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脅かされた日常
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「あ? 何だよ、いきなり――っつーか、今何て言った?」
いきなり喧嘩腰で話し掛けられムッとした朔太郎だったが、玉井の言葉に引っかかりを感じてすぐに問い返す。
「だから、橘が変な男たちに絡まれたのはアンタのせいかって言ってんだけど」
問い掛けられた玉井もまた、もう一度同じ言葉を口にすると、朔太郎は玉井から咲結へ視線を移し、
「おい咲結、どういう事だ?」
彼女に状況説明を求めた。
「あの、とりあえず車に行こう、さっくん。玉井、さっきは本当にありがとう! それじゃあまたね!」
説明を求められた咲結はひとまず玉井から離れて朔太郎と二人になりたくて、車に行ってから話すと説明した後で玉井にお礼を言って、早々にその場から離れて行った。
残された玉井は去って行く咲結を心配そうに見つめた後、手を引かれて行く朔太郎へ怒りの視線を向け続けていた。
車に戻り、シートベルトを締めた二人。
朔太郎はすぐにでも先程玉井の言っていた話について聞きたかったものの、住宅街の路上にいつまでも車を停めてはおけないと落ち着いて話せる場所を求めて車を発進させる。
無言の車内、どこかへ向かって走り続ける中、咲結はポツリと口を開いた。
「……さっきの話だけど、実はね、帰り際、この前駅前でさっくんと怪我をした男の人を囲んでた相手の人たちが、私のところへ来たの。『海堂 朔太郎の知り合いだよね』って」
「やっぱり……アイツらが……」
「あの人たち、何なの? 私の名前、知ってた」
そう話す咲結を横目でチラリと盗み見た朔太郎は、彼女が震えているのを確認すると、すぐにでも抱き締めてやりたい衝動に駆られていく。
すると、ちょうど駐車場のある大きな公園前を通り掛かった朔太郎はすぐにその敷地に入って端の方へ車を停めた。
そして、自身のシートベルトを外した朔太郎は助手席側へ身を乗り出すと、咲結のシートベルトも外してから未だ怯え、震える彼女の身体を優しく抱き締めた。
「怖い思いさせて、ごめん。アイツらの動向はこっちでも気を付けてたんだけど、監視が甘かった。奴らは鬼龍組の傘下組織――っつっても分からねぇよな。とにかく、俺らの組織の下っ端みたいなところに居た奴らなんだけど、数カ月前にそこから抜けて、俺らと敵対する組織に行った奴らなんだ」
「……元は、仲間だったって事?」
「まあ、元はな。けど、元々反発する事も多くて問題の多い奴らだった。俺らのやり方が気に入らなくて抜けたって話だったし」
「……それで、さっくんは狙われてるの?」
「いや、まあ、俺よりも鬼龍組組長の理仁さんが狙われてるけど、奴らは鬼龍組全体を良く思ってないから、鬼龍組と関わりのある奴なら誰でも良いんだと思う」
「それで、さっくんと繋がりのある私も、狙われたって事?」
「……ああ」
そこで咲結はようやく気付く。
この前、朔太郎が慌てていた事の重大さに。
咲結は狙われて初めて分かったのだ、自分がとんでもなく危険な世界に足を踏み入れたという事実に。
「――咲結、分かったろ? だから危険なんだ。本来なら今こうして一緒に居る事も、リスクでしかない。お前の友達が言ってる事は、正しいんだよ」
「……ッ」
「だからさ、やっぱりもう一度よく考え直して――」
咲結は自分が置かれている立場を理解出来ていなかった自分が情けなくなるのと同時に、朔太郎とは一緒に居たいけれど、先程のような怖い思いをこれからもするのかと思うと不安でたまらなくなり、何とも言えない気持ちになった。
それでも、朔太郎の事が好きで離れたくない思いの方が勝っていた咲結は、
「……私、考えが甘かったんだね。でも、それでも私は……さっくんと居たい! それだけさっくんの事が好きなの! だから……離れるとか、言わないで? 考え直せなんて、言わないで?」
ギュッと彼に抱きつき、これからも傍に居たいという思いを告げた。
いきなり喧嘩腰で話し掛けられムッとした朔太郎だったが、玉井の言葉に引っかかりを感じてすぐに問い返す。
「だから、橘が変な男たちに絡まれたのはアンタのせいかって言ってんだけど」
問い掛けられた玉井もまた、もう一度同じ言葉を口にすると、朔太郎は玉井から咲結へ視線を移し、
「おい咲結、どういう事だ?」
彼女に状況説明を求めた。
「あの、とりあえず車に行こう、さっくん。玉井、さっきは本当にありがとう! それじゃあまたね!」
説明を求められた咲結はひとまず玉井から離れて朔太郎と二人になりたくて、車に行ってから話すと説明した後で玉井にお礼を言って、早々にその場から離れて行った。
残された玉井は去って行く咲結を心配そうに見つめた後、手を引かれて行く朔太郎へ怒りの視線を向け続けていた。
車に戻り、シートベルトを締めた二人。
朔太郎はすぐにでも先程玉井の言っていた話について聞きたかったものの、住宅街の路上にいつまでも車を停めてはおけないと落ち着いて話せる場所を求めて車を発進させる。
無言の車内、どこかへ向かって走り続ける中、咲結はポツリと口を開いた。
「……さっきの話だけど、実はね、帰り際、この前駅前でさっくんと怪我をした男の人を囲んでた相手の人たちが、私のところへ来たの。『海堂 朔太郎の知り合いだよね』って」
「やっぱり……アイツらが……」
「あの人たち、何なの? 私の名前、知ってた」
そう話す咲結を横目でチラリと盗み見た朔太郎は、彼女が震えているのを確認すると、すぐにでも抱き締めてやりたい衝動に駆られていく。
すると、ちょうど駐車場のある大きな公園前を通り掛かった朔太郎はすぐにその敷地に入って端の方へ車を停めた。
そして、自身のシートベルトを外した朔太郎は助手席側へ身を乗り出すと、咲結のシートベルトも外してから未だ怯え、震える彼女の身体を優しく抱き締めた。
「怖い思いさせて、ごめん。アイツらの動向はこっちでも気を付けてたんだけど、監視が甘かった。奴らは鬼龍組の傘下組織――っつっても分からねぇよな。とにかく、俺らの組織の下っ端みたいなところに居た奴らなんだけど、数カ月前にそこから抜けて、俺らと敵対する組織に行った奴らなんだ」
「……元は、仲間だったって事?」
「まあ、元はな。けど、元々反発する事も多くて問題の多い奴らだった。俺らのやり方が気に入らなくて抜けたって話だったし」
「……それで、さっくんは狙われてるの?」
「いや、まあ、俺よりも鬼龍組組長の理仁さんが狙われてるけど、奴らは鬼龍組全体を良く思ってないから、鬼龍組と関わりのある奴なら誰でも良いんだと思う」
「それで、さっくんと繋がりのある私も、狙われたって事?」
「……ああ」
そこで咲結はようやく気付く。
この前、朔太郎が慌てていた事の重大さに。
咲結は狙われて初めて分かったのだ、自分がとんでもなく危険な世界に足を踏み入れたという事実に。
「――咲結、分かったろ? だから危険なんだ。本来なら今こうして一緒に居る事も、リスクでしかない。お前の友達が言ってる事は、正しいんだよ」
「……ッ」
「だからさ、やっぱりもう一度よく考え直して――」
咲結は自分が置かれている立場を理解出来ていなかった自分が情けなくなるのと同時に、朔太郎とは一緒に居たいけれど、先程のような怖い思いをこれからもするのかと思うと不安でたまらなくなり、何とも言えない気持ちになった。
それでも、朔太郎の事が好きで離れたくない思いの方が勝っていた咲結は、
「……私、考えが甘かったんだね。でも、それでも私は……さっくんと居たい! それだけさっくんの事が好きなの! だから……離れるとか、言わないで? 考え直せなんて、言わないで?」
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