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守りたいもの

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「それじゃあ、朔、翔、くれぐれも真彩の事を頼むぞ」
「はい」
「任せてください!」

 惇也と真彩の話し合いの日、同行出来ない理仁は屋敷の玄関先で朔太郎と翔太郎に念を押す。

「真彩、言いたい事は全て伝えてこい。それと、もし相手が何かして来るようなら即刻話は中断して二人と共にその場から離れろ。その後の対応は俺に任せておけばいいから」
「はい、分かりました。あの、理仁さん……悠真をよろしくお願いします」
「ああ、任せておけ」
「ママ、いってらっしゃい!」
「うん、行ってくるね。理仁さんの言う事を聞いて、良い子にしててね」
「うん!」

 直前まで真彩と一緒に行くと駄々を捏ねていた悠真は理仁にデパートへ連れて行ってもらう約束をした事で落ち着き、快く送り出してくれる。

 真彩たちが乗る車が屋敷から遠ざかって行くのを見届けた理仁と悠真。

「よし悠真、デパートに出掛けるか」
「うん!」
「真琴、車の準備を頼む」
「はい」

 理仁の側に控えていた真琴は車を出す為車庫へ、理仁と悠真は出掛ける準備をする為室内へとそれぞれ向かって行った。

「真彩、俺の子供ガキは連れて来なかったのかよ」

 話し合いの場所はあるホテルのスイートルームで行われる事になり、翔太郎は部屋の外へ、朔太郎は真彩と共に部屋の中へと入り、先に着いていた惇也と対面したのだけど惇也は真彩の顔を見るなり悠真が居ない事を尋ねてくる。

「連れてなんて来ないわよ。あの子は何も知らないのよ? それと、『ガキ』って言い方止めて」
「呼び方なんてどうでもいいだろ」

 会って早々不穏な空気漂う室内。惇也の付き添いと見られる若い男は我関せずと言った様子で直立したまま微動だにしない。

「それより、俺はお前と二人きりで話したいんだよな、そっちの男、敵意剥き出しでうぜぇしよ」

 惇也はあからさまに不機嫌な表情を浮かべながら真彩の横に控える朔太郎を睨みつけると、

「誰がお前みたいな男と姉さんを二人にするかよ!  面談は付き添い付きでって決まってんだからガタガタ文句言ってんじゃねぇよ」
「ああ?  お前、下っ端のくせに随分偉そうだなぁ?  俺が誰だか分かって口聞いてんのか?」
「ああ、分かってるさ。言いたい事は山程あるけど、今は俺が口を出す場じゃねぇからな。このくらいにしてやるよ」
「何だよ、言えよ?  今なら発言を許してやるぜ」
「惇也、止めて!  貴方は私と話をするの。さっさと始めましょう」
「……ッチ」

 言い合いに発展しそうな惇也と朔太郎の間に割って入った真彩が惇也を睨み付けながら言うと、面白くなさそうな表情の惇也は舌打ちをしながら顔を背けた。

 向かい合わせで座った惇也と真彩。なかなか話を始めない二人だったけれど、覚悟を決めた真彩が口を開く。

「惇也、早速だけど、私から話しをする。結論から言うけど、私も悠真も貴方の元へ行く気はありません」

 そう口にした真彩に驚く事も無く、惇也は黙ったまま。

「それと、これから先も悠真には貴方が父親だと言う事は話したくないの。私たちは、貴方とこの先も関わり合いたくない。これが、今の私の気持ちです」

 真彩が言い終えてもなお惇也は何も言わず黙ったままで、真彩もそれ以上口を開く事は無く、再び無言が訪れる。

 どのくらいそのままだったか、五分以上は続いていたであろう状況に耐えられなくなったのか、その沈黙を破ったのは朔太郎だった。

「おい、何とか言ったらどうなんだよ?  姉さんは自分の気持ちを伝えた。それに対して何かねぇのかよ?  何も答えないって事は、お前もそれに納得したって事でいいのか?」
「おいお前!  二人の会話に口出しするなよ!」
「ああ?」

 朔太郎の発言が気に入らなかったのか声を上げたのは惇也の付き添いとして側に控えていた男で、喧嘩腰の相手に苛立った朔太郎が詰め寄ろうとする。

「朔太郎くん!」
てつ、黙ってろ」

 そんな二人を見兼ねた真彩と惇也は共に声を掛けてそれぞれを制し、

「惇也、思う事があるならハッキリ言って。私は今日この場で全てを終わらせたいから」

 真彩は何も言って来ない惇也へ再び言葉を投げ掛けた。
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