優しい彼の裏の顔は、、、。

夏目萌

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STORY1

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「ご、ごめんなさい!  こんなところで寝てしまって!」
「いや、全然大丈夫だよ?  っていうか今はもう詩歌ちゃんの家でもあるんだから、どこで寝ても問題ないよ?」
「そんな……私はあくまでも住まわせてもらう身ですから……」
「だから、そんな事気にしないで良いって。それよりも、ずっと寝てたんでしょ?  流石にお腹空いてるんじゃない?」
「いえ、そんな事――」

『そんな事無いです』と続けようとした刹那、詩歌のお腹は、ぐぅぅーっという盛大な音を立てたせいで、静かな室内に鳴り響く。

「……す、すみません……」

 それが恥ずかしかったのか、詩歌は謝りながら顔を真っ赤に染めて俯いてしまう。

「あはは、お腹は正直だね?  別に謝る事じゃないよ。俺もお腹空いたし、何か頼もっか」

 そんな詩歌に郁斗は気にしていない素振りを見せて、自分もお腹が空いているからとメニュー表を見ながら料理を頼もうと提案した。

「……は、はい……」
「何が食べたい?」
「えっと……オススメとか、ありますか?」
「うーん、そうだなぁ、このホテルのお弁当は結構美味しいよ?」
「そうなんですね……」

 郁斗に言われて、五つ星ホテルのメニュー表を見ると、結構な値段に思わず二度見する。

「えっと……私は、やっぱりこっちのお弁当にしようかな……」

 流石にそんな高級な物を頼めるはずがない詩歌は、チェーン店の良心的な値段のお弁当にしようとするけれど、

「詩歌ちゃん、値段とか気にしなくて良いって言ったでしょ?  俺はこのお弁当頼むから詩歌ちゃんも同じのでいいよね?」

 郁斗には詩歌の考えている事が分かってしまい、五つ星ホテルの高級なお弁当を頼む事になった。

 暫くして、コンシェルジュが部屋までお弁当を届けてくれると、二人はテーブルにお弁当を広げて食べ始めた。

 和牛のすき焼き重に、ローストビーフ、海老と野菜の天ぷらに煮物という様々な料理が入った二段弁当は相当ボリュームがある。

「美味しい?」
「はい、凄く美味しいです」
「でしょ?  まあ、多少値は張るけど、やっぱり食べるなら美味しい物を食べないとねぇ」

 郁斗の言う事は最もかもしれないけれど、毎日こんな高価な物を食べていては金銭的に困るのではと詩歌は思う。

「……あの、郁斗さんは毎日こういった物を食べているんでしょうか?」
「ん?  いや、毎日ではないよ?  流石にこう高いのばっかりはね。時にはチェーン店の物も食べるし」
「あ、いえ、その……それもそうなんですけど、自炊はなさらないんでしょうか?」

 詩歌が一番気になったのは、毎日の食事は全てデリバリーや外食なのかという事なのだが、

「しないよ?  そもそも俺、料理出来ないからね。頼むしかないよ」

 料理が出来ないと言う郁斗はこれが日常だと言った。
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