32 / 34
脅かされた日常
9
しおりを挟む
「あ……、いや……」
逃げなきゃいけないと分かっているのに身体は思うように動かず、何歩か後ろに後退るのが精一杯。
更には馬宮が手にしている銃を見て、先程の音が何だったのかが分かる。
そして、馬宮が自分の目の前に居る事で、朔太郎が撃たれたのだと確信した咲結が絶望した、その時、
「伏せろ、咲結!!」
「!?」
突如聞こえてきた声に反応した咲結は瞬間的にその場にしゃがみ込むと、
「そいつに、近付くんじゃねぇよ!!」
「クソッ、お前、まだ動けんのかよ――」
朔太郎が鉄パイプを手に近付いて来て、驚く馬宮目掛けて振りかぶった。
馬宮は咄嗟に避けたものの鉄パイプが腕に当たり、弾みで拳銃は地面に落ちた。
「やりやがったな……」
だらんとした右腕が相当痛むのか、顔を顰めながら何とか落ちた拳銃を拾おうとする馬宮だったけれど、
「やらせねぇーよ!」
馬宮が拾うより先に拳銃を蹴り飛ばした朔太郎は、咲結を背に庇うように立ちはだかった。
「さっくん……」
「大丈夫だから、泣くな」
「うん……」
そして、咲結を安心させる為に「大丈夫」と口にした朔太郎だったけれど、よく見てみると、脇腹辺りに銃弾を受けたのか紫色のトレーナーに血が染み渡り、地面に垂れていた。
「さっくん、血が……」
「平気だって、こんなの、掠り傷……」
「嘘……だって、こんなに……」
「いいから、ここを離れるぞ」
戸惑う咲結の手を掴んだ朔太郎は落ちていた銃を拾い上げて倉庫から離れようと歩く。
けれど、
「逃げられると思うなよ、馬鹿が!」
後ろから馬宮の声が聞こえてきた瞬間、彼がもう一つの銃を隠し持っていた事を悟った朔太郎。
「危ねぇ!」
「きゃあ!?」
パンッと発砲音が聞こえたと同時に朔太郎が咲結に覆いかぶさる形で庇い、まともに銃弾を受ける事は免れたものの、
「くっ……」
肩に銃弾が掠った朔太郎は苦痛に顔を歪めていた。
「死ねよ、クソどもが!」
とにかく、咲結を守ろうと力の限りで彼女を抱き締め、銃弾を受ける覚悟で自身の身を犠牲にしようと構えていると、パンッパンッと別の方向から発砲音が聞こえてきた刹那、「うあっ」と声にならない声を上げた馬宮が倒れていく。
そして、
「朔! 無事か!?」
「朔太郎!」
焦りの表情を浮かべた理仁や朔太郎の兄である海堂 翔太郎が地面に倒れ込んでいる咲結と朔太郎の元へ駆け寄った。
「……理仁さん、……兄貴……」
「よく頑張ったな。翔、馬宮たちの方を頼む」
「はい」
ひとまず朔太郎が無事だと分かり、ホッと胸を撫で下ろした理仁は翔太郎に指示を送る。
「……っ、さっくん……」
「咲結、泣くなよ……」
理仁の手を借りて身体を起こした朔太郎を改めて見た咲結は、血だらけの彼の姿に涙を流した。
「だって、……血が……っ」
「平気だって、……掠っただけだから……」
「……っひっく……うう……っ」
朔太郎は平気だと言うものの、このまま血を流し続ければ危険な事は誰が見ても分かる事。
「朔、お前はすぐに病院だ。真琴、手を貸してくれ! それと……咲結、だったな、お前も一緒に来てくれ」
理仁は近くに居た組員の金井 真琴に朔太郎の介助を頼むと、泣きじゃくる咲結に付いてくるよう声を掛ける。
「……っ、はい……」
こうしてこの場を翔太郎や他の組員たちに任せた理仁は自身が運転する車で病院へと向かって行った。
逃げなきゃいけないと分かっているのに身体は思うように動かず、何歩か後ろに後退るのが精一杯。
更には馬宮が手にしている銃を見て、先程の音が何だったのかが分かる。
そして、馬宮が自分の目の前に居る事で、朔太郎が撃たれたのだと確信した咲結が絶望した、その時、
「伏せろ、咲結!!」
「!?」
突如聞こえてきた声に反応した咲結は瞬間的にその場にしゃがみ込むと、
「そいつに、近付くんじゃねぇよ!!」
「クソッ、お前、まだ動けんのかよ――」
朔太郎が鉄パイプを手に近付いて来て、驚く馬宮目掛けて振りかぶった。
馬宮は咄嗟に避けたものの鉄パイプが腕に当たり、弾みで拳銃は地面に落ちた。
「やりやがったな……」
だらんとした右腕が相当痛むのか、顔を顰めながら何とか落ちた拳銃を拾おうとする馬宮だったけれど、
「やらせねぇーよ!」
馬宮が拾うより先に拳銃を蹴り飛ばした朔太郎は、咲結を背に庇うように立ちはだかった。
「さっくん……」
「大丈夫だから、泣くな」
「うん……」
そして、咲結を安心させる為に「大丈夫」と口にした朔太郎だったけれど、よく見てみると、脇腹辺りに銃弾を受けたのか紫色のトレーナーに血が染み渡り、地面に垂れていた。
「さっくん、血が……」
「平気だって、こんなの、掠り傷……」
「嘘……だって、こんなに……」
「いいから、ここを離れるぞ」
戸惑う咲結の手を掴んだ朔太郎は落ちていた銃を拾い上げて倉庫から離れようと歩く。
けれど、
「逃げられると思うなよ、馬鹿が!」
後ろから馬宮の声が聞こえてきた瞬間、彼がもう一つの銃を隠し持っていた事を悟った朔太郎。
「危ねぇ!」
「きゃあ!?」
パンッと発砲音が聞こえたと同時に朔太郎が咲結に覆いかぶさる形で庇い、まともに銃弾を受ける事は免れたものの、
「くっ……」
肩に銃弾が掠った朔太郎は苦痛に顔を歪めていた。
「死ねよ、クソどもが!」
とにかく、咲結を守ろうと力の限りで彼女を抱き締め、銃弾を受ける覚悟で自身の身を犠牲にしようと構えていると、パンッパンッと別の方向から発砲音が聞こえてきた刹那、「うあっ」と声にならない声を上げた馬宮が倒れていく。
そして、
「朔! 無事か!?」
「朔太郎!」
焦りの表情を浮かべた理仁や朔太郎の兄である海堂 翔太郎が地面に倒れ込んでいる咲結と朔太郎の元へ駆け寄った。
「……理仁さん、……兄貴……」
「よく頑張ったな。翔、馬宮たちの方を頼む」
「はい」
ひとまず朔太郎が無事だと分かり、ホッと胸を撫で下ろした理仁は翔太郎に指示を送る。
「……っ、さっくん……」
「咲結、泣くなよ……」
理仁の手を借りて身体を起こした朔太郎を改めて見た咲結は、血だらけの彼の姿に涙を流した。
「だって、……血が……っ」
「平気だって、……掠っただけだから……」
「……っひっく……うう……っ」
朔太郎は平気だと言うものの、このまま血を流し続ければ危険な事は誰が見ても分かる事。
「朔、お前はすぐに病院だ。真琴、手を貸してくれ! それと……咲結、だったな、お前も一緒に来てくれ」
理仁は近くに居た組員の金井 真琴に朔太郎の介助を頼むと、泣きじゃくる咲結に付いてくるよう声を掛ける。
「……っ、はい……」
こうしてこの場を翔太郎や他の組員たちに任せた理仁は自身が運転する車で病院へと向かって行った。
0
お気に入りに追加
15
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

愛し愛され愛を知る。【完】
夏目萌
恋愛
訳あって住む場所も仕事も無い神宮寺 真彩に救いの手を差し伸べたのは、国内で知らない者はいない程の大企業を経営しているインテリヤクザで鬼龍組組長でもある鬼龍 理仁。
住み込み家政婦として高額な月収で雇われた真彩には四歳になる息子の悠真がいる。
悠真と二人で鬼龍組の屋敷に身を置く事になった真彩は毎日懸命に家事をこなし、理仁は勿論、組員たちとの距離を縮めていく。
特に危険もなく、落ち着いた日々を過ごしていた真彩の前に一人の男が現れた事で、真彩は勿論、理仁の生活も一変する。
そして、その男の存在があくまでも雇い主と家政婦という二人の関係を大きく変えていく――。
これは、常に危険と隣り合わせで悲しませる相手を作りたくないと人を愛する事を避けてきた男と、大切なモノを守る為に自らの幸せを後回しにしてきた女が『生涯を共にしたい』と思える相手に出逢い、恋に落ちる物語。
※ あくまでもフィクションですので、その事を踏まえてお読みいただければと思います。設定等合わない場合はごめんなさい。また、実在の人物・団体等とは一切関係ありません。


イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の体は溶けていく。
すずなり。
恋愛
人数合わせで参加した合コン。
そこで私は一人の男の人と出会う。
「俺には分かる。キミはきっと俺を好きになる。」
そんな言葉をかけてきた彼。
でも私には秘密があった。
「キミ・・・目が・・?」
「気持ち悪いでしょ?ごめんなさい・・・。」
ちゃんと私のことを伝えたのに、彼は食い下がる。
「お願いだから俺を好きになって・・・。」
その言葉を聞いてお付き合いが始まる。
「やぁぁっ・・!」
「どこが『や』なんだよ・・・こんなに蜜を溢れさせて・・・。」
激しくなっていく夜の生活。
私の身はもつの!?
※お話の内容は全て想像のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※表現不足は重々承知しております。まだまだ勉強してまいりますので温かい目で見ていただけたら幸いです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
では、お楽しみください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる