺だけを感じればいい」
「……伊織、さん……」
「俺が嫌な事全てを忘れさせてやるから、もう、余計な事は考えるな」
「……伊織さ――」

　未だ颯に囚われ、無理矢理犯された事を気に病み続ける円香の心を少しでも良いから軽くしたかった伊織は、飾る事無く思う事を彼女に伝えると、これ以上に何も言わせないよう再び唇を塞ぎ、流れ続ける涙を指で掬すくう。

　そんな伊織の行動に円香の心は少しだけ変化していくのを感じていた。

(伊織さん……私、貴方を好きになって、本当に良かった……)

　そう心の中で彼への感謝を想い、伊織に全てを委ね、身を任せていく。

　啄むようなキスから徐々に互いを求め合う情熱的なキスへと変わり、伊織の手は円香の胸元へと移っていった。

「っん、……」

　そんな伊織の動きに微かに反応した円香が小さく声を上げるも、嫌がっている訳では無いと分かると、彼はキスをしながら彼女が着ているTシャツの裾を捲り上げてブラジャーを付けていない胸を露わにすると、キスだけで反応を示していた胸の頂に軽く指を触れる。

「はぁんっ……やっ……」

　突然触れられた事に驚いた円香が声を上げるも、伊織はその声に構う事無く指を動かしていく。

「はっ、……あんっ、やっ……」

　指が胸を這う度に円香から声が漏れ出て、その声が伊織の欲を掻き立てる。

「気持ちいいか？」
「そんなこと、聞かないで……」

　聞かなくても表情や声で状況判断出来るはずなのだが伊織は敢えて円香に訊ねると、恥ずかしそうに視線を逸らした彼女が聞かないでと呟いた。

「恥ずかしがる事ねぇだろ？」
「ぁっ、……」

　恥ずかしがる余裕があるならと、伊織は指で弄っていた胸の頂の方へ顔を寄せると、今度は舌で転がすようにそこを刺激し始めた。

「はっぁん、やッ……」

　指で弄られた時よりも気持ちが良いらしい円香は声を抑えきれないのか、自身の上げる声の大きさに恥ずかしさを感じながらもついつい漏れ出る嬌声を止めようと口元を手で覆い隠そうとするも、

「声、我慢するなよ。もっと聞かせてくれよ、な？」

　その手は伊織によって掴み止められてしまう。

「やっ、は、ずかし……っ」

　掴まれた腕を上に上げられ、動きを封じられた円香は頬を紅潮させながら首を背けようとするも、

「だから、恥ずかしがる必要はねぇんだって。俺を感じろよ、円香――」
「――っん……」

　顎を掴まれ、再び唇を塞がれた円香は何度も口付けられて身体の力を奪われていく。

　口付けながら彼女の身体に優しく触れていく伊織。

　指で触れただけで腰が浮くところを見ると、最早円香の身体は全身が性感帯のように感じやすくなっていると分かり、伊織の興奮をより一層高めていく。

　唇を離し、ひくつく円香の蜜口に指を添えると、今にも蜜が溢れそうになっていた。