40 / 90
STORY4
7
しおりを挟む
樹奈の企みなど全く知らない詩歌はVIPルームにて太陽と美澄と共に黛組の動きや関東にも捜索の手が回り始めている事を郁斗から聞き、今後どうするかを話し合っていた。
「そういう事情なら、詩歌ちゃんは暫く出勤しない方がいいね」
「すみません……」
「悪いね。いつまた出勤出来るか分からないから、詩歌ちゃんの代わりの子はこっちで都合つけるよ。キャストには上手く説明しておいてね」
「はい、そうして貰えると助かります。お客様には詩歌ちゃんの方からメッセージを送って説明しておいてくれるかな? 暫く地元に帰るとか、適当に理由付けてさ」
「分かりました」
「それと、俺今日は詩歌ちゃんの勤務が終わったら一緒に帰るよ。部屋に戻ったら小竹も呼んで、四人でもう一度体制を見直そう」
「え? でも、今日は樹奈さんとの約束があるのでは?」
「樹奈? あー、そういえばそうだったな……って、どうして詩歌ちゃんがその事知ってるの?」
「え? あ、そ、その……すみません、昨日、お二人が話している所に偶然居合わせてしまって……き、聞き耳を立てるつもりは無かったんですけど……」
「そうなんだ? まあ別に隠してる訳じゃないからいいけどね。樹奈には悪いけど、今日は断るよ。詩歌ちゃんの事の方が大切だからね」
「……郁斗さん……すみません、ありがとうございます」
郁斗のその言葉に、詩歌の胸は熱くなる。
樹奈との約束よりも、自分の事を優先してくれたという事実が嬉しかったのだ。
「それじゃあ、私戻りますね。接客中だったので」
「ああ、そうだよね。桐谷様の接客中だったよね」
「桐谷?」
「詩歌ちゃんの初接客の時のお客様ですよ。副島様の連れの方です」
「ああ、アイツか……」
「それでは、また後程」
大和の接客をしていると知った郁斗は何故か浮かない表情を浮かべていたのだけど、それに気付かない詩歌は立ち上がるとVIPルームを後にした。
「大和さん、お待たせしました」
「あら、白雪ちゃん、郁斗さんの方はもういいの?」
「あ、樹奈さん……。は、はい。もう用は済みましたので」
「そう。それじゃあ大和さん、失礼しますね」
「ああ…………ありがとう」
「ふふ。どういたしまして」
詩歌が戻って来た事で樹奈は大和に挨拶をすると再び待機席へと戻っていく。
「あ、グラスが空ですね。何か作りますか?」
入れ違いで席に着いた詩歌は大和のグラスが空になり掛けている事に気付き、そう声をかけると、
「……白雪、俺なんかより……その郁斗って奴の接客してた方がいいんじゃないのか?」
冷めた瞳で詩歌を見つめた大和は突如、素っ気なくそう言い放った。
「そういう事情なら、詩歌ちゃんは暫く出勤しない方がいいね」
「すみません……」
「悪いね。いつまた出勤出来るか分からないから、詩歌ちゃんの代わりの子はこっちで都合つけるよ。キャストには上手く説明しておいてね」
「はい、そうして貰えると助かります。お客様には詩歌ちゃんの方からメッセージを送って説明しておいてくれるかな? 暫く地元に帰るとか、適当に理由付けてさ」
「分かりました」
「それと、俺今日は詩歌ちゃんの勤務が終わったら一緒に帰るよ。部屋に戻ったら小竹も呼んで、四人でもう一度体制を見直そう」
「え? でも、今日は樹奈さんとの約束があるのでは?」
「樹奈? あー、そういえばそうだったな……って、どうして詩歌ちゃんがその事知ってるの?」
「え? あ、そ、その……すみません、昨日、お二人が話している所に偶然居合わせてしまって……き、聞き耳を立てるつもりは無かったんですけど……」
「そうなんだ? まあ別に隠してる訳じゃないからいいけどね。樹奈には悪いけど、今日は断るよ。詩歌ちゃんの事の方が大切だからね」
「……郁斗さん……すみません、ありがとうございます」
郁斗のその言葉に、詩歌の胸は熱くなる。
樹奈との約束よりも、自分の事を優先してくれたという事実が嬉しかったのだ。
「それじゃあ、私戻りますね。接客中だったので」
「ああ、そうだよね。桐谷様の接客中だったよね」
「桐谷?」
「詩歌ちゃんの初接客の時のお客様ですよ。副島様の連れの方です」
「ああ、アイツか……」
「それでは、また後程」
大和の接客をしていると知った郁斗は何故か浮かない表情を浮かべていたのだけど、それに気付かない詩歌は立ち上がるとVIPルームを後にした。
「大和さん、お待たせしました」
「あら、白雪ちゃん、郁斗さんの方はもういいの?」
「あ、樹奈さん……。は、はい。もう用は済みましたので」
「そう。それじゃあ大和さん、失礼しますね」
「ああ…………ありがとう」
「ふふ。どういたしまして」
詩歌が戻って来た事で樹奈は大和に挨拶をすると再び待機席へと戻っていく。
「あ、グラスが空ですね。何か作りますか?」
入れ違いで席に着いた詩歌は大和のグラスが空になり掛けている事に気付き、そう声をかけると、
「……白雪、俺なんかより……その郁斗って奴の接客してた方がいいんじゃないのか?」
冷めた瞳で詩歌を見つめた大和は突如、素っ気なくそう言い放った。
1
お気に入りに追加
84
あなたにおすすめの小説
ヤンデレエリートの執愛婚で懐妊させられます
沖田弥子
恋愛
職場の後輩に恋人を略奪された澪。終業後に堪えきれず泣いていたところを、営業部のエリート社員、天王寺明夜に見つかってしまう。彼に優しく慰められながら居酒屋で事の顛末を話していたが、なぜか明夜と一夜を過ごすことに――!? 明夜は傷心した自分を慰めてくれただけだ、と考える澪だったが、翌朝「責任をとってほしい」と明夜に迫られ、婚姻届にサインしてしまった。突如始まった新婚生活。明夜は澪の心と身体を幸せで満たしてくれていたが、徐々に明夜のヤンデレな一面が見えてきて――執着強めな旦那様との極上溺愛ラブストーリー!

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

お隣さんはヤのつくご職業
古亜
恋愛
佐伯梓は、日々平穏に過ごしてきたOL。
残業から帰り夜食のカップ麺を食べていたら、突然壁に穴が空いた。
元々薄い壁だと思ってたけど、まさか人が飛んでくるなんて……ん?そもそも人が飛んでくるっておかしくない?それにお隣さんの顔、初めて見ましたがだいぶ強面でいらっしゃいますね。
……え、ちゃんとしたもん食え?
ちょ、冷蔵庫漁らないでくださいっ!!
ちょっとアホな社畜OLがヤクザさんとご飯を食べるラブコメ
建築基準法と物理法則なんて知りません
登場人物や団体の名称や設定は作者が適当に生み出したものであり、現実に類似のものがあったとしても一切関係ありません。
2020/5/26 完結

虚弱なヤクザの駆け込み寺
菅井群青
恋愛
突然ドアが開いたとおもったらヤクザが抱えられてやってきた。
「今すぐ立てるようにしろ、さもなければ──」
「脅してる場合ですか?」
ギックリ腰ばかりを繰り返すヤクザの組長と、治療の相性が良かったために気に入られ、ヤクザ御用達の鍼灸院と化してしまった院に軟禁されてしまった女の話。
※なろう、カクヨムでも投稿
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。

ヤクザの若頭は、年の離れた婚約者が可愛くて仕方がない
絹乃
恋愛
ヤクザの若頭の花隈(はなくま)には、婚約者がいる。十七歳下の少女で組長の一人娘である月葉(つきは)だ。保護者代わりの花隈は月葉のことをとても可愛がっているが、もちろん恋ではない。強面ヤクザと年の離れたお嬢さまの、恋に発展する前の、もどかしくドキドキするお話。
お酒の席でナンパした相手がまさかの婚約者でした 〜政略結婚のはずだけど、めちゃくちゃ溺愛されてます〜
Adria
恋愛
イタリアに留学し、そのまま就職して楽しい生活を送っていた私は、父からの婚約者を紹介するから帰国しろという言葉を無視し、友人と楽しくお酒を飲んでいた。けれど、そのお酒の場で出会った人はその婚約者で――しかも私を初恋だと言う。
結婚する気のない私と、私を好きすぎて追いかけてきたストーカー気味な彼。
ひょんなことから一緒にイタリアの各地を巡りながら、彼は私が幼少期から抱えていたものを解決してくれた。
気がついた時にはかけがえのない人になっていて――
表紙絵/灰田様
《エブリスタとムーンにも投稿しています》
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる