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友達以上になりたい
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広い玄関ホールに長く続く廊下、飾ってある風景画や高価そうな壺に驚きながら、15畳くらいはありそうな客間へ通された咲結は、「あの……」と真彩に声を掛ける。
「驚いたでしょ? 恐らく貴方も気付いていると思うけど、ここは鬼龍組組長の御屋敷でもあるの。それと、朔太郎くんはその組員の一人なのよ」
ここへ来て薄々気付いていた事を真彩に言い当てられた咲結は言葉を失い、ただ呆然と立ち尽くす。
「朔太郎くんは隠すつもりが無かったみたいだけど、やっぱり伝えていなかったのね。それと……咲結ちゃんは朔太郎くんの事が好きなのよね?」
「……それは……」
「いいのよ、隠さなくても。ただね、私たちは皆、極道の世界を生きてる。その分危険が伴うの。私も元は貴方と同じ、この世界に縁の無い暮らしをしていたから戸惑う気持ちは良く分かる。でもね、だからこそ朔太郎くんとこの先も関わりたいのであれば、それなりの覚悟が必要になるけど、咲結ちゃんはまだ高校生よね? 大人の朔太郎くんに魅力を感じるのも分からなくはないけど、出来る事なら、これ以上は深入りしない方がいいと、私は思うのよ……」
「…………」
真彩の言葉に、咲結はますます何も言えなかった。
いきなり極道だのという話を聞かされて頭が追いつかないのに、朔太郎にはこれ以上深入りすべきではないと言われてしまい、咲結はどうしていいか分からなかったのだ。
(極道……漫画とかドラマでしか知らない……。そんな世界を、さっくんは生きてるの?)
どちらも口を開かず沈黙で気まずい空気が流れていた、その時、
「ママ、おかえり! 理真がママ探して泣いてるよ!」
どこか真彩に良く似た面影を持つ少年がいきなり襖を開きながらそう口にした。
「悠真! 駄目じゃない、お客様が居るんだからきちんと声掛けしてから開けなきゃ」
「あ、ごめんなさい。いらっしゃいませ、お姉さん! ぼく、鬼龍 悠真です!」
「あ、えっと、どうも。橘 咲結です」
「ごめんなさいね、咲結ちゃん。この子、私の息子なの。朔太郎くんにすごく懐いてるのよ」
「お姉さん、朔のお友達?」
「え? あ、うん……そうだよ」
「そうなんだ! あ、朔!」
「おー、悠真。どうしたんだ?」
「理真が泣いてたからママを呼びに来たんだよ」
「そっか。あ、姉さん、ありがとうございます。荷物は全て運んで置いたんで、悠真と理真のところへ行ってください」
「ありがとう。それじゃあ、私はこれで」
「お姉さんバイバイ」
荷物を運び終えた朔太郎がやって来た事で悠真と真彩は客間を出て行き、朔太郎と咲結の二人が残された。
「……あの、さっくん」
「ん?」
「真彩さんから、聞いたんだけど……その、さっくんは、鬼龍組っていうところの組員さんって、本当なの?」
咲結がそう口にすると朔太郎は一瞬驚きの表情を浮かべたものの、すぐにいつも通りの笑顔を浮かべ、
「あー、姉さん話したのか。そうだよ。俺は鬼龍組の組員だ。わざわざ話す必要は無いかと思って言わなかった」
「……そう、だったんだ……」
咲結の表情がどんどん曇っていくのを目の当たりにした朔太郎は、
「怖いか? 悪い、やっぱ初めに話しておくべきだったな。送るから、もう行こうぜ」
自分の素性を知った咲結を気遣い、家まで送ると言って部屋を出ようとする。
けれど咲結は、
「待ってさっくん、違う! そうじゃないの!」
大きな声を上げて朔太郎を制止した。
「別にいいって、そういう反応したからって咲結を嫌いになるとかねぇし」
「ううん、私は別に怖いとか思ってない! ただ、いきなりで驚いただけ! その、私、極道の世界? とか全然分からないけど、危険な世界っていうのは分かる。そんな危険な世界にさっくんがいるのかと思うと、不安だけど……でも、カッコいいなって、思った」
「……は?」
「だからさっくんはいつも余裕で、大人で、強いんだね! ますます惚れちゃった!」
さっきまでの不安げな表情から一変、満面の笑みを浮かべた咲結に、朔太郎は面を食らっていた。
「驚いたでしょ? 恐らく貴方も気付いていると思うけど、ここは鬼龍組組長の御屋敷でもあるの。それと、朔太郎くんはその組員の一人なのよ」
ここへ来て薄々気付いていた事を真彩に言い当てられた咲結は言葉を失い、ただ呆然と立ち尽くす。
「朔太郎くんは隠すつもりが無かったみたいだけど、やっぱり伝えていなかったのね。それと……咲結ちゃんは朔太郎くんの事が好きなのよね?」
「……それは……」
「いいのよ、隠さなくても。ただね、私たちは皆、極道の世界を生きてる。その分危険が伴うの。私も元は貴方と同じ、この世界に縁の無い暮らしをしていたから戸惑う気持ちは良く分かる。でもね、だからこそ朔太郎くんとこの先も関わりたいのであれば、それなりの覚悟が必要になるけど、咲結ちゃんはまだ高校生よね? 大人の朔太郎くんに魅力を感じるのも分からなくはないけど、出来る事なら、これ以上は深入りしない方がいいと、私は思うのよ……」
「…………」
真彩の言葉に、咲結はますます何も言えなかった。
いきなり極道だのという話を聞かされて頭が追いつかないのに、朔太郎にはこれ以上深入りすべきではないと言われてしまい、咲結はどうしていいか分からなかったのだ。
(極道……漫画とかドラマでしか知らない……。そんな世界を、さっくんは生きてるの?)
どちらも口を開かず沈黙で気まずい空気が流れていた、その時、
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どこか真彩に良く似た面影を持つ少年がいきなり襖を開きながらそう口にした。
「悠真! 駄目じゃない、お客様が居るんだからきちんと声掛けしてから開けなきゃ」
「あ、ごめんなさい。いらっしゃいませ、お姉さん! ぼく、鬼龍 悠真です!」
「あ、えっと、どうも。橘 咲結です」
「ごめんなさいね、咲結ちゃん。この子、私の息子なの。朔太郎くんにすごく懐いてるのよ」
「お姉さん、朔のお友達?」
「え? あ、うん……そうだよ」
「そうなんだ! あ、朔!」
「おー、悠真。どうしたんだ?」
「理真が泣いてたからママを呼びに来たんだよ」
「そっか。あ、姉さん、ありがとうございます。荷物は全て運んで置いたんで、悠真と理真のところへ行ってください」
「ありがとう。それじゃあ、私はこれで」
「お姉さんバイバイ」
荷物を運び終えた朔太郎がやって来た事で悠真と真彩は客間を出て行き、朔太郎と咲結の二人が残された。
「……あの、さっくん」
「ん?」
「真彩さんから、聞いたんだけど……その、さっくんは、鬼龍組っていうところの組員さんって、本当なの?」
咲結がそう口にすると朔太郎は一瞬驚きの表情を浮かべたものの、すぐにいつも通りの笑顔を浮かべ、
「あー、姉さん話したのか。そうだよ。俺は鬼龍組の組員だ。わざわざ話す必要は無いかと思って言わなかった」
「……そう、だったんだ……」
咲結の表情がどんどん曇っていくのを目の当たりにした朔太郎は、
「怖いか? 悪い、やっぱ初めに話しておくべきだったな。送るから、もう行こうぜ」
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けれど咲結は、
「待ってさっくん、違う! そうじゃないの!」
大きな声を上げて朔太郎を制止した。
「別にいいって、そういう反応したからって咲結を嫌いになるとかねぇし」
「ううん、私は別に怖いとか思ってない! ただ、いきなりで驚いただけ! その、私、極道の世界? とか全然分からないけど、危険な世界っていうのは分かる。そんな危険な世界にさっくんがいるのかと思うと、不安だけど……でも、カッコいいなって、思った」
「……は?」
「だからさっくんはいつも余裕で、大人で、強いんだね! ますます惚れちゃった!」
さっきまでの不安げな表情から一変、満面の笑みを浮かべた咲結に、朔太郎は面を食らっていた。
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