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守りたいもの
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そもそもあの時撃たれたのは自分のせいだと気付いてしまった真彩。自分のせいで理仁にもしもの事があれば、どうすればいいのか分からなくて不安だったのだ。
(理仁さんは、分かってたんだ。尾けられているのは、私が狙いだったって……それなのに、私や悠真の事ばかり心配して……こんな……)
麻酔が効いて眠り続けている理仁の横で、起こさないよう静かに涙を流す真彩。
このままではいけないと思いながら、これから自分はどうすればいいのかを考えていた。
(きっと、私を狙ってるのは……惇也なんだ。納得したのは演技……思い通りにならないなら、私を殺そうとしているのかもしれない……)
確証はないけれど自分を狙っているのは惇也で、それならばこれ以上鬼龍組の皆に迷惑をかける訳にはいかないと感じていた。
(私はどうなってもいいけど、悠真だけは危険な目に遭わせられない。間違ってるのは分かってるけど、悠真の事だけは、お願いしよう)
考えが纏まった真彩はバッグからメモ帳とペンを取り出すと何かを書き始めた。
そして、いくつかの小さなメモを残すと、
「理仁さん、ありがとうございます。私のせいでこんな目に遭わせてしまって、ごめんなさい」
未だ眠っている理仁の額に軽くキスをした真彩は、静かに病室を後にした。
「姉さん、お待たせしました……あれ? 姉さん?」
電話を終えて病室へと戻って来た朔太郎は居るはずの真彩の姿がない事を不思議に思う。
「姉さん? 悠真の様子でも見に行ったのかな?」
「……っ」
「あ、理仁さん!」
「……朔、か。どうやら俺は助かったみたいだな」
「当たり前じゃないっスか。ただ暫くは安静だそうですから、大人しくしててくださいよ」
「アイツはいつも大袈裟に言うんだ。命が助かったんなら問題ねぇよ。こんな所でいつまでも寝てる訳にはいかねぇ……っておい、真彩はどうした?」
「それが、姿が見えないんスよ。俺、さっきまで玄関先で兄貴に電話してたんスけど、戻って来たら居なくて。けど多分、悠真が寝てる部屋に様子を見に行ったんだと思うんで見てきます」
「ああ、頼む」
この病院は自宅を兼ねている事もあって出入口は限られている。玄関先には朔太郎が居た事もあって、人が出入り出来るとすれば医者や看護師が控えている診察室や待合室やトイレの窓くらいのもの。二階の住宅に続く階段は診察室奥にある為、医者が控えている以上そこからの出入りは有り得ない。病室の窓は玄関先からも見える為、電話をしながら時折確認していた朔太郎は侵入者が居ないことを確信していた。
だからまさか、真彩が外へ出ているなんて思いもしなかったのだ。
「理仁さん、居ないっス……」
「何だと!?」
「悠真の様子は一度見に来たけど、その後すぐに病室に戻ったって……」
「……おい朔、そこのメモは何だ?」
「え? 何だろ……」
「貸せ!」
真彩が座っていた椅子のすぐ横にある小さな棚の上に置かれた小さく折られたメモを全て手に取った朔から理仁が奪い取ると、全て広げ始めた。
「朔、今すぐに動員かけろ! 真彩は、檜垣の元へ向かったはずだ! 急げ!」
「は、はい!」
メモは理仁、朔太郎、翔太郎、悠真それぞれに宛てられた物で、悠真以外にはこれまでの感謝を、悠真には理仁たちの言う事をきちんと聞くことが記されていた。その文面から分かるように真彩は覚悟を決めて惇也の元へ向かった事が想像出来、理仁はすぐに真彩を捜し出す為に組員全てに動員をかける事を指示した。
「真彩……何でこんな事をするんだ……あれ程言っただろうが……」
理仁は拳を握りしめ、まだ痛む身体に鞭打ってベッドから降りると、掛けてあるスーツに着替え始めた。
「おい理仁、お前まだ安静してなきゃ駄目だろうが」
騒ぎを聞きつけた医者である坂木 結弦が理仁を一喝するも、
「うるせぇ! 俺の身体なんてどうでもいいんだよ! 坂木、お前なら分かるだろ? 自分を犠牲にしてでも守りたい思いが。分かってるなら放っておいてくれ!」
「……それは分かるが、お前が万全じゃなけりゃ、アイツの二の舞になっちまうぞ」
「分かってる。けどそんなヘマはしねぇよ。俺は死んだりはしねぇ。まだまだ死ねないからな」
「……分かった。これは痛み止めだ。飲んでいけ」
「恩に着る。それと、悠真の事を頼むよ」
「ああ、任せろ」
理仁の熱意に負けた結弦が痛み止めの錠剤と水の入ったペットボトル手渡すと、お礼と悠真の事を頼みながら受け取った理仁はそのまま病院を出て行った。
「理仁さん、身体、平気なんですか?」
「駄目でも行くしかねぇんだよ。真彩を見捨てるなんて出来ねぇだろーが」
「そう、スよね。兄貴たちが各方面に連絡してくれてるんで、すぐに応援が来ると思います。俺たちは当初の予定通り箕輪のアジトっスか?」
「いや、八旗の事務所だ。まずは檜垣に会う。恐らく真彩は自ら檜垣に連絡を取っただろうから、一緒に居るはずだ」
「了解っス!」
若干辛そうな理仁に代わり、惇也と真彩が居るであろう八旗組の事務所までここから車で約三十分程の道のりを運転し始めた朔太郎は内心自分を責めていた。
(理仁さんは、分かってたんだ。尾けられているのは、私が狙いだったって……それなのに、私や悠真の事ばかり心配して……こんな……)
麻酔が効いて眠り続けている理仁の横で、起こさないよう静かに涙を流す真彩。
このままではいけないと思いながら、これから自分はどうすればいいのかを考えていた。
(きっと、私を狙ってるのは……惇也なんだ。納得したのは演技……思い通りにならないなら、私を殺そうとしているのかもしれない……)
確証はないけれど自分を狙っているのは惇也で、それならばこれ以上鬼龍組の皆に迷惑をかける訳にはいかないと感じていた。
(私はどうなってもいいけど、悠真だけは危険な目に遭わせられない。間違ってるのは分かってるけど、悠真の事だけは、お願いしよう)
考えが纏まった真彩はバッグからメモ帳とペンを取り出すと何かを書き始めた。
そして、いくつかの小さなメモを残すと、
「理仁さん、ありがとうございます。私のせいでこんな目に遭わせてしまって、ごめんなさい」
未だ眠っている理仁の額に軽くキスをした真彩は、静かに病室を後にした。
「姉さん、お待たせしました……あれ? 姉さん?」
電話を終えて病室へと戻って来た朔太郎は居るはずの真彩の姿がない事を不思議に思う。
「姉さん? 悠真の様子でも見に行ったのかな?」
「……っ」
「あ、理仁さん!」
「……朔、か。どうやら俺は助かったみたいだな」
「当たり前じゃないっスか。ただ暫くは安静だそうですから、大人しくしててくださいよ」
「アイツはいつも大袈裟に言うんだ。命が助かったんなら問題ねぇよ。こんな所でいつまでも寝てる訳にはいかねぇ……っておい、真彩はどうした?」
「それが、姿が見えないんスよ。俺、さっきまで玄関先で兄貴に電話してたんスけど、戻って来たら居なくて。けど多分、悠真が寝てる部屋に様子を見に行ったんだと思うんで見てきます」
「ああ、頼む」
この病院は自宅を兼ねている事もあって出入口は限られている。玄関先には朔太郎が居た事もあって、人が出入り出来るとすれば医者や看護師が控えている診察室や待合室やトイレの窓くらいのもの。二階の住宅に続く階段は診察室奥にある為、医者が控えている以上そこからの出入りは有り得ない。病室の窓は玄関先からも見える為、電話をしながら時折確認していた朔太郎は侵入者が居ないことを確信していた。
だからまさか、真彩が外へ出ているなんて思いもしなかったのだ。
「理仁さん、居ないっス……」
「何だと!?」
「悠真の様子は一度見に来たけど、その後すぐに病室に戻ったって……」
「……おい朔、そこのメモは何だ?」
「え? 何だろ……」
「貸せ!」
真彩が座っていた椅子のすぐ横にある小さな棚の上に置かれた小さく折られたメモを全て手に取った朔から理仁が奪い取ると、全て広げ始めた。
「朔、今すぐに動員かけろ! 真彩は、檜垣の元へ向かったはずだ! 急げ!」
「は、はい!」
メモは理仁、朔太郎、翔太郎、悠真それぞれに宛てられた物で、悠真以外にはこれまでの感謝を、悠真には理仁たちの言う事をきちんと聞くことが記されていた。その文面から分かるように真彩は覚悟を決めて惇也の元へ向かった事が想像出来、理仁はすぐに真彩を捜し出す為に組員全てに動員をかける事を指示した。
「真彩……何でこんな事をするんだ……あれ程言っただろうが……」
理仁は拳を握りしめ、まだ痛む身体に鞭打ってベッドから降りると、掛けてあるスーツに着替え始めた。
「おい理仁、お前まだ安静してなきゃ駄目だろうが」
騒ぎを聞きつけた医者である坂木 結弦が理仁を一喝するも、
「うるせぇ! 俺の身体なんてどうでもいいんだよ! 坂木、お前なら分かるだろ? 自分を犠牲にしてでも守りたい思いが。分かってるなら放っておいてくれ!」
「……それは分かるが、お前が万全じゃなけりゃ、アイツの二の舞になっちまうぞ」
「分かってる。けどそんなヘマはしねぇよ。俺は死んだりはしねぇ。まだまだ死ねないからな」
「……分かった。これは痛み止めだ。飲んでいけ」
「恩に着る。それと、悠真の事を頼むよ」
「ああ、任せろ」
理仁の熱意に負けた結弦が痛み止めの錠剤と水の入ったペットボトル手渡すと、お礼と悠真の事を頼みながら受け取った理仁はそのまま病院を出て行った。
「理仁さん、身体、平気なんですか?」
「駄目でも行くしかねぇんだよ。真彩を見捨てるなんて出来ねぇだろーが」
「そう、スよね。兄貴たちが各方面に連絡してくれてるんで、すぐに応援が来ると思います。俺たちは当初の予定通り箕輪のアジトっスか?」
「いや、八旗の事務所だ。まずは檜垣に会う。恐らく真彩は自ら檜垣に連絡を取っただろうから、一緒に居るはずだ」
「了解っス!」
若干辛そうな理仁に代わり、惇也と真彩が居るであろう八旗組の事務所までここから車で約三十分程の道のりを運転し始めた朔太郎は内心自分を責めていた。
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