27 / 35
裏切り者たちの策略
4
しおりを挟む
エリスと共に食事をとったギルバートは再び持ち場へ就く。
深夜、任された仕事を終えて甲板に出て来たギルバートは、暗闇に紛れて誰かと密会しているシューベルトの姿を捉えた。
気付かれないよう距離を取り、相手が誰なのかを確認すると、ちょうど翳っていた月が顔を見せた事で光が差し、相手の顔が映し出された。
そこに居たのはシューベルトの側近の男。
恐らくエリス捜索についての指示でもしているのだろう。
会話の全てを聞き取る事は出来なかったもののシューベルトたちはエリス捜索の範囲を更に広げようとしている事を悟り、早めに新たな対策と復讐へ向けての行動を起こさなければと決意を固めた。
翌日、ルビナ国へ着いた舟から上手く降りる事が出来たギルバートとエリスは、再び情報収集を始める事にした。
エリスは嫁いでから久々に故郷へ戻って来た事もあって、懐かしさを感じているのか行きたい場所があると遠慮がちに口にした。
「行きたい場所?」
「その……お父様とお母様が眠るお墓へ、行きたいんですけど……無理でしょうか?」
エリスのその言葉に、ギルバートは胸が締め付けられそうになった。
彼女は嫁いでからというもの軟禁状態だった事もあって、故郷へ戻る事すら出来なかった。
それが今、久しぶりに故郷の地を踏み、大好きだった両親と過ごした日々を思い出したのだろう。
大切な人に会いに行きたいと思う事は当然なのだ。
ただ、国によって王族の墓ともなれば簡単に立ち入る事が出来なかったり警備が厳重だったりする事もある。
ルビナ国がどうなのか分かりかねるギルバートは多少懸念しつつも、エリスの願いを叶えてやりたいと思い彼女の意思を尊重した。
「そうだな、きっとお前の両親もお前が顔を見せれば喜ぶだろう。どこにあるんだ?」
「王都からは少し離れているので、馬車で向かわなければならないんですけど……」
「分かった。では御者を探そう」
「はい」
エリスの希望で彼女の両親が眠る墓地へと向かう為、市場へ行って供える花束を購入してから御者を見つけた二人は馬車に揺られていく。
三十分程経って辿り着き、馬車を降りた二人はひたすら丘を登っていく。
そして、登りきった先には綺麗な景色が広がり、可愛らしい小さな花が沢山咲いている中に、豪華な墓石があった。
ここはエリスの母親が大好きだった場所で、彼女が亡くなった際、大好きな妻が愛したこの場所に墓を建ててやりたいという思いからエリスの父親が建てた墓。
そして、父親もまた、死ぬ間際、妻と同じ墓に入りたいと希望した事で、二人は同じ墓に眠っていた。
「お母様が亡くなった時、先祖が眠る代々のお墓があるのにわざわざ別の場所に建てるだなんてと周りからは色々言われていたのですが、お父様はどうしても、お母様が好きだったこの場所にと譲らなくて、周りが折れる形で、ここにお墓を建てたんです。お父様が亡くなった時も、本人がここへ入る事を希望していたのですが、だいぶ揉めたんです。継母は代々の墓へ入れるべきと言って聞かなかったのですが、私はお父様の意志を尊重したくて、どうにか説得して、ここに入れてあげる事が出来たんです。ですから、ここに来る人は限られているんです。前妻が眠るこのお墓に継母は近寄りたくないようなので、命日くらいしか来ないと思いますし……」
「そうか……しかしここは、本当に良いところだな」
「はい、そうなんです。私も幼い頃、よくお父様とお母様の三人でここを訪れるのが大好きで、ここへ来ると、すごく落ち着くのです」
ギルバートはエリスと出逢ってからというもの、彼女の笑顔を見る事はあったものの、それはどこかぎこちないものばかり。
けれど、今目の前に居るエリスの笑顔は心の底から喜びで溢れ、とても幸せそうな笑顔だったので彼女を見守る彼もまた自然と口元が緩んでいた。
深夜、任された仕事を終えて甲板に出て来たギルバートは、暗闇に紛れて誰かと密会しているシューベルトの姿を捉えた。
気付かれないよう距離を取り、相手が誰なのかを確認すると、ちょうど翳っていた月が顔を見せた事で光が差し、相手の顔が映し出された。
そこに居たのはシューベルトの側近の男。
恐らくエリス捜索についての指示でもしているのだろう。
会話の全てを聞き取る事は出来なかったもののシューベルトたちはエリス捜索の範囲を更に広げようとしている事を悟り、早めに新たな対策と復讐へ向けての行動を起こさなければと決意を固めた。
翌日、ルビナ国へ着いた舟から上手く降りる事が出来たギルバートとエリスは、再び情報収集を始める事にした。
エリスは嫁いでから久々に故郷へ戻って来た事もあって、懐かしさを感じているのか行きたい場所があると遠慮がちに口にした。
「行きたい場所?」
「その……お父様とお母様が眠るお墓へ、行きたいんですけど……無理でしょうか?」
エリスのその言葉に、ギルバートは胸が締め付けられそうになった。
彼女は嫁いでからというもの軟禁状態だった事もあって、故郷へ戻る事すら出来なかった。
それが今、久しぶりに故郷の地を踏み、大好きだった両親と過ごした日々を思い出したのだろう。
大切な人に会いに行きたいと思う事は当然なのだ。
ただ、国によって王族の墓ともなれば簡単に立ち入る事が出来なかったり警備が厳重だったりする事もある。
ルビナ国がどうなのか分かりかねるギルバートは多少懸念しつつも、エリスの願いを叶えてやりたいと思い彼女の意思を尊重した。
「そうだな、きっとお前の両親もお前が顔を見せれば喜ぶだろう。どこにあるんだ?」
「王都からは少し離れているので、馬車で向かわなければならないんですけど……」
「分かった。では御者を探そう」
「はい」
エリスの希望で彼女の両親が眠る墓地へと向かう為、市場へ行って供える花束を購入してから御者を見つけた二人は馬車に揺られていく。
三十分程経って辿り着き、馬車を降りた二人はひたすら丘を登っていく。
そして、登りきった先には綺麗な景色が広がり、可愛らしい小さな花が沢山咲いている中に、豪華な墓石があった。
ここはエリスの母親が大好きだった場所で、彼女が亡くなった際、大好きな妻が愛したこの場所に墓を建ててやりたいという思いからエリスの父親が建てた墓。
そして、父親もまた、死ぬ間際、妻と同じ墓に入りたいと希望した事で、二人は同じ墓に眠っていた。
「お母様が亡くなった時、先祖が眠る代々のお墓があるのにわざわざ別の場所に建てるだなんてと周りからは色々言われていたのですが、お父様はどうしても、お母様が好きだったこの場所にと譲らなくて、周りが折れる形で、ここにお墓を建てたんです。お父様が亡くなった時も、本人がここへ入る事を希望していたのですが、だいぶ揉めたんです。継母は代々の墓へ入れるべきと言って聞かなかったのですが、私はお父様の意志を尊重したくて、どうにか説得して、ここに入れてあげる事が出来たんです。ですから、ここに来る人は限られているんです。前妻が眠るこのお墓に継母は近寄りたくないようなので、命日くらいしか来ないと思いますし……」
「そうか……しかしここは、本当に良いところだな」
「はい、そうなんです。私も幼い頃、よくお父様とお母様の三人でここを訪れるのが大好きで、ここへ来ると、すごく落ち着くのです」
ギルバートはエリスと出逢ってからというもの、彼女の笑顔を見る事はあったものの、それはどこかぎこちないものばかり。
けれど、今目の前に居るエリスの笑顔は心の底から喜びで溢れ、とても幸せそうな笑顔だったので彼女を見守る彼もまた自然と口元が緩んでいた。
14
お気に入りに追加
71
あなたにおすすめの小説
『別れても好きな人』
設樂理沙
ライト文芸
大好きな夫から好きな女性ができたから別れて欲しいと言われ、離婚した。
夫の想い人はとても美しく、自分など到底敵わないと思ったから。
ほんとうは別れたくなどなかった。
この先もずっと夫と一緒にいたかった……だけど世の中には
どうしようもないことがあるのだ。
自分で選択できないことがある。
悲しいけれど……。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
登場人物紹介
戸田貴理子 40才
戸田正義 44才
青木誠二 28才
嘉島優子 33才
小田聖也 35才
2024.4.11 ―― プロット作成日
💛イラストはAI生成自作画像
【完結】嫌われ令嬢、部屋着姿を見せてから、王子に溺愛されてます。
airria
恋愛
グロース王国王太子妃、リリアナ。勝ち気そうなライラックの瞳、濡羽色の豪奢な巻き髪、スレンダーな姿形、知性溢れる社交術。見た目も中身も次期王妃として完璧な令嬢であるが、夫である王太子のセイラムからは忌み嫌われていた。
どうやら、セイラムの美しい乳兄妹、フリージアへのリリアナの態度が気に食わないらしい。
2ヶ月前に婚姻を結びはしたが、初夜もなく冷え切った夫婦関係。結婚も仕事の一環としか思えないリリアナは、セイラムと心が通じ合わなくても仕方ないし、必要ないと思い、王妃の仕事に邁進していた。
ある日、リリアナからのいじめを訴えるフリージアに泣きつかれたセイラムは、リリアナの自室を電撃訪問。
あまりの剣幕に仕方なく、部屋着のままで対応すると、なんだかセイラムの様子がおかしくて…
あの、私、自分の時間は大好きな部屋着姿でだらけて過ごしたいのですが、なぜそんな時に限って頻繁に私の部屋にいらっしゃるの?
今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
身代わり婚~暴君と呼ばれる辺境伯に拒絶された仮初の花嫁
結城芙由奈
恋愛
【決してご迷惑はお掛けしません。どうか私をここに置いて頂けませんか?】
妾腹の娘として厄介者扱いを受けていたアリアドネは姉の身代わりとして暴君として名高い辺境伯に嫁がされる。結婚すれば幸せになれるかもしれないと淡い期待を抱いていたのも束の間。望まぬ花嫁を押し付けられたとして夫となるべく辺境伯に初対面で冷たい言葉を投げつけらた。さらに城から追い出されそうになるものの、ある人物に救われて下働きとして置いてもらえる事になるのだった―。
獣人の里の仕置き小屋
真木
恋愛
ある狼獣人の里には、仕置き小屋というところがある。
獣人は愛情深く、その執着ゆえに伴侶が逃げ出すとき、獣人の夫が伴侶に仕置きをするところだ。
今夜もまた一人、里から出ようとして仕置き小屋に連れられてきた少女がいた。
仕置き小屋にあるものを見て、彼女は……。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
王女、騎士と結婚させられイかされまくる
ぺこ
恋愛
髪の色と出自から差別されてきた騎士さまにベタ惚れされて愛されまくる王女のお話。
性描写激しめですが、甘々の溺愛です。
※原文(♡乱舞淫語まみれバージョン)はpixivの方で見られます。
皇太子夫妻の歪んだ結婚
夕鈴
恋愛
皇太子妃リーンは夫の秘密に気付いてしまった。
その秘密はリーンにとって許せないものだった。結婚1日目にして離縁を決意したリーンの夫婦生活の始まりだった。
本編完結してます。
番外編を更新中です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる