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守りたいもの
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「姉さん! 理仁さん!」
撃った男はパトカーのサイレンを聞くや否やその場から立ち去ってしまう。追いかけたい思いはあった朔太郎だが悠真が居る以上危険な事は出来ず、倒れ込んだ理仁と真彩の元へ駆け寄った。
「真彩、大丈夫か?」
「は、はい……何とか……」
真彩を守るように覆い被さっていた理仁が起き上がり、突然の事で状況把握し切れていない真彩も理仁の声で我に返って身体を起こした。
「二人とも、大丈夫ですか!?」
「ママ!」
血相を変えた朔太郎と不安そうな表情を浮かべた悠真。
「朔、急いで車に戻るぞ」
「は、はい!」
「あの、警察が来てるみたいですけど……」
「ここは俺たちに任せてください!」
「え?」
突然複数の見知らぬ男たちが近付いてくると、後は自分たちに任せろと言う。
「コイツらは鬼龍や柳瀬の傘下の奴らだ。予め助っ人を頼んでおいた。ここは任せて、俺らは逃げるぞ」
「姉さん、早く」
「あ、う、うん……」
何が何だか分からないまま理仁や朔太郎に急かされた真彩は悠真を抱いて車へ戻った。
「朔、悪いが運転を頼む」
「はい。向かう先は……」
ミラー越しに後部座席に座る理仁と会話をしていた朔太郎は理仁の表情を見て言葉を失うと、それに気付いた真彩も理仁の方に視線を向けた。
「り、理仁さん……血が……」
朔太郎も真彩も車内に戻るまで周りに目を向ける余裕がなかったせいか全く気付かなかったのだ。理仁が撃たれていた事を。
撃たれたのは左肩辺りで、黒いスーツの下に着ている白いシャツはどんどん血に染っていた。
「このくらい、問題ねぇよ、さっさと向かってくれ」
「いや、流石にこのままって訳には……。ひとまず病院向かわないと!」
「こんなモン、自分で手当すりゃあいい。いいから俺が言う場所に――」
「駄目です! こんな怪我して、放っておくなんて絶対駄目です! 朔太郎くん、早く病院に!」
「は、はい!」
「真彩……」
「理仁さん、お願いですから、まずは手当を優先してください……お願い……」
正直理仁は驚いた。真彩がこんなに声を荒らげて自分を制した事が。
心から心配をしている事が伝わったのか、理仁は観念したように溜め息を吐くと、
「分かった……朔、病院は今から言う住所へ向かってくれ」
知り合いが経営しているという病院の住所を朔太郎に伝え、一行は病院へ向かう事になった。
「出血量は多いけど、撃たれた所は急所を外れていたから命に別状は無いよ。ただ、暫くは安静にしてるように。傷口が開くと出血するし、流石にこれ以上流すと危険も高まるからね」
「はい、分かりました。ありがとうございます!」
着いた先は町外れにある小さな病院で、お世辞にも綺麗とは程遠い外観だった。
中に入ると真彩と同じくらいの年齢の小柄で細身の無愛想な看護師の女性が一人と、理仁よりも少し上の年齢で銀髪の長髪で眼鏡を掛けて白衣を着た物腰の柔らかそうな男性が居るだけ。
朔太郎も真彩も大丈夫なのかと不安げに思うも理仁の知り合いで腕の良い医者というので任せる事になったのだが、緊急の手術をすると言われた時は不安も最高潮に達していた。
しかし、手術はすぐに終わり、出血量の割には撃たれた場所が致命傷とならない場所だった事もあって命にも何ら問題のないという事だったので二人は心の底から安堵した。
「姉さん、俺、兄貴に連絡して来るんで、理仁さんの事よろしくお願いします」
「うん、分かった」
朔太郎は翔太郎に連絡をすべく病院の外へと出て行き、悠真は別室で寝かせてもらっている事もあって、病室には真彩と眠っている理仁の二人きり。
命に別状がないと言われた時、真彩は本当に良かったという思いと同時に、祈り続けていた神に心から感謝をした。
撃った男はパトカーのサイレンを聞くや否やその場から立ち去ってしまう。追いかけたい思いはあった朔太郎だが悠真が居る以上危険な事は出来ず、倒れ込んだ理仁と真彩の元へ駆け寄った。
「真彩、大丈夫か?」
「は、はい……何とか……」
真彩を守るように覆い被さっていた理仁が起き上がり、突然の事で状況把握し切れていない真彩も理仁の声で我に返って身体を起こした。
「二人とも、大丈夫ですか!?」
「ママ!」
血相を変えた朔太郎と不安そうな表情を浮かべた悠真。
「朔、急いで車に戻るぞ」
「は、はい!」
「あの、警察が来てるみたいですけど……」
「ここは俺たちに任せてください!」
「え?」
突然複数の見知らぬ男たちが近付いてくると、後は自分たちに任せろと言う。
「コイツらは鬼龍や柳瀬の傘下の奴らだ。予め助っ人を頼んでおいた。ここは任せて、俺らは逃げるぞ」
「姉さん、早く」
「あ、う、うん……」
何が何だか分からないまま理仁や朔太郎に急かされた真彩は悠真を抱いて車へ戻った。
「朔、悪いが運転を頼む」
「はい。向かう先は……」
ミラー越しに後部座席に座る理仁と会話をしていた朔太郎は理仁の表情を見て言葉を失うと、それに気付いた真彩も理仁の方に視線を向けた。
「り、理仁さん……血が……」
朔太郎も真彩も車内に戻るまで周りに目を向ける余裕がなかったせいか全く気付かなかったのだ。理仁が撃たれていた事を。
撃たれたのは左肩辺りで、黒いスーツの下に着ている白いシャツはどんどん血に染っていた。
「このくらい、問題ねぇよ、さっさと向かってくれ」
「いや、流石にこのままって訳には……。ひとまず病院向かわないと!」
「こんなモン、自分で手当すりゃあいい。いいから俺が言う場所に――」
「駄目です! こんな怪我して、放っておくなんて絶対駄目です! 朔太郎くん、早く病院に!」
「は、はい!」
「真彩……」
「理仁さん、お願いですから、まずは手当を優先してください……お願い……」
正直理仁は驚いた。真彩がこんなに声を荒らげて自分を制した事が。
心から心配をしている事が伝わったのか、理仁は観念したように溜め息を吐くと、
「分かった……朔、病院は今から言う住所へ向かってくれ」
知り合いが経営しているという病院の住所を朔太郎に伝え、一行は病院へ向かう事になった。
「出血量は多いけど、撃たれた所は急所を外れていたから命に別状は無いよ。ただ、暫くは安静にしてるように。傷口が開くと出血するし、流石にこれ以上流すと危険も高まるからね」
「はい、分かりました。ありがとうございます!」
着いた先は町外れにある小さな病院で、お世辞にも綺麗とは程遠い外観だった。
中に入ると真彩と同じくらいの年齢の小柄で細身の無愛想な看護師の女性が一人と、理仁よりも少し上の年齢で銀髪の長髪で眼鏡を掛けて白衣を着た物腰の柔らかそうな男性が居るだけ。
朔太郎も真彩も大丈夫なのかと不安げに思うも理仁の知り合いで腕の良い医者というので任せる事になったのだが、緊急の手術をすると言われた時は不安も最高潮に達していた。
しかし、手術はすぐに終わり、出血量の割には撃たれた場所が致命傷とならない場所だった事もあって命にも何ら問題のないという事だったので二人は心の底から安堵した。
「姉さん、俺、兄貴に連絡して来るんで、理仁さんの事よろしくお願いします」
「うん、分かった」
朔太郎は翔太郎に連絡をすべく病院の外へと出て行き、悠真は別室で寝かせてもらっている事もあって、病室には真彩と眠っている理仁の二人きり。
命に別状がないと言われた時、真彩は本当に良かったという思いと同時に、祈り続けていた神に心から感謝をした。
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