13 / 34
もっと知りたい、近付きたい
5
しおりを挟む
何でも聞いていいと言われ、咲結の頭に真っ先に思い浮かんだ質問は、
「あの、さっくんって、お付き合いしている人、いる!?」
朔太郎に彼女がいるかどうかという事だった。
「はあ? お付き合い? って、彼女がいるかどうかって事だろ? いねぇよ。つーか俺、そういうの苦手なんだよな……。ま、保育士の手伝い始めてからは女と関わる事もそれなりにあるけどさ、元は男ばっかのとこで働いてたからぶっちゃけ女と関わるの苦手なんだよ」
「そうなんだ? なんか、意外……」
「意外? おい、それじゃあ何か? 咲結は俺が女慣れしてるって思ってんのかよ?」
「まぁ、それなりに?」
「俺、そんな遊んでるように見えるか?」
咲結の言葉に軽くショック受けている朔太郎。
「ご、ごめん、そういうつもりで言ったわけじゃないの……。その、さっくんは私よりも大人だし、それなりに女の人とお付き合いしてるのかなって……気になって……」
「ふーん? ま、いいけどな。それじゃあ逆に聞くけどよ、咲結はどうなんだ?」
「え? 私?」
「まあ、よくナンパされてるみてぇだし、やっぱモテんじゃねぇの?」
「ううん、モテないよ! そもそも私、男の人と付き合った事ないもん……」
「……そっか、そうだったのか。てっきり付き合った事くらいはあると思ってたわ」
「ええ? 私、そんな軽そうに見える?」
「いや、別にそうは言ってねぇって。今どきの高校生って彼氏くらい普通にいるモンなのかと思ったからさぁ」
話をしてみると、どうやら互いに思っていたイメージと少し違っていたらしく、お互い驚く事が多々あったようだ。
そして、咲結は一番聞きたい事を聞いてみる事にした。
「さっくん」
「ん?」
「あの……さっくんから見て、高校生は恋愛対象に入る?」
「へ?」
「年下は、恋愛対象になる?」
「…………それって……」
「…………私、さっくんのこと、気になってるの。今はただの知り合いだけど……もっと、近い存在になりたいって思ってる。本気だよ? 私に少しでも、可能性……あるかな?」
始めは、もう少し回りくどい言い方をしようかと迷っていた咲結だったけれど、少しでも距離を縮めたかった彼女はほぼ直球で向かう事に決めた。
咲結は一生懸命、自分の想いを伝えた。
それは朔太郎にも伝わった。
けれど、朔太郎は、
「……咲結、悪い事は言わねぇ。俺なんか止めておけ。お前の歳じゃ、俺みたいな二十歳過ぎた男は大人で魅力的に見えるのかもしれねぇ。けどな、俺はそんなに大人でもねぇし、恋愛とか、そういうのにかまけてる暇はねぇんだ。悪ぃな」
期待を持たせる事をしないよう、はっきり止めるように言ったのだ。
それを聞いた咲結は一瞬表情を曇らせたもののすぐに笑顔を浮かべ、
「ごめんね、さっくん。それは出来ないや。私、好きになったら諦め悪いんだ。可能性が0じゃないなら、私は諦められないから!」
ハッキリ、諦めるのは無理だと告げた。
それには朔太郎も呆気に取られ、思わず咲結に見入ってしまっていた。
「――お前、面白いな。そんな事言う奴初めてだ。普通あれで諦めるだろ?」
「あんな事くらいで諦めるなんて、それは本気じゃない証拠だよ。私の事が嫌いとか、年下なんて恋愛対象として見れない、有り得ないって言われたら諦めるかもしれないけど、さっきのさっくんの言い方じゃ納得出来ない。だから、諦めない!」
「……はあ。お前、頑固だな」
「そうかも。他人に言われたくらいじゃ直らないかもしれない」
「…………それじゃあ一つだけ、咲結に話しておく事がある」
「何?」
「ナンパされたり、男に連れ込まれそうになったらすぐに大声をあげる。自分で何とかしようなんて考えない。変な輩に襲われそうになったら人の多いところに逃げて、必ず、俺に連絡すること。今言った事、守れるか?」
「…………うん、守るよ?」
「……なら、こうして会ったりするのはいいよ。けど、恋愛対象とかそういうのは、今は考えられない。それは分かってくれるか?」
「うん! まずはもっとお互いを知らなきゃいけないもんね! これからもちょくちょく会ってくれるなら、今はそれで充分!」
結局、咲結に根負けした形で二人の関係は【知り合い】から【友達】へと発展した。
咲結にとって、この一歩はとても嬉しいものだった。
それから暫く話をした後、朔太郎が咲結を家まで送って行った。
「それじゃあさっくん、また会ってね?」
「ああ、いつでも連絡してくれ。会える時は会いに行くから」
「うん! 送ってくれてありがとう! 気を付けて帰ってね」
「ありがとな。それじゃ、またな」
咲結に見送られて朔太郎は車を出した。
一人になった車内でふぅーっと息を吐く。
(……高校生って、若いな……。ま、今はまだ、俺がどんな人間か、詳しく言わなくていいよな)
朔太郎はある事を言うべきか悩んだものの今はあくまでも【友達】という立ち位置なので、そこまで詳しく説明する必要はないと結論付け、言わない選択をして帰路に着いた。
「あの、さっくんって、お付き合いしている人、いる!?」
朔太郎に彼女がいるかどうかという事だった。
「はあ? お付き合い? って、彼女がいるかどうかって事だろ? いねぇよ。つーか俺、そういうの苦手なんだよな……。ま、保育士の手伝い始めてからは女と関わる事もそれなりにあるけどさ、元は男ばっかのとこで働いてたからぶっちゃけ女と関わるの苦手なんだよ」
「そうなんだ? なんか、意外……」
「意外? おい、それじゃあ何か? 咲結は俺が女慣れしてるって思ってんのかよ?」
「まぁ、それなりに?」
「俺、そんな遊んでるように見えるか?」
咲結の言葉に軽くショック受けている朔太郎。
「ご、ごめん、そういうつもりで言ったわけじゃないの……。その、さっくんは私よりも大人だし、それなりに女の人とお付き合いしてるのかなって……気になって……」
「ふーん? ま、いいけどな。それじゃあ逆に聞くけどよ、咲結はどうなんだ?」
「え? 私?」
「まあ、よくナンパされてるみてぇだし、やっぱモテんじゃねぇの?」
「ううん、モテないよ! そもそも私、男の人と付き合った事ないもん……」
「……そっか、そうだったのか。てっきり付き合った事くらいはあると思ってたわ」
「ええ? 私、そんな軽そうに見える?」
「いや、別にそうは言ってねぇって。今どきの高校生って彼氏くらい普通にいるモンなのかと思ったからさぁ」
話をしてみると、どうやら互いに思っていたイメージと少し違っていたらしく、お互い驚く事が多々あったようだ。
そして、咲結は一番聞きたい事を聞いてみる事にした。
「さっくん」
「ん?」
「あの……さっくんから見て、高校生は恋愛対象に入る?」
「へ?」
「年下は、恋愛対象になる?」
「…………それって……」
「…………私、さっくんのこと、気になってるの。今はただの知り合いだけど……もっと、近い存在になりたいって思ってる。本気だよ? 私に少しでも、可能性……あるかな?」
始めは、もう少し回りくどい言い方をしようかと迷っていた咲結だったけれど、少しでも距離を縮めたかった彼女はほぼ直球で向かう事に決めた。
咲結は一生懸命、自分の想いを伝えた。
それは朔太郎にも伝わった。
けれど、朔太郎は、
「……咲結、悪い事は言わねぇ。俺なんか止めておけ。お前の歳じゃ、俺みたいな二十歳過ぎた男は大人で魅力的に見えるのかもしれねぇ。けどな、俺はそんなに大人でもねぇし、恋愛とか、そういうのにかまけてる暇はねぇんだ。悪ぃな」
期待を持たせる事をしないよう、はっきり止めるように言ったのだ。
それを聞いた咲結は一瞬表情を曇らせたもののすぐに笑顔を浮かべ、
「ごめんね、さっくん。それは出来ないや。私、好きになったら諦め悪いんだ。可能性が0じゃないなら、私は諦められないから!」
ハッキリ、諦めるのは無理だと告げた。
それには朔太郎も呆気に取られ、思わず咲結に見入ってしまっていた。
「――お前、面白いな。そんな事言う奴初めてだ。普通あれで諦めるだろ?」
「あんな事くらいで諦めるなんて、それは本気じゃない証拠だよ。私の事が嫌いとか、年下なんて恋愛対象として見れない、有り得ないって言われたら諦めるかもしれないけど、さっきのさっくんの言い方じゃ納得出来ない。だから、諦めない!」
「……はあ。お前、頑固だな」
「そうかも。他人に言われたくらいじゃ直らないかもしれない」
「…………それじゃあ一つだけ、咲結に話しておく事がある」
「何?」
「ナンパされたり、男に連れ込まれそうになったらすぐに大声をあげる。自分で何とかしようなんて考えない。変な輩に襲われそうになったら人の多いところに逃げて、必ず、俺に連絡すること。今言った事、守れるか?」
「…………うん、守るよ?」
「……なら、こうして会ったりするのはいいよ。けど、恋愛対象とかそういうのは、今は考えられない。それは分かってくれるか?」
「うん! まずはもっとお互いを知らなきゃいけないもんね! これからもちょくちょく会ってくれるなら、今はそれで充分!」
結局、咲結に根負けした形で二人の関係は【知り合い】から【友達】へと発展した。
咲結にとって、この一歩はとても嬉しいものだった。
それから暫く話をした後、朔太郎が咲結を家まで送って行った。
「それじゃあさっくん、また会ってね?」
「ああ、いつでも連絡してくれ。会える時は会いに行くから」
「うん! 送ってくれてありがとう! 気を付けて帰ってね」
「ありがとな。それじゃ、またな」
咲結に見送られて朔太郎は車を出した。
一人になった車内でふぅーっと息を吐く。
(……高校生って、若いな……。ま、今はまだ、俺がどんな人間か、詳しく言わなくていいよな)
朔太郎はある事を言うべきか悩んだものの今はあくまでも【友達】という立ち位置なので、そこまで詳しく説明する必要はないと結論付け、言わない選択をして帰路に着いた。
0
お気に入りに追加
15
あなたにおすすめの小説
愛し愛され愛を知る。【完】
夏目萌
恋愛
訳あって住む場所も仕事も無い神宮寺 真彩に救いの手を差し伸べたのは、国内で知らない者はいない程の大企業を経営しているインテリヤクザで鬼龍組組長でもある鬼龍 理仁。
住み込み家政婦として高額な月収で雇われた真彩には四歳になる息子の悠真がいる。
悠真と二人で鬼龍組の屋敷に身を置く事になった真彩は毎日懸命に家事をこなし、理仁は勿論、組員たちとの距離を縮めていく。
特に危険もなく、落ち着いた日々を過ごしていた真彩の前に一人の男が現れた事で、真彩は勿論、理仁の生活も一変する。
そして、その男の存在があくまでも雇い主と家政婦という二人の関係を大きく変えていく――。
これは、常に危険と隣り合わせで悲しませる相手を作りたくないと人を愛する事を避けてきた男と、大切なモノを守る為に自らの幸せを後回しにしてきた女が『生涯を共にしたい』と思える相手に出逢い、恋に落ちる物語。
※ あくまでもフィクションですので、その事を踏まえてお読みいただければと思います。設定等合わない場合はごめんなさい。また、実在の人物・団体等とは一切関係ありません。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

好きな人がいるならちゃんと言ってよ
しがと
恋愛
高校1年生から好きだった彼に毎日のようにアピールして、2年の夏にようやく交際を始めることができた。それなのに、彼は私ではない女性が好きみたいで……。 彼目線と彼女目線の両方で話が進みます。*全4話

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。
海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。
ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。
「案外、本当に君以外いないかも」
「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」
「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」
そのドクターの甘さは手加減を知らない。
【登場人物】
末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。
恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる?
田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い?
【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】
インテリヤクザは子守りができない
タタミ
BL
とある事件で大学を中退した初瀬岳は、極道の道へ進みわずか5年で兼城組の若頭にまで上り詰めていた。
冷酷非道なやり口で出世したものの不必要に凄惨な報復を繰り返した結果、組長から『人間味を学べ』という名目で組のシマで立ちんぼをしていた少年・皆木冬馬の教育を任されてしまう。
なんでも性接待で物事を進めようとするバカな冬馬を煙たがっていたが、小学生の頃に親に捨てられ字もろくに読めないとわかると、徐々に同情という名の情を抱くようになり……──


ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる