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番外編
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理真が生まれてから約半年の時が過ぎ、鬼龍組の面々も大きな変化を見せていた。
朔太郎は保育士の資格を取得した事を生かして、人手不足の日は皇保育園の保育士としての仕事をこなす日々も増えていた。
それでも、やはり鬼龍組組員として理仁の役に立ちたい彼は、真彩や悠真の送迎を出来る限り担当していく。
翔太郎は相変わらず理仁の右腕としてサポート役に徹しているものの、最近では真面目で寡黙な彼に、女性の影がちらついているという噂がちらほら。
それは果たして任務の為なのか、それとも……。
その他の組員たちも、理仁を助け、鬼龍組を東区域一の組織となれるよう日々自分の任務をこなしていた。
そして理真は、
「理真はもうすぐハイハイ出来ちゃうかもしれませんね」
「ああ、最近よく動いているな。成長が早いから、常に目が離せねぇな」
「本当に。何だかあっという間に何でも出来るようになってしまいそうですね」
寝返りやおすわり、ずりばいなんかも理真は他の子よりいくらか早く、最近では少し目を離した隙にずりばいで動いていて真彩を驚かせているせいか、平日はいつも気が抜け無い。
そんな中でも悠真が良いお兄ちゃんなだけあって、休みの日はいつも妹の傍で一緒に遊んであげたり絵本を読み聞かせていたりするので、休日だけは真彩も安心して家事をこなせるのだ。
家事を終えて理真と悠真の居る部屋へ戻ってくると、理仁が部屋の前に立っている。
「理仁さん……何して――」
そんな理仁を不思議に思った真彩が声を掛けるも、口に人差し指を当てて黙るようにという仕草を見せた彼を前に思わず自身の口を塞ぐ。
そして、部屋の襖の前に立つと、中から悠真の声が聞こえて来た。
「りーま、早くいっぱいあそべるようになってねー! おしゃべりもたくさんしたいねー! お兄ちゃんがいろんなこと、おしえてあげるからね!」
それは理真相手に悠真が話し掛けているもので、いつも自分の事を“悠真”と言っているのに理真の前では“お兄ちゃん”と言っているという新たな発見が出来た真彩と理仁。
そんな微笑ましい場面に出会して良かったと思いながら、暫く二人にしようと隣の部屋に入って行った。
「悠真、本当に理真の事が大好きで、何だか嬉しいです」
「理真が成長するにつれて理真自身も悠真を好きになるだろうから、相思相愛だな」
「ふふ、確かに。理真もきっと、お兄ちゃん大好きっ子になりますよね」
真彩は悠真が理真を大切に思ってくれている事が本当に本当に嬉しかった。
お腹の中に赤ちゃんがいると知って悲しむ悠真を見た時は、やっぱり兄妹なんて作っては駄目なのかと思ったし、もっと成長して理仁との血の繋がりについて知った時、理真は理仁が本当の父親だけど自分は違う、自分の居場所は無い……そんな疎外感を感じないかという不安がやはり心の片隅にあったものの、理仁は悠真にも理真にも変わらない愛を注いでくれるし、それを悠真も絶対感じていると信じているから、いつしかそんな不安も消えていた。
「理仁さん」
「ん?」
「……私、四人家族になれて、本当に良かったって思ってます」
「俺もだ。悠真も理真も可愛いし愛おしい存在だ。真彩と同じくらい愛してる。これからは、もっと良い父親にならねーとな」
「理仁さん……。理仁さんは今でも充分、良い父親ですよ?」
「いや、全然だ。悠真や理真にとって尊敬される父親になりてぇけど、俺は組織の人間だし、抗争が起きれば、子供たちにも迷惑をかけちまう。そうならねぇように、組織の治安を良くしていかねぇとな」
「無理だけは、しないでくださいね?」
「分かってる。お前たちを悲しませるような事だけは、しねぇから」
不安そうな表情を浮かべた真彩の肩を抱いた理仁はそのまま自身の腕の中へ彼女の身体を抱き締める。
「しかし、子供ってのは本当に可愛いな。理真は真彩似だから余計に可愛い」
「もう、理仁さんったら……」
「成長するにつれて、ついうるさく言っちまいそうだな、口煩く言って嫌われねぇように気をつけねーと」
「大丈夫ですよ、理真はきっと、お兄ちゃんの事もパパの事も大好きって言うような子になりますから」
「そうだといいな」
真彩のその言葉通り、成長した理真は「お兄ちゃんとパパの事が大好き」が口癖の女の子になるのだけど、
それはまだ少し、先のお話――。
―END―
朔太郎は保育士の資格を取得した事を生かして、人手不足の日は皇保育園の保育士としての仕事をこなす日々も増えていた。
それでも、やはり鬼龍組組員として理仁の役に立ちたい彼は、真彩や悠真の送迎を出来る限り担当していく。
翔太郎は相変わらず理仁の右腕としてサポート役に徹しているものの、最近では真面目で寡黙な彼に、女性の影がちらついているという噂がちらほら。
それは果たして任務の為なのか、それとも……。
その他の組員たちも、理仁を助け、鬼龍組を東区域一の組織となれるよう日々自分の任務をこなしていた。
そして理真は、
「理真はもうすぐハイハイ出来ちゃうかもしれませんね」
「ああ、最近よく動いているな。成長が早いから、常に目が離せねぇな」
「本当に。何だかあっという間に何でも出来るようになってしまいそうですね」
寝返りやおすわり、ずりばいなんかも理真は他の子よりいくらか早く、最近では少し目を離した隙にずりばいで動いていて真彩を驚かせているせいか、平日はいつも気が抜け無い。
そんな中でも悠真が良いお兄ちゃんなだけあって、休みの日はいつも妹の傍で一緒に遊んであげたり絵本を読み聞かせていたりするので、休日だけは真彩も安心して家事をこなせるのだ。
家事を終えて理真と悠真の居る部屋へ戻ってくると、理仁が部屋の前に立っている。
「理仁さん……何して――」
そんな理仁を不思議に思った真彩が声を掛けるも、口に人差し指を当てて黙るようにという仕草を見せた彼を前に思わず自身の口を塞ぐ。
そして、部屋の襖の前に立つと、中から悠真の声が聞こえて来た。
「りーま、早くいっぱいあそべるようになってねー! おしゃべりもたくさんしたいねー! お兄ちゃんがいろんなこと、おしえてあげるからね!」
それは理真相手に悠真が話し掛けているもので、いつも自分の事を“悠真”と言っているのに理真の前では“お兄ちゃん”と言っているという新たな発見が出来た真彩と理仁。
そんな微笑ましい場面に出会して良かったと思いながら、暫く二人にしようと隣の部屋に入って行った。
「悠真、本当に理真の事が大好きで、何だか嬉しいです」
「理真が成長するにつれて理真自身も悠真を好きになるだろうから、相思相愛だな」
「ふふ、確かに。理真もきっと、お兄ちゃん大好きっ子になりますよね」
真彩は悠真が理真を大切に思ってくれている事が本当に本当に嬉しかった。
お腹の中に赤ちゃんがいると知って悲しむ悠真を見た時は、やっぱり兄妹なんて作っては駄目なのかと思ったし、もっと成長して理仁との血の繋がりについて知った時、理真は理仁が本当の父親だけど自分は違う、自分の居場所は無い……そんな疎外感を感じないかという不安がやはり心の片隅にあったものの、理仁は悠真にも理真にも変わらない愛を注いでくれるし、それを悠真も絶対感じていると信じているから、いつしかそんな不安も消えていた。
「理仁さん」
「ん?」
「……私、四人家族になれて、本当に良かったって思ってます」
「俺もだ。悠真も理真も可愛いし愛おしい存在だ。真彩と同じくらい愛してる。これからは、もっと良い父親にならねーとな」
「理仁さん……。理仁さんは今でも充分、良い父親ですよ?」
「いや、全然だ。悠真や理真にとって尊敬される父親になりてぇけど、俺は組織の人間だし、抗争が起きれば、子供たちにも迷惑をかけちまう。そうならねぇように、組織の治安を良くしていかねぇとな」
「無理だけは、しないでくださいね?」
「分かってる。お前たちを悲しませるような事だけは、しねぇから」
不安そうな表情を浮かべた真彩の肩を抱いた理仁はそのまま自身の腕の中へ彼女の身体を抱き締める。
「しかし、子供ってのは本当に可愛いな。理真は真彩似だから余計に可愛い」
「もう、理仁さんったら……」
「成長するにつれて、ついうるさく言っちまいそうだな、口煩く言って嫌われねぇように気をつけねーと」
「大丈夫ですよ、理真はきっと、お兄ちゃんの事もパパの事も大好きって言うような子になりますから」
「そうだといいな」
真彩のその言葉通り、成長した理真は「お兄ちゃんとパパの事が大好き」が口癖の女の子になるのだけど、
それはまだ少し、先のお話――。
―END―
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