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血の繋がりなんて関係ない
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見つめ合う二人は、恐らく同じような感情を胸に抱いている。
けれど、どちらもそれを口に出す事はしない。
「……真彩、俺の話を聞いて欲しい」
「……はい」
そんな中、本来の目的でもあった話を聞いて欲しいと真彩に確認すると、彼女が頷くのを確認した理仁は視線を元に戻して向かいにある景色を眺めたので、真彩もそれに倣って話を聞く事にした。
「聞いて欲しいのは、俺の過去の話だ――」
そう前置いた理仁は、自身の過去を遡って話を始めた。
「俺の母親は、お前と同じで未婚のシングルマザーだったんだ」
「理仁さんのお母様も、私と同じ……」
「ああ。父親はとっくに死んだと聞かされて育ったんだが、実際は俺が小学校へ上がる頃まで父親になるはずだった男は生きていたんだ。ただ、その後借金を苦に自殺したと知ったがな」
「そう……だったんですね……あれ? だけど、理仁さんのお父様って鬼龍組の先代の組長さんだったと、以前朔太郎くんが……」
「ああ、義理だが、先代の組長は俺の父親になった人だった」
「お母様が先代の組長さんと再婚なさったんですね」
「いや、それは違う」
「え?」
「ここからは少し複雑なんだがな、俺の母親は当時から鬼龍組と敵対していた箕輪組の傘下組織にあたる難波組という組織の若頭と恋仲になって、俺を捨てたんだ」
「そんな……」
「まぁ、捨てられたのは俺が高校に入った頃だったから、自立出来る年齢で大して困りはしなかったけどな。先代――義父と出逢ったのは、その頃だった。母親に多少の金は貰っていたが、それだけじゃ暮らしてはいけないからバイトを探してる時に知り合って、事情を話すと仕事を紹介してくれたんだ」
理仁の話は真彩が思っていたような過酷さはなく、先代の組長にとにかく可愛がられていた事を知る。
「オヤジは独り身でな、組員たちとあの屋敷で暮らしてた。鬼龍組の事を詳しく知った俺は、高校卒業と同時にオヤジに頼んで組員として加えてもらった。そして、恩を返そうと必死に組の為に働いて、オヤジに認めてもらって養子縁組の話を貰った。勿論、オヤジは俺の母親が難波組の若頭の女になった事も知ってたけど、それでも俺を養子として迎えたいと言ってくれたんだ」
「…………そう、だったんですね」
「本来なら、敵対してる組の女の血を継いでる俺なんて鬼龍の組員たちからすれば邪魔な存在でしかなかったかもしれねぇ。けど、オヤジは認めてくれた。人間血の繋がりだけが全てじゃねぇ事も教えてくれた。だからな、悠真の事も、俺は全く気にならねぇんだよ」
「……でも……惇也はまた接触して来ようとするかもしれません……その度に理仁さんたちに迷惑をかける訳には……」
「真彩、お前や悠真は俺にとってもう家族みてぇなものなんだ。家族っていうのは困っていれば助け合うものだろ? アイツにも念を押したが、俺に黙って接触してくるようなら容赦はしねぇ。お前と悠真の事は俺が必ず守ってやる。だから、離れようとするな。これからも俺の傍に居てくれ」
理仁は自身の過去を話した上で血の繋がりは関係無い事、傍に居て欲しい事を告げると、
「……理仁さん……本当に、いいんでしょうか? 私、私も……傍に……居たいです……迷惑かけちゃうかもしれないけど、それでも、傍に居たい……」
真彩もまた、同じ思いである事を口にした。
けれど、どちらもそれを口に出す事はしない。
「……真彩、俺の話を聞いて欲しい」
「……はい」
そんな中、本来の目的でもあった話を聞いて欲しいと真彩に確認すると、彼女が頷くのを確認した理仁は視線を元に戻して向かいにある景色を眺めたので、真彩もそれに倣って話を聞く事にした。
「聞いて欲しいのは、俺の過去の話だ――」
そう前置いた理仁は、自身の過去を遡って話を始めた。
「俺の母親は、お前と同じで未婚のシングルマザーだったんだ」
「理仁さんのお母様も、私と同じ……」
「ああ。父親はとっくに死んだと聞かされて育ったんだが、実際は俺が小学校へ上がる頃まで父親になるはずだった男は生きていたんだ。ただ、その後借金を苦に自殺したと知ったがな」
「そう……だったんですね……あれ? だけど、理仁さんのお父様って鬼龍組の先代の組長さんだったと、以前朔太郎くんが……」
「ああ、義理だが、先代の組長は俺の父親になった人だった」
「お母様が先代の組長さんと再婚なさったんですね」
「いや、それは違う」
「え?」
「ここからは少し複雑なんだがな、俺の母親は当時から鬼龍組と敵対していた箕輪組の傘下組織にあたる難波組という組織の若頭と恋仲になって、俺を捨てたんだ」
「そんな……」
「まぁ、捨てられたのは俺が高校に入った頃だったから、自立出来る年齢で大して困りはしなかったけどな。先代――義父と出逢ったのは、その頃だった。母親に多少の金は貰っていたが、それだけじゃ暮らしてはいけないからバイトを探してる時に知り合って、事情を話すと仕事を紹介してくれたんだ」
理仁の話は真彩が思っていたような過酷さはなく、先代の組長にとにかく可愛がられていた事を知る。
「オヤジは独り身でな、組員たちとあの屋敷で暮らしてた。鬼龍組の事を詳しく知った俺は、高校卒業と同時にオヤジに頼んで組員として加えてもらった。そして、恩を返そうと必死に組の為に働いて、オヤジに認めてもらって養子縁組の話を貰った。勿論、オヤジは俺の母親が難波組の若頭の女になった事も知ってたけど、それでも俺を養子として迎えたいと言ってくれたんだ」
「…………そう、だったんですね」
「本来なら、敵対してる組の女の血を継いでる俺なんて鬼龍の組員たちからすれば邪魔な存在でしかなかったかもしれねぇ。けど、オヤジは認めてくれた。人間血の繋がりだけが全てじゃねぇ事も教えてくれた。だからな、悠真の事も、俺は全く気にならねぇんだよ」
「……でも……惇也はまた接触して来ようとするかもしれません……その度に理仁さんたちに迷惑をかける訳には……」
「真彩、お前や悠真は俺にとってもう家族みてぇなものなんだ。家族っていうのは困っていれば助け合うものだろ? アイツにも念を押したが、俺に黙って接触してくるようなら容赦はしねぇ。お前と悠真の事は俺が必ず守ってやる。だから、離れようとするな。これからも俺の傍に居てくれ」
理仁は自身の過去を話した上で血の繋がりは関係無い事、傍に居て欲しい事を告げると、
「……理仁さん……本当に、いいんでしょうか? 私、私も……傍に……居たいです……迷惑かけちゃうかもしれないけど、それでも、傍に居たい……」
真彩もまた、同じ思いである事を口にした。
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