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Ⅲ
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残された二人の間には、気まずい空気が流れている。
(伊織さん……怒ってる……話しかけない方が、いいのかな)
一向に話しかけて来る気配の無い伊織を前に、しゅんと落ち込み項垂れた円香がベッドから降りようと動き出すと、
「…………お前さ、本当馬鹿だよな」
そう静かに、淡々と口にしながら伊織は円香の方へ一歩ずつ近付いて行き、
「本当馬鹿だよ、お前。相手が雷じゃ無かったら、無事じゃ済まねぇんだぞ? 無防備過ぎるのも大概にしろよな」
ベッドの上に居る円香の身体を、包み込むように優しく抱きしめた。
「い……おり、さん……」
抱きしめられたその温もりが温かくて、円香はこれが夢じゃないと確信して安堵すると同時に、
「う……っ、ひっく……いおり、さん……わたし……っ」
色々な感情がごちゃ混ぜになった円香は子供のように泣き出してしまう。
「泣くなよ……悪かったよ」
「ううん、わた……っ、わたし、が……っ」
「違ぇよ、お前は悪くねぇんだよ。何も悪くねぇ。全部、俺が悪いんだ」
「……伊織……さん……」
そもそも、何でこんな事になってしまったのだろうと円香は考えたけれど、そんな事はもうどうでも良かった。
今目の前に伊織が居る。その事が一番重要で、全てなのだから。
それから暫くして、
「とりあえず、出るぞ」
部屋を出ようという伊織の提案に、落ち着きを取り戻した円香が小さく頷いて共に部屋を後にする。
どこへ向かうのだろうと思いながら伊織に付いていく円香だったのだけど、エレベーターに乗ると何故か伊織が客室最上階のボタンを押した事を不思議に思い、首を傾げる。
「伊織さん……何処へ向かうんですか?」
「部屋に決まってんだろ?」
「え? それならさっきの部屋でも……」
「あそこは雷が借りてる部屋だぜ? 何するにしても落ち着かねぇよ」
「そ、そうなんですか……?」
「カメラとか仕掛けてあるかもしれねーぞ? それでもいいのか?」
「え!? そ、それはちょっと……嫌、です」
「冗談だよ。ま、わざわざ部屋を取ったのはお前へのちょっとしたプレゼントってとこだよ」
エレベーターを降りて部屋の前にやって来た二人。
伊織はそう言いながら鍵を開けてドアを開けて円香を部屋へ招き入れると、
「うわぁー! すごい!」
部屋に入った円香は感嘆の声を上げる。
ここは最上階の特別室で、部屋の大きな窓から街の景色や星空が一望出来る空間になっていた。
「お部屋、広いですね」
「特別室だからな」
「それじゃあ、お値段が……」
「ンなもんいちいち気にすんなよ。俺はお前とここで過ごしたいと思って部屋を取ったんだ。円香はどうだ? 嫌か?」
ふいにそんな質問をされた円香は、伊織を狡い人だと思った。
「……嫌なんて事、あるわけないです。嬉しいですよ、すごく」
「そうか、なら部屋を取った甲斐がある。来いよ、円香」
「…………はい」
ベッドに腰掛けた伊織は円香に手招きをすると、少し恥ずかしそうに俯いた彼女はこくりと頷いて彼の横に腰掛けた。
雷斗からメッセージを貰った時、ここへ来るべきか否か伊織は心底悩んだ。これ以上好きになる前に離れた方が互いの為だと思っていたから円香を突き放したはずなのに、結局、伊織は来てしまったのだ。
(これ以上のめり込んだら、ますます離れ難くなるっつーのに……どうしてなんだろうな……)
円香に触れたくて、温もりを感じたくて、伊織は隣に座る彼女の背に腕を回すと、もう片方の手で未だ恥ずかしがって俯いていた円香の顎を軽く持ち上げて唇を塞いだ。
「――んんっ」
突然の行為に驚く円香だけど、彼女の方も伊織と同じで触れたくて仕方がなかったようで、
「……っは、ん……っぁ……」
彼の首に腕を絡めた激しい口付けに、たどたどしくも一生懸命応えていく。
深く情熱的なキスを何度も交わしたせいで円香の身体は既に力が抜け、それに気付いた伊織は彼女の身体を優しくベッドへ寝かせると、自身の着ているものを脱いで下着一枚のみの姿になる。
そして今度は円香の衣服に手を掛け、着ていたセーターとブラジャーを捲りあげて胸を露わにする。
「あ……、いや……っ」
肌を覆っていた物が無くなり大きな胸が強調されるのが恥ずかしい円香は手で隠そうとするも、
「今更恥ずかしがる必要なんてねぇだろ?」
その手は伊織の両腕でがっちりと掴まれ、頭の上辺りで押さえ付けられてしまう。
いくら初めてでは無いにしても、やっぱりどこか恥ずかしいもので、まじまじと伊織に見つめられる円香は視線を外して恥じらっている。
雷斗にも同じように腕を拘束されて襲われそうになったけれど、伊織が相手というだけで、こうも感じ方が違うのだと改めて実感する円香の身体は既に伊織を受け入れる準備が整っているようで身体が疼いていた。
勿論、胸を見られ、頂きに触れられて身体が反応しているのもあるけれど、それだけでは物足りないと円香は切ない気持ちになってくる。
そんな彼女の表情や身体の反応に気付いた伊織はすぐにでも自身のモノを入れてしまいたい欲求を抑え、もう少しだけ円香を乱れさせたいという思いから胸を執拗に弄り、スカートを捲りあげてストッキングと下着を一気に下げた。
(伊織さん……怒ってる……話しかけない方が、いいのかな)
一向に話しかけて来る気配の無い伊織を前に、しゅんと落ち込み項垂れた円香がベッドから降りようと動き出すと、
「…………お前さ、本当馬鹿だよな」
そう静かに、淡々と口にしながら伊織は円香の方へ一歩ずつ近付いて行き、
「本当馬鹿だよ、お前。相手が雷じゃ無かったら、無事じゃ済まねぇんだぞ? 無防備過ぎるのも大概にしろよな」
ベッドの上に居る円香の身体を、包み込むように優しく抱きしめた。
「い……おり、さん……」
抱きしめられたその温もりが温かくて、円香はこれが夢じゃないと確信して安堵すると同時に、
「う……っ、ひっく……いおり、さん……わたし……っ」
色々な感情がごちゃ混ぜになった円香は子供のように泣き出してしまう。
「泣くなよ……悪かったよ」
「ううん、わた……っ、わたし、が……っ」
「違ぇよ、お前は悪くねぇんだよ。何も悪くねぇ。全部、俺が悪いんだ」
「……伊織……さん……」
そもそも、何でこんな事になってしまったのだろうと円香は考えたけれど、そんな事はもうどうでも良かった。
今目の前に伊織が居る。その事が一番重要で、全てなのだから。
それから暫くして、
「とりあえず、出るぞ」
部屋を出ようという伊織の提案に、落ち着きを取り戻した円香が小さく頷いて共に部屋を後にする。
どこへ向かうのだろうと思いながら伊織に付いていく円香だったのだけど、エレベーターに乗ると何故か伊織が客室最上階のボタンを押した事を不思議に思い、首を傾げる。
「伊織さん……何処へ向かうんですか?」
「部屋に決まってんだろ?」
「え? それならさっきの部屋でも……」
「あそこは雷が借りてる部屋だぜ? 何するにしても落ち着かねぇよ」
「そ、そうなんですか……?」
「カメラとか仕掛けてあるかもしれねーぞ? それでもいいのか?」
「え!? そ、それはちょっと……嫌、です」
「冗談だよ。ま、わざわざ部屋を取ったのはお前へのちょっとしたプレゼントってとこだよ」
エレベーターを降りて部屋の前にやって来た二人。
伊織はそう言いながら鍵を開けてドアを開けて円香を部屋へ招き入れると、
「うわぁー! すごい!」
部屋に入った円香は感嘆の声を上げる。
ここは最上階の特別室で、部屋の大きな窓から街の景色や星空が一望出来る空間になっていた。
「お部屋、広いですね」
「特別室だからな」
「それじゃあ、お値段が……」
「ンなもんいちいち気にすんなよ。俺はお前とここで過ごしたいと思って部屋を取ったんだ。円香はどうだ? 嫌か?」
ふいにそんな質問をされた円香は、伊織を狡い人だと思った。
「……嫌なんて事、あるわけないです。嬉しいですよ、すごく」
「そうか、なら部屋を取った甲斐がある。来いよ、円香」
「…………はい」
ベッドに腰掛けた伊織は円香に手招きをすると、少し恥ずかしそうに俯いた彼女はこくりと頷いて彼の横に腰掛けた。
雷斗からメッセージを貰った時、ここへ来るべきか否か伊織は心底悩んだ。これ以上好きになる前に離れた方が互いの為だと思っていたから円香を突き放したはずなのに、結局、伊織は来てしまったのだ。
(これ以上のめり込んだら、ますます離れ難くなるっつーのに……どうしてなんだろうな……)
円香に触れたくて、温もりを感じたくて、伊織は隣に座る彼女の背に腕を回すと、もう片方の手で未だ恥ずかしがって俯いていた円香の顎を軽く持ち上げて唇を塞いだ。
「――んんっ」
突然の行為に驚く円香だけど、彼女の方も伊織と同じで触れたくて仕方がなかったようで、
「……っは、ん……っぁ……」
彼の首に腕を絡めた激しい口付けに、たどたどしくも一生懸命応えていく。
深く情熱的なキスを何度も交わしたせいで円香の身体は既に力が抜け、それに気付いた伊織は彼女の身体を優しくベッドへ寝かせると、自身の着ているものを脱いで下着一枚のみの姿になる。
そして今度は円香の衣服に手を掛け、着ていたセーターとブラジャーを捲りあげて胸を露わにする。
「あ……、いや……っ」
肌を覆っていた物が無くなり大きな胸が強調されるのが恥ずかしい円香は手で隠そうとするも、
「今更恥ずかしがる必要なんてねぇだろ?」
その手は伊織の両腕でがっちりと掴まれ、頭の上辺りで押さえ付けられてしまう。
いくら初めてでは無いにしても、やっぱりどこか恥ずかしいもので、まじまじと伊織に見つめられる円香は視線を外して恥じらっている。
雷斗にも同じように腕を拘束されて襲われそうになったけれど、伊織が相手というだけで、こうも感じ方が違うのだと改めて実感する円香の身体は既に伊織を受け入れる準備が整っているようで身体が疼いていた。
勿論、胸を見られ、頂きに触れられて身体が反応しているのもあるけれど、それだけでは物足りないと円香は切ない気持ちになってくる。
そんな彼女の表情や身体の反応に気付いた伊織はすぐにでも自身のモノを入れてしまいたい欲求を抑え、もう少しだけ円香を乱れさせたいという思いから胸を執拗に弄り、スカートを捲りあげてストッキングと下着を一気に下げた。
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