優しい彼の裏の顔は、、、。

夏目萌

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STORY2

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(駄目だ、スッキリしねぇ……。シャワーでも浴びて来るか)

 身体を起こしてソファーから降りた郁斗はシャワーを浴びに行く為リビングを出ようとすると、キッチンカウターに置いてあった自身のスマホの画面が付いている事に気付く。

 どうやら今しがた誰かからメッセージでも届いたようで、サイレントモードを解除し忘れた事に気付き、すぐにスマホを手に取った。

(恭輔さんからか……)

 メッセージは恭輔からで、何やら動画も一緒に送付されていた。

 それを再生した郁斗は何か面白い事でもあったのか彼の口角が微かに上がり、そのメッセージに返信した郁斗はスマホを元の場所に戻してシャワーを浴びに行った。

 その頃、詩歌はというと、

(……私、何だか変……)

 ベッドに横になったものの昼間眠ってしまったせいか全く眠くならず、何度か寝返りを打っては溜め息を吐く。

 そして、先程郁斗に迫られてからというもの胸のざわめきが未だ治まりきっておらず、初めての感覚に戸惑い続けていた。

(郁斗さん……見た目と全然違う……)

 彼がヤクザだという事を知った時はもの凄く驚いた。あんなに優しい人がと思ったからだ。

 けれど、実際の彼は優しいばかりじゃなくて、からかってくるような意地悪な一面もあった。

(……男の人って、二人きりになると……みんな、ああなの?)

 詩歌に婚約者はいたものの、ほんの数ヶ月前に聞かされただけで二人きりで話したのは一度きり、それもただ食事をしただけ。

 だから相手に迫られる事も無かったし、触れられる事も無かった詩歌にとって、郁斗の行動は全てが予想外過ぎたのだ。

(でも、嫌じゃ無かった……)

 普通、良く知りもしない人にあんな事をされれば嫌悪感を抱くはずなのに、それが全く無かった。まあ、これまでそういう経験が無かったのだから実際他の人に迫られた時どういう感情を抱くか、今の詩歌には分からないのだけど。

 それに、嫌だと口にした時、あれは触れられるのが嫌という訳じゃなくて、恥ずかしくて嫌だっただけ。

(もし、あのまま私が嫌だって言わなかったら……どうなってたんだろう……)

 詩歌だって異性と交際経験は無いものの、郁斗のあの行動の意味くらいは理解している。

 だから、あのまま先へ進んでいたらどうなっていたのかも、何となく予測は出来ている。

(……でも、郁斗さんはホストもしてたって言ってたから、ああいう事には……やっぱり慣れてるんだよね)

 ただ、女慣れしている郁斗にとってああいった行動に意味があったのか、詩歌にはそれが分からない。

(……誰にでも、ああいう事……するのかな)

 そう思うと何だか少し胸がチクリと痛み、締め付けられるような気がして苦しくなった。
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