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理解されない悲しい関係
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「――そっか。やっぱりな」
咲結の話を聞き終えた朔太郎は全てを分かっていた口振りだった。
「こうなる事を、俺は心配してた。咲結の気持ちは嬉しいけどさ、この先もずっとそんな思いするのは辛いと思うし、俺としては、咲結にそんな思いはして欲しくねぇよ」
「……でも、それじゃあ私はさっくんと別れなきゃならない。そんなのやだ」
「そりゃ、俺だって嫌だけど……せめてさ、お前が高校卒業するまでは、やっぱり友達って関係に留めておいた方が良いと思うんだよ……」
「やだ! 私はさっくんの彼女がいい! 友達なんてやだ!」
「咲結……」
朔太郎が咲結の為を思って言っているという事は分かる。
けれど咲結は朔太郎と付き合えて嬉しいし、また『友達』に戻るなんて嫌だった。
「私、一人でも大丈夫! もう弱音なんて吐かない! だから、そんな事言わないで……私はさっくんの事が好き……周りから認められなくても、さっくんが居てくれればそれでいい。さっくんが居なくなる方が、やだよ……」
こんな風に駄々をこねたりするから、子供だと思われると分かっていても、他の誰が居ても朔太郎が居てくれなければ意味が無い。それくらい、朔太郎が好きだと実感していた咲結は意見を曲げなかった。
そんな咲結の訴えに何も答えない朔太郎は暫く無言のままで車を走らせる。
そして、途中にあった道の駅に入って端の方に車を停めた朔太郎はシートベルトを外すと咲結の方に向き直り、彼女の身体を抱き締めた。
「さっくん?」
突然の事に驚く咲結に彼は、
「そこまで想ってくれて嬉しいよ。俺だって咲結の事が好きだから、離したくない。けどさ、俺は辛いんだよ、俺のせいでお前が一人になって淋しい思いをしたり、大好きな友達とも離れなきゃいけなくなるなんてさ……自分が何かをされるよりも、耐えられねぇよ」
そんな胸の内を話していく。
「……さっくん……」
朔太郎が心配してくれる事は嬉しいけれど、友達よりも彼女として傍に居たい咲結は、
「我侭でごめんね……でもやっぱり私は、彼女がいい。友達なんて、やだ」
朔太郎の思いは十分理解出来たものの決して首を縦に振る事はしなかった。
「……咲結」
そんな咲結を前にした朔太郎はこれ以上友達という関係に戻る提案は無理だと諦める。
「……分かった。お前がそこまで言うなら、もう言わねぇよ。その代わり、辛い事があったら俺にだけは隠さずに話してくれ。俺が原因で辛い思いをした時は、せめて、傍に居させて欲しいんだ」
そして、自分に何が出来るかを考えた朔太郎は、今日みたいに辛い思いをした時は包み隠さず話して欲しい事を告げた。自分が原因で辛い思いをしているのに、一人で泣かせたくなかったから。
「うん、分かった」
それに快く頷いた咲結は朔太郎の温もりに包まれながら、今まで我慢していたのか、再び込み上げて来た涙を静かに流していく。
咲結が泣いている事に気づいた朔太郎はそれに触れる事は無く、ただ無言で頭を撫でて泣き止むのを待っていた。
暫くして、咲結が泣き止んだのとほぼ同時くらいに朔太郎のスマホから着信音が鳴り響く。
「悪い、ちょっと電話出てくるわ」
「うん」
一言断った朔太郎はスマホを手にして一人車を降りて外で電話に出た。
まだ朔太郎にくっついていたかった咲結は名残惜しげに窓の外を眺めて彼の電話が終わるのを待っていたのだけど、何やらトラブルでもあったのか、表情が険しいものへと変わっていくのを不安げに見守っていく。
そして、五分程で電話を終えた朔太郎が再び車へ乗り込むと、
「咲結、悪いんだけど急用が出来たから家まで送る。もっと傍に居てやれなくてごめんな」
やはり何かあったらしく、急遽家まで送っていく事を告げると、早々に車を出して咲結の自宅へ向かって行く。
まだ一緒に居られると思っていただけに淋しい気持ちを隠しきれない咲結だけど、朔太郎の慌て具合から余程の用事なのだと理解し、状況を素直に受け入れた。
後少しで咲結の自宅周辺に辿り着く頃、再び朔太郎のスマホから着信音が鳴り響く。
住宅街で狭い道とあって路肩に停める事が出来ない朔太郎はワイヤレスイヤホンを取り出して耳に付けて電話に出ると、
「は? マジかよ。分かった、すぐに向かう」
更に何かあったらしく、焦る朔太郎。
そして、電話を終えると咲結に、
「咲結、悪いんだけど家に送るのもう少し後になる。ちょっと寄り道させてくれ」
何があったか詳しく語らない朔太郎はそれだけ告げると咲結の自宅方向から逸れて別の場所へ車を走らせて行った。
咲結の話を聞き終えた朔太郎は全てを分かっていた口振りだった。
「こうなる事を、俺は心配してた。咲結の気持ちは嬉しいけどさ、この先もずっとそんな思いするのは辛いと思うし、俺としては、咲結にそんな思いはして欲しくねぇよ」
「……でも、それじゃあ私はさっくんと別れなきゃならない。そんなのやだ」
「そりゃ、俺だって嫌だけど……せめてさ、お前が高校卒業するまでは、やっぱり友達って関係に留めておいた方が良いと思うんだよ……」
「やだ! 私はさっくんの彼女がいい! 友達なんてやだ!」
「咲結……」
朔太郎が咲結の為を思って言っているという事は分かる。
けれど咲結は朔太郎と付き合えて嬉しいし、また『友達』に戻るなんて嫌だった。
「私、一人でも大丈夫! もう弱音なんて吐かない! だから、そんな事言わないで……私はさっくんの事が好き……周りから認められなくても、さっくんが居てくれればそれでいい。さっくんが居なくなる方が、やだよ……」
こんな風に駄々をこねたりするから、子供だと思われると分かっていても、他の誰が居ても朔太郎が居てくれなければ意味が無い。それくらい、朔太郎が好きだと実感していた咲結は意見を曲げなかった。
そんな咲結の訴えに何も答えない朔太郎は暫く無言のままで車を走らせる。
そして、途中にあった道の駅に入って端の方に車を停めた朔太郎はシートベルトを外すと咲結の方に向き直り、彼女の身体を抱き締めた。
「さっくん?」
突然の事に驚く咲結に彼は、
「そこまで想ってくれて嬉しいよ。俺だって咲結の事が好きだから、離したくない。けどさ、俺は辛いんだよ、俺のせいでお前が一人になって淋しい思いをしたり、大好きな友達とも離れなきゃいけなくなるなんてさ……自分が何かをされるよりも、耐えられねぇよ」
そんな胸の内を話していく。
「……さっくん……」
朔太郎が心配してくれる事は嬉しいけれど、友達よりも彼女として傍に居たい咲結は、
「我侭でごめんね……でもやっぱり私は、彼女がいい。友達なんて、やだ」
朔太郎の思いは十分理解出来たものの決して首を縦に振る事はしなかった。
「……咲結」
そんな咲結を前にした朔太郎はこれ以上友達という関係に戻る提案は無理だと諦める。
「……分かった。お前がそこまで言うなら、もう言わねぇよ。その代わり、辛い事があったら俺にだけは隠さずに話してくれ。俺が原因で辛い思いをした時は、せめて、傍に居させて欲しいんだ」
そして、自分に何が出来るかを考えた朔太郎は、今日みたいに辛い思いをした時は包み隠さず話して欲しい事を告げた。自分が原因で辛い思いをしているのに、一人で泣かせたくなかったから。
「うん、分かった」
それに快く頷いた咲結は朔太郎の温もりに包まれながら、今まで我慢していたのか、再び込み上げて来た涙を静かに流していく。
咲結が泣いている事に気づいた朔太郎はそれに触れる事は無く、ただ無言で頭を撫でて泣き止むのを待っていた。
暫くして、咲結が泣き止んだのとほぼ同時くらいに朔太郎のスマホから着信音が鳴り響く。
「悪い、ちょっと電話出てくるわ」
「うん」
一言断った朔太郎はスマホを手にして一人車を降りて外で電話に出た。
まだ朔太郎にくっついていたかった咲結は名残惜しげに窓の外を眺めて彼の電話が終わるのを待っていたのだけど、何やらトラブルでもあったのか、表情が険しいものへと変わっていくのを不安げに見守っていく。
そして、五分程で電話を終えた朔太郎が再び車へ乗り込むと、
「咲結、悪いんだけど急用が出来たから家まで送る。もっと傍に居てやれなくてごめんな」
やはり何かあったらしく、急遽家まで送っていく事を告げると、早々に車を出して咲結の自宅へ向かって行く。
まだ一緒に居られると思っていただけに淋しい気持ちを隠しきれない咲結だけど、朔太郎の慌て具合から余程の用事なのだと理解し、状況を素直に受け入れた。
後少しで咲結の自宅周辺に辿り着く頃、再び朔太郎のスマホから着信音が鳴り響く。
住宅街で狭い道とあって路肩に停める事が出来ない朔太郎はワイヤレスイヤホンを取り出して耳に付けて電話に出ると、
「は? マジかよ。分かった、すぐに向かう」
更に何かあったらしく、焦る朔太郎。
そして、電話を終えると咲結に、
「咲結、悪いんだけど家に送るのもう少し後になる。ちょっと寄り道させてくれ」
何があったか詳しく語らない朔太郎はそれだけ告げると咲結の自宅方向から逸れて別の場所へ車を走らせて行った。
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