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出逢い
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「やっと諦めたぜ。良かったな」
「あ、は、はい……」
チャラ男たちが立ち去り残された咲結は赤髪男に声を掛けられると、先程の言動を思い出したせいか少しだけ萎縮してしまう。
赤髪男は咲結が怯えていることに気づくと、
「怖がらせて悪かった! お前には何もしねぇから、そう怯えるなよ」
申し訳なさそうに頭を下げて謝った。
「い、いえ……そんな……。寧ろ、助けてくれてありがとうございました、本当に助かりました」
これには咲結も予想外だったのか謝られた事に驚くばかり。まだお礼を言っていないと気付いて慌てて感謝の思いを口にした。
「良いって。困ってる奴を放っておけなかっだけだし、それに、ああいう奴らはいけ好かねぇからさ」
一見ナンパ男たちと変わりのないチャラい男なのかと思っていた咲結は彼の言葉に胸を打たれた。周りは皆、関わりたくなくて見て見ぬふりだったのに困っている人を放っておけなくて助けよう思うなんてなかなか出来る事じゃないと。
「ま、こういう所はああいう奴らが多いから気を付けろよ、それじゃあな」
「あ、あの……お名前、聞いてもいいですか?」
「え? 俺?」
「はい。あ、私は橘 咲結って言います!」
「あー、俺は海堂 朔太郎だ」
「海堂さん、本当にありがとうございました」
「良いって。それじゃあな」
「はい、さよなら」
別れ際、再度お礼を口にした咲結に笑いかけた朔太郎はひらひらと手を振ると、人混みの中に消えていく。
「……海堂さん、か」
ただナンパから助けてもらっただけの関係。恐らくもう会う事はないだろう。
「見かけによらず、良い人だったなぁ」
けれど、どこかでまた会えたらいいなと思いながら咲結は家路を急ぐ為、朔太郎とは反対方向に歩いて行き人混みへと消えていった。
「へぇ~、そんな事があったんだ?」
翌日、学校へ着いた咲結は同じクラスで親友の寿 優茉に昨日の夕方、朔太郎に助けられた出来事を話していた。
「で、その人格好良かったの?」
「うん、そうだね。見た目ちょっとチャラそうでナンパして来た人たちと大差ないなぁって思ったけど、結構格好良かった」
「そっかぁ、イケメンかぁ~羨ましいなぁ、私も助けてもらいたーい」
「えぇ? 優茉は彼氏いるから彼氏に助けて貰えばいいじゃん」
「いやまぁそうだけど、イケメンに助けて貰えるのはやっぱり嬉しいじゃん。何か漫画みたいでさぁ」
「うん、まぁ確かにね。そうだよね、よく考えてみれば漫画とかに良くある展開だったよね」
「そうだよ、咲結そういうの好きじゃん。で、勿論名前聞いたり連絡先交換したんでしょ?」
「え? いや、名前は聞いたけど、連絡先は――」
『交換してない』と言葉を続けようとした咲結だったのだけど、
「ねぇねぇ咲結!!」
息を切らしてやって来た隣のクラスの友人、皆瀬 杏珠の声によって掻き消されてしまう。
「杏珠、何なのよ朝っぱらから騒がしいなぁ」
「騒がしいとは何よ、せっかく咲結が喜ぶとっておきの話を持って来たのにぃ」
「とっておきの話?」
咲結の問い掛けにウェーブがかった栗色の長い髪を軽く整え頬を膨らませた杏珠は抗議しつつも『とっておきの話』とやらを話し出した。
「実はね、K高との合コンが決まりましたー!」
「え? マジか! 杏珠大好きー!」
杏珠の話を聞いた咲結は勢い良く杏珠に抱きつくと、その表情には笑顔が溢れていた。
「あ、は、はい……」
チャラ男たちが立ち去り残された咲結は赤髪男に声を掛けられると、先程の言動を思い出したせいか少しだけ萎縮してしまう。
赤髪男は咲結が怯えていることに気づくと、
「怖がらせて悪かった! お前には何もしねぇから、そう怯えるなよ」
申し訳なさそうに頭を下げて謝った。
「い、いえ……そんな……。寧ろ、助けてくれてありがとうございました、本当に助かりました」
これには咲結も予想外だったのか謝られた事に驚くばかり。まだお礼を言っていないと気付いて慌てて感謝の思いを口にした。
「良いって。困ってる奴を放っておけなかっだけだし、それに、ああいう奴らはいけ好かねぇからさ」
一見ナンパ男たちと変わりのないチャラい男なのかと思っていた咲結は彼の言葉に胸を打たれた。周りは皆、関わりたくなくて見て見ぬふりだったのに困っている人を放っておけなくて助けよう思うなんてなかなか出来る事じゃないと。
「ま、こういう所はああいう奴らが多いから気を付けろよ、それじゃあな」
「あ、あの……お名前、聞いてもいいですか?」
「え? 俺?」
「はい。あ、私は橘 咲結って言います!」
「あー、俺は海堂 朔太郎だ」
「海堂さん、本当にありがとうございました」
「良いって。それじゃあな」
「はい、さよなら」
別れ際、再度お礼を口にした咲結に笑いかけた朔太郎はひらひらと手を振ると、人混みの中に消えていく。
「……海堂さん、か」
ただナンパから助けてもらっただけの関係。恐らくもう会う事はないだろう。
「見かけによらず、良い人だったなぁ」
けれど、どこかでまた会えたらいいなと思いながら咲結は家路を急ぐ為、朔太郎とは反対方向に歩いて行き人混みへと消えていった。
「へぇ~、そんな事があったんだ?」
翌日、学校へ着いた咲結は同じクラスで親友の寿 優茉に昨日の夕方、朔太郎に助けられた出来事を話していた。
「で、その人格好良かったの?」
「うん、そうだね。見た目ちょっとチャラそうでナンパして来た人たちと大差ないなぁって思ったけど、結構格好良かった」
「そっかぁ、イケメンかぁ~羨ましいなぁ、私も助けてもらいたーい」
「えぇ? 優茉は彼氏いるから彼氏に助けて貰えばいいじゃん」
「いやまぁそうだけど、イケメンに助けて貰えるのはやっぱり嬉しいじゃん。何か漫画みたいでさぁ」
「うん、まぁ確かにね。そうだよね、よく考えてみれば漫画とかに良くある展開だったよね」
「そうだよ、咲結そういうの好きじゃん。で、勿論名前聞いたり連絡先交換したんでしょ?」
「え? いや、名前は聞いたけど、連絡先は――」
『交換してない』と言葉を続けようとした咲結だったのだけど、
「ねぇねぇ咲結!!」
息を切らしてやって来た隣のクラスの友人、皆瀬 杏珠の声によって掻き消されてしまう。
「杏珠、何なのよ朝っぱらから騒がしいなぁ」
「騒がしいとは何よ、せっかく咲結が喜ぶとっておきの話を持って来たのにぃ」
「とっておきの話?」
咲結の問い掛けにウェーブがかった栗色の長い髪を軽く整え頬を膨らませた杏珠は抗議しつつも『とっておきの話』とやらを話し出した。
「実はね、K高との合コンが決まりましたー!」
「え? マジか! 杏珠大好きー!」
杏珠の話を聞いた咲結は勢い良く杏珠に抱きつくと、その表情には笑顔が溢れていた。
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