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STORY4
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樹奈の企みなど全く知らない詩歌はVIPルームにて太陽と美澄と共に黛組の動きや関東にも捜索の手が回り始めている事を郁斗から聞き、今後どうするかを話し合っていた。
「そういう事情なら、詩歌ちゃんは暫く出勤しない方がいいね」
「すみません……」
「悪いね。いつまた出勤出来るか分からないから、詩歌ちゃんの代わりの子はこっちで都合つけるよ。キャストには上手く説明しておいてね」
「はい、そうして貰えると助かります。お客様には詩歌ちゃんの方からメッセージを送って説明しておいてくれるかな? 暫く地元に帰るとか、適当に理由付けてさ」
「分かりました」
「それと、俺今日は詩歌ちゃんの勤務が終わったら一緒に帰るよ。部屋に戻ったら小竹も呼んで、四人でもう一度体制を見直そう」
「え? でも、今日は樹奈さんとの約束があるのでは?」
「樹奈? あー、そういえばそうだったな……って、どうして詩歌ちゃんがその事知ってるの?」
「え? あ、そ、その……すみません、昨日、お二人が話している所に偶然居合わせてしまって……き、聞き耳を立てるつもりは無かったんですけど……」
「そうなんだ? まあ別に隠してる訳じゃないからいいけどね。樹奈には悪いけど、今日は断るよ。詩歌ちゃんの事の方が大切だからね」
「……郁斗さん……すみません、ありがとうございます」
郁斗のその言葉に、詩歌の胸は熱くなる。
樹奈との約束よりも、自分の事を優先してくれたという事実が嬉しかったのだ。
「それじゃあ、私戻りますね。接客中だったので」
「ああ、そうだよね。桐谷様の接客中だったよね」
「桐谷?」
「詩歌ちゃんの初接客の時のお客様ですよ。副島様の連れの方です」
「ああ、アイツか……」
「それでは、また後程」
大和の接客をしていると知った郁斗は何故か浮かない表情を浮かべていたのだけど、それに気付かない詩歌は立ち上がるとVIPルームを後にした。
「大和さん、お待たせしました」
「あら、白雪ちゃん、郁斗さんの方はもういいの?」
「あ、樹奈さん……。は、はい。もう用は済みましたので」
「そう。それじゃあ大和さん、失礼しますね」
「ああ…………ありがとう」
「ふふ。どういたしまして」
詩歌が戻って来た事で樹奈は大和に挨拶をすると再び待機席へと戻っていく。
「あ、グラスが空ですね。何か作りますか?」
入れ違いで席に着いた詩歌は大和のグラスが空になり掛けている事に気付き、そう声をかけると、
「……白雪、俺なんかより……その郁斗って奴の接客してた方がいいんじゃないのか?」
冷めた瞳で詩歌を見つめた大和は突如、素っ気なくそう言い放った。
「そういう事情なら、詩歌ちゃんは暫く出勤しない方がいいね」
「すみません……」
「悪いね。いつまた出勤出来るか分からないから、詩歌ちゃんの代わりの子はこっちで都合つけるよ。キャストには上手く説明しておいてね」
「はい、そうして貰えると助かります。お客様には詩歌ちゃんの方からメッセージを送って説明しておいてくれるかな? 暫く地元に帰るとか、適当に理由付けてさ」
「分かりました」
「それと、俺今日は詩歌ちゃんの勤務が終わったら一緒に帰るよ。部屋に戻ったら小竹も呼んで、四人でもう一度体制を見直そう」
「え? でも、今日は樹奈さんとの約束があるのでは?」
「樹奈? あー、そういえばそうだったな……って、どうして詩歌ちゃんがその事知ってるの?」
「え? あ、そ、その……すみません、昨日、お二人が話している所に偶然居合わせてしまって……き、聞き耳を立てるつもりは無かったんですけど……」
「そうなんだ? まあ別に隠してる訳じゃないからいいけどね。樹奈には悪いけど、今日は断るよ。詩歌ちゃんの事の方が大切だからね」
「……郁斗さん……すみません、ありがとうございます」
郁斗のその言葉に、詩歌の胸は熱くなる。
樹奈との約束よりも、自分の事を優先してくれたという事実が嬉しかったのだ。
「それじゃあ、私戻りますね。接客中だったので」
「ああ、そうだよね。桐谷様の接客中だったよね」
「桐谷?」
「詩歌ちゃんの初接客の時のお客様ですよ。副島様の連れの方です」
「ああ、アイツか……」
「それでは、また後程」
大和の接客をしていると知った郁斗は何故か浮かない表情を浮かべていたのだけど、それに気付かない詩歌は立ち上がるとVIPルームを後にした。
「大和さん、お待たせしました」
「あら、白雪ちゃん、郁斗さんの方はもういいの?」
「あ、樹奈さん……。は、はい。もう用は済みましたので」
「そう。それじゃあ大和さん、失礼しますね」
「ああ…………ありがとう」
「ふふ。どういたしまして」
詩歌が戻って来た事で樹奈は大和に挨拶をすると再び待機席へと戻っていく。
「あ、グラスが空ですね。何か作りますか?」
入れ違いで席に着いた詩歌は大和のグラスが空になり掛けている事に気付き、そう声をかけると、
「……白雪、俺なんかより……その郁斗って奴の接客してた方がいいんじゃないのか?」
冷めた瞳で詩歌を見つめた大和は突如、素っ気なくそう言い放った。
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