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番外編
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「偉いな。よし、それじゃあパパとママの所に戻ろう。そして今悠真が決めた事を話したら、二人とも喜ぶぞ」
「うん! はなす! しょう、さく、行こう!」
翔太郎の話を聞いてすっかり元気を取り戻した悠真は立ち上がると二人に手を差し伸べる。
「よし! 戻るぞ!」
「ああ、行こう」
そして、翔太郎と朔太郎がそれぞれ悠真の手を取ると、三人並んで大広間へと戻って行った。
「ママー!」
「悠真」
「……ママ、ごめんね」
「ううん、ママの方こそごめんね。いきなりで、びっくりしちゃったよね?」
「うん……でもね、しょうのおはなしきいて、ゆうまきめた! いいお兄ちゃんになる! 赤ちゃんのこと、たくさんすきになる! だから、ゆうまのこと、きらいにならないでね?」
「嫌いになる訳、ないでしょ? ママにとって、悠真はすごくすごく、大切なんだよ? 大好きなんだよ?」
悠真の話を聞いて泣きそうになった真彩は涙を見せないように悠真を強く抱き締め、少し身体を震わせながらそう言い聞かせる。
「……ママぁ……」
そして悠真もまた、真彩に抱き締められた事で色々な感情が溢れ出したのか、瞳から涙が溢れ、そのまま泣き出してしまった。
そんな二人のやり取りを広間に居る全員が見守り、中には貰い泣きをして薄ら涙を浮かべている組員も居た。
それから暫く、後は家族水入らずの方が良いだろうと、朔太郎と翔太郎が目配せをした後、組員たちと共に広間を後にした。
皆が出て行き、真彩と悠真を見守り続けていた理仁は二人の元へ歩いて行くと、
「悠真、いつまでも泣いてると、赤ちゃんに笑われるぞ?」
未だ泣き続けていた悠真を宥めるように頭を撫でながら声を掛けた。
「赤ちゃん、まだここにいないのにもう分かるの?」
「今はなママのお腹の中で、色々な事を聞いてるんだぞ?」
「そうなんだ? すごいね! ゆうま、早く赤ちゃんに会いたいなぁ」
「そうだな、それは皆んな同じ気持ちだ。けどまだ暫くはママのお腹の中で過ごさなきゃならねぇからな、その間悠真はお兄ちゃんになる為に、ママを助けて朔や翔の言う事を聞いて、お手伝いを沢山するんだ。出来るか?」
「うん!」
「偉いな」
理仁に肩を抱かれ、悠真と理仁のやり取りを眺めていた真彩の涙腺は再び緩み、
「……ママ、だいじょうぶ? どっかいたい?」
「真彩?」
今度は隠すことなく、自然と溢れ出る涙を零していた。
「ごめ……、違うの、どこも痛くないよ。ただ、嬉しくて……」
「うれしい?」
「うん。悠真が、赤ちゃんの事を喜んでくれて、凄く、嬉しいの」
「そっか! ゆうま、いいお兄ちゃんになるからね!」
「うん……ありがとう、悠真」
こうして新たな生命の存在を皆が祝福する事になり、真彩の中にあった悩みは解消され、穏やかな日常を送れるようになったのだった。
「うん! はなす! しょう、さく、行こう!」
翔太郎の話を聞いてすっかり元気を取り戻した悠真は立ち上がると二人に手を差し伸べる。
「よし! 戻るぞ!」
「ああ、行こう」
そして、翔太郎と朔太郎がそれぞれ悠真の手を取ると、三人並んで大広間へと戻って行った。
「ママー!」
「悠真」
「……ママ、ごめんね」
「ううん、ママの方こそごめんね。いきなりで、びっくりしちゃったよね?」
「うん……でもね、しょうのおはなしきいて、ゆうまきめた! いいお兄ちゃんになる! 赤ちゃんのこと、たくさんすきになる! だから、ゆうまのこと、きらいにならないでね?」
「嫌いになる訳、ないでしょ? ママにとって、悠真はすごくすごく、大切なんだよ? 大好きなんだよ?」
悠真の話を聞いて泣きそうになった真彩は涙を見せないように悠真を強く抱き締め、少し身体を震わせながらそう言い聞かせる。
「……ママぁ……」
そして悠真もまた、真彩に抱き締められた事で色々な感情が溢れ出したのか、瞳から涙が溢れ、そのまま泣き出してしまった。
そんな二人のやり取りを広間に居る全員が見守り、中には貰い泣きをして薄ら涙を浮かべている組員も居た。
それから暫く、後は家族水入らずの方が良いだろうと、朔太郎と翔太郎が目配せをした後、組員たちと共に広間を後にした。
皆が出て行き、真彩と悠真を見守り続けていた理仁は二人の元へ歩いて行くと、
「悠真、いつまでも泣いてると、赤ちゃんに笑われるぞ?」
未だ泣き続けていた悠真を宥めるように頭を撫でながら声を掛けた。
「赤ちゃん、まだここにいないのにもう分かるの?」
「今はなママのお腹の中で、色々な事を聞いてるんだぞ?」
「そうなんだ? すごいね! ゆうま、早く赤ちゃんに会いたいなぁ」
「そうだな、それは皆んな同じ気持ちだ。けどまだ暫くはママのお腹の中で過ごさなきゃならねぇからな、その間悠真はお兄ちゃんになる為に、ママを助けて朔や翔の言う事を聞いて、お手伝いを沢山するんだ。出来るか?」
「うん!」
「偉いな」
理仁に肩を抱かれ、悠真と理仁のやり取りを眺めていた真彩の涙腺は再び緩み、
「……ママ、だいじょうぶ? どっかいたい?」
「真彩?」
今度は隠すことなく、自然と溢れ出る涙を零していた。
「ごめ……、違うの、どこも痛くないよ。ただ、嬉しくて……」
「うれしい?」
「うん。悠真が、赤ちゃんの事を喜んでくれて、凄く、嬉しいの」
「そっか! ゆうま、いいお兄ちゃんになるからね!」
「うん……ありがとう、悠真」
こうして新たな生命の存在を皆が祝福する事になり、真彩の中にあった悩みは解消され、穏やかな日常を送れるようになったのだった。
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