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友達以上になりたい

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 あの日以降、心のモヤモヤが晴れないまま、日にちだけが過ぎていく。

 ある日の放課後、優茉と寄り道した帰り、母親から買い物を頼まれていた咲結は電車に乗る前に済ませてしまおと、いつもは寄らないスーパーへ立ち寄った。

 すると、

(え?  また……?)

 スーパーの野菜売り場で、またしても朔太郎と先日も一緒にいた女の人が二人仲良く買い物をしている姿を目撃した。

(何なの?  いくら尊敬してる人の奥さんって言っても、これじゃあまるで夫婦じゃん。相手の女の人も、さっくんの事、凄く信頼してる感じだし……)

 送迎を頼まれただけならまだ納得も出来た咲結だけど、あんな風に仲良く買い物をしている風景は何だか凄く嫌だったのか、気付けば二人の方へ足を進めていき、

「さっくん!」

 怒りに身を任せた咲結は、無意識のうちに朔太郎の名前を呼んでいた。

「咲結?」

 それには流石の朔太郎も驚いたようで、目を丸くしながら咲結を見る。

 何やら怒っている咲結と驚いている朔太郎、二人の間に立っていた女の人が「朔太郎くんの、知り合い?」と朔太郎に尋ねると、

「あ、はい。ほら、この前俺と姉さんと悠真が一緒に居たら、夫婦だと間違われた話したじゃないっすか、コイツがその勘違いしたヤツです」

 可笑しそうに笑いながら朔太郎は聞いてきた女の人に咲結について説明をする。

 それを聞いた彼女は、

「あ、この子がそうだったのね。初めまして、私、鬼龍きりゅう  真彩まあやって言います」

 未だ膨れっ面をしている咲結相手に、笑顔で名前を名乗った。

 真彩が名乗った事で、流石にいつまでも不機嫌さを出す訳にはいかないと思い直した咲結は、少しだけ戸惑い気味に、

「……は、初めまして、橘  咲結です」

 挨拶をして名前を名乗る。

「咲結ちゃんの事は、朔太郎くんから聞いてるのよ。ごめんなさいね、何だか変な勘違いさせちゃって」
「いやいや、別に姉さんが謝る事じゃないっすよ。コイツが勝手に勘違いしただけですし」
「でも……」
「つーか、咲結は何でこんなとこにいんだよ?  ここ、家の近くじゃねーじゃん」
「あ、うん……友達と寄り道した帰りに、寄っただけ……」
「しゃーねぇな、それじゃあ送ってやるからさっさと買い物済ませろよ。俺らもすぐ済ますから」
「え、いいよ!  一人で帰れるし」
「遠慮すんなよ。いいっすか、姉さん」
「私は全然構わないよ。咲結ちゃんさえ良ければ是非」

 そう言われてしまうと、咲結から断る事が出来なくなる。

(何これ?  どういう展開?)

 怒りに任せて声なんて掛けなければ良かったと後悔しながら咲結は、

「……それじゃあ、お願いします……」

 成り行きで買い物を済ませた後、朔太郎に送って貰う事になってしまったのだ。


 買い物を終えた咲結は朔太郎が運転する車の助手席に乗り、運転席側の後部座席に真彩が座る形になった。

「咲結ちゃん、まだ時間あったりする?」
「え?  は、はい……まあ……」
「それならちょっと、家に寄っていかない?  貴方に話したい事があるの」

 朔太郎が車を発進させたタイミングで真彩の方から咲結にそう声を掛けると、突然自宅に誘われた咲結は目を丸くする。

「え?  で、でも……」
「咲結に話?  まあ、悠真ゆうまも帰って来てるだろうし、理真りまも昼寝から起きてる頃かもしれないッスから、早めに帰る方がいいッスよね。つー訳で咲結、悪いけど一旦家に寄って行くから俺が荷物片付けてる間、姉さんと話しててくれよ。な?」
「え?  あ、うん……それじゃあ、お言葉に甘えて……」

 何が何だか分からない事だらけの咲結をよそに話は進み、急遽真彩の自宅へ向かう事になった。

(……悠真と理真って、誰?  それに、今から向かうのは真彩さんの自宅じゃないの?  さっくんも一緒に住んでるの?)

 咲結の中で疑問は膨らむばかりだった。

 それから暫くして高級住宅地へと差し掛かり、窓の外に視線を向けていた咲結は驚くばかり。

 そして車は坂を上っていき、上りきった先の一際大きな敷地にある家の前で停まった。

「……こ、ここが、真彩さんのご自宅なんですか?」

 寄棟造りの瓦屋根に敷地と道路を隔てる高い外壁。そして門の前には硬い表情の男が数人立って、車を出迎えていた。

「そうだよ。まぁ、咲結の言いたい事は分かるけど、今はとりあえず……姉さん、俺荷物運んで来るんで、咲結の事お願いしますね」
「勿論。咲結ちゃん、こっちよ」
「咲結、姉さんに付いてって、中で待ってて」
「わ、分かった……」

 咲結は聞きたい事だらけの状況に戸惑いつつも、言われた通り真彩に付いて中へ入っていった。
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