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STORY6

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「郁斗さん、捜索って言っても、何か宛はあるんすか?」

 恭輔の了解を得た郁斗は美澄や小竹を連れて事務所を出ると、車の中で今後どうするかを話し合う。

「そうだな……一番は黛と繋がりのある迅に会いに行くのが早いな……」
「その迅って人と連絡取れるんですか?」
「いや、アイツは抜かりの無い奴だからな、足がつかないよう常に連絡先を変えてるはずだ」
「それじゃあ、どうするんすか?」
「まあ待て、こういう時こそ情報屋の出番だ。ちょっと頼んで迅の奴をおびき出す」

 郁斗の考えはこうだ。

 まず、神咲会の方で保護されたという詩歌の現保護者である花房  慎之介や四条に協力を仰ぎ、売春斡旋と薬の密売について稼げる嘘の情報を流して迅を誘き出すというもの。

 それにはそういう世界に関わっている人間の協力が多数必要なので、情報屋に頼んでその筋の人間を金で雇い、あたかも嘘の情報では無い事を全面的に出して信じ込ませる必要があるのだ。

「黛は迅以上に抜かりの無い奴で、頭もイカれてる。他人を巻き込む事も躊躇わねぇ。とにかく一刻も早く詩歌を見つけて助けねぇと命が……危うくなりそうだ。詩歌が大人しくアイツに従っていれば、まあ命くらいは保証されるだろうけどな……」

 そんな郁斗の心配は、現実になりそうな状況になりつつある。

 それというのも囚われた詩歌は数日間泣き続けた後、流石に疲れ、涙も枯れ果てたのか、ほぼ飲まず食わずの状態も相俟ってかなり衰弱しつつあったからだ。

「おい、いい加減食い物口にしねぇと死ぬぞ?」
「……いいです、別に……死んでも」
「あ?  本気で言ってんのか?」
「……はい」
「クソ可愛げのねぇ女だな、お前」

 詩歌を捕らえたはいいものの、好みとかけ離れた容姿になり、更には反抗的な態度を見せる彼女に日々不満を募らせていた黛。

「……そんなに望むなら殺してもいいが、迅の奴に大金払っちまってんだ、このまま殺すだけじゃ大損だよな……」

 気に入らない人間はさっさと排除したいと思うも詩歌を手に入れる為に迅に大金を払ってしまった黛はただ殺してしまうのは惜しいと考える。

「……店に売り飛ばすにしても、多少食わせないとこんなやせ細った女なんて大した額じゃ売れねぇし……いっそ、臓器でも売るか……?」

 死んでもいいと思ってはいても、実際殺されそうになると分かると、詩歌に恐怖が訪れる。

「なぁ、お前はどうしたい?  死ぬつもりなんだ、どんな結末になっても問題ねぇよな?」
「……っ」

 微かに反応した詩歌に気付いた黛は彼女の髪を掴み上げて強引に自身の方へ向かい合わせる形を取ると、彼女自身に選ばせようとする。

「けど、俺は優しいから最後はお前に選ばせてやる。俺好みの女になって一生俺の傍で暮らすか、風俗に売り飛ばされて身も心もズタボロにされるか、臓器提供の為に殺されるか……さあ、好きなのを選べよ」

 しかも、どの選択をしたところで良い未来は無い。

(……郁斗さん……私は、どうすればいいですか?)

 こんな男の言いなりで一生を終えるくらいならいっそ、外の世界へ出て助けられる事を待つか、それとも、自分のせいで死んでしまった郁斗の元へ行く為に殺されるか……詩歌にとっては後者二つの選択肢しか選ぶつもりは無かった。
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