優しい彼の裏の顔は、、、。

夏目萌

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STORY4

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「郁斗さん……ありがとうございます」

 郁斗の言葉で少しだけ不安が和らいだ詩歌は顔を上げて少しだけ笑顔を向けた。

 しかし、郁斗は自分が守るとは言ったものの、いつでも傍に居られるかというと、それには少しばかり無理がある。

「詩歌ちゃん。明日の夜、俺の部下を二人連れて行くよ。前々から紹介しようと思ってたんだ」
「部下の方を?」
「うん。基本俺が守る事には変わりないけど、仕事柄いつでも傍に付いていられる訳じゃないからね。それでも、詩歌ちゃん一人にはしないし、常に様子が分かる方が俺としても安心だからボディーガードとして俺の部下を付けようと思う。勿論、俺が傍に居られる時は俺がその役をやるから心配しないでね」
「そんな、部下の方に申し訳ないですよ……」
「大丈夫。アイツら何をやらせてもヘマが多いけど、詩歌ちゃんを守るっていう任務ならまともにこなせると思うし、総合的には信用出来るし腕も確かだから安心してね」
「…………すみません、ありがとうございます」

 郁斗に負担をかけるだけじゃなくて、その部下にまで負担をかける事になるのを申し訳なく思った詩歌が断ろうとするも聞き入れて貰えず、明日の夜、店で紹介される事になってしまった。

 そして翌日の夜、約束通り店に美澄と小竹を連れてやって来た郁斗は早速詩歌に二人を紹介する。

「金髪の方が美澄。黒髪の方が小竹だ」
「初めまして、美澄  とらです!」
「初めまして、小竹  侑士ゆうしです」

 二人は久しぶりのキャバクラにテンションが上がってはいるものの、警護対象となる詩歌ときちんと姿勢を正し、名を名乗った。

「美澄、小竹。この子は詩歌ちゃん。店では『白雪』って名乗ってるから、くれぐれも間違えないようにね。まあ、よろしく頼むよ」
「初めまして、美澄さん、小竹さん。花房  詩歌です。よろしくお願いします」

 いつも通りきちっと姿勢を正してお辞儀をする彼女の姿に見惚れる二人。

 今日は周りの目を気にせず話がしたいという郁斗の申し出もありVIPルームでの接客という事で、詩歌はいくらか気が楽そうだった。

「それじゃあ早速本題に入るよ。ここに来るまでに詩歌ちゃんの境遇を多少話したとは思うけど、彼女は今、半グレ集団【苑流えんりゅう】に行方を捜索されてる」
「苑流?」
「苑流は近頃【黛組まゆずみぐみ】とつるんでるグループだよ」
「黛組って、関西連合【多々良会たたらかい】の傘下組織の中でも際どい事して多々良会ですら手を焼いてるっていうあの黛組ですか?」
「そう。正直、非常に厄介な連中だ」
「マジっすか?  かなりやべー案件じゃねぇっすか……」
「それは分かってる。だから俺は信頼出来るお前ら二人に詩歌ちゃんの警護を頼みたいんだよ」

 郁斗の話を聞いて美澄と小竹ですら険しい表情を浮かべているのを目の当たりにした詩歌は、自分を捜している組織がとんでもない相手なのだと再認識して思わず身震いした。
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