32 / 69
再会
6
しおりを挟む
「朔太郎くん!」
「姉さん」
幼稚園へやって来た真彩はすぐに朔太郎の元へ駆け寄る。
「悠真はまだ……?」
「すみません。この辺りはくまなく探したんスけど全く……」
「……公園は?」
「一番に探したんスけど、居ませんでした」
「そう……。あの子、朝幼稚園行きたがらないところを無理矢理連れて行ったから、一人で家に帰ろうとして道に迷ったのかしら……」
「本当にすみません……」
「朔太郎くんのせいじゃないよ。昨日の今日で扱いにくいところを一生懸命歩み寄ってくれてたもの」
真彩が朔太郎に居なくなった時の経緯を詳しく聞いたところ、お昼を食べた後に行方が分からなくなったらしい。昨日同様朔太郎と距離を置きたがる悠真に配慮して、他の保育士に傍に付くように頼んでいたようなのだが、ほんの少し目を離した隙に居なくなってしまったとの事だった。
「いや、例え悠真に嫌がられようと俺が傍に居るべきでした。俺の仕事なのに、本当にすみません!」
「朔太郎くん……」
どう声を掛ければいいのか悩んでいる真彩の元に、
「朔、悠真はまだ見つからねぇのか?」
少々息を切らせた理仁が現れた。
「理仁さん、すみません、まだ見つからないです」
「そうか……。ここへ来る前に一度自宅に寄ったが、やはり帰ってない。連れ去りの線も視野に入れて、少し範囲を広げて捜索した方が良さそうだな」
「連れ去り……」
理仁の言葉に、不安気な表情を浮かべる真彩。
幼稚園にいる間に居なくなってしまった事は園の責任だと園長を始め保育士たちもひたすら頭を下げていたのだが、こればかりは誰のせいでもないような気がした真彩は誰の事も責められないでいた。
「私、もう一度あの公園に行ってみます! 悠真は公園に凄く行きたがっていたから、一人で向かうとしたらやっぱりそこだと思うんです」
居なくなった悠真を思い、連れ去りでなければ一体何処へ向かおうとしたのか今一度よく考えた真彩は理仁と朔太郎にそう告げる。
「けど、公園には……」
真っ先に公園を探しに行った朔太郎がそこには居ないのではと言おうとすると、
「……分かった。お前の気の済むようにするといい」
朔太郎を制し、真彩の意見を尊重した理仁が頷いた。
「悠真ー! 悠真!」
理仁の運転する車で公園へとやって来た真彩は降りるなり名前を呼びながら遊具などを見ながら公園内を探し回るけれど、やはり悠真の姿は無い。
「……真彩、念の為他の公園も探してみるか」
「そうですね、もしかしたら別の公園に居るかもしれませんものね」
理仁は自分絡みで悠真が誘拐されたとほぼ確信していたのだけれど、必死に探す真彩を見ると何もしないより出来ることは全てしてやりたいと思い、別の公園を探すことを提案した。
「この辺りにはあと二箇所公園がある。とりあえず東にある児童公園に――」
「あ、悠真!!」
「おい、真彩……」
車の傍に立ちながらスマホで地図を表示しながら南と東に位置する公園のどちらから探すか話していると、公園のすぐ横の道路を誰かと歩いている悠真の姿を真彩が見つけ理仁の呼びかけを無視して走り出す。
「悠真!!」
「ママ!」
悠真もまた、真彩の姿を見つけると一目散に走り出して勢いよく抱きついた。
「悠真、どうして一人で幼稚園を出て行ったのよ? 心配したのよ」
「ママ……」
悠真を思い切り抱きしめながら、泣きたいのを我慢しつつ問い掛けると、
「俺が連れ出したんだ。ママの事で話があるって言ってな。けど、少し警戒心無さ過ぎじゃねぇか?」
悠真ではなく、悠真と一緒に居た黒髪短髪でサングラスを掛けた一人の男が答え、
「真彩、悠真!」
それとほぼ同じタイミングで理仁が真彩たちの傍にやって来た。
「お前、一体どういうつもりだ? 俺に用があるなら直接俺の所に来いよ」
「ああ? 俺は別にテメェに用はねぇんだよ。用があるのはお前だよ、真彩」
言ってサングラスを外して真彩を見た男の顔を見るなり、真彩の表情が一気に青ざめ、
「あ……、……惇……也」
元彼で悠真の父親である、檜垣 惇也の名前を口にした。
「姉さん」
幼稚園へやって来た真彩はすぐに朔太郎の元へ駆け寄る。
「悠真はまだ……?」
「すみません。この辺りはくまなく探したんスけど全く……」
「……公園は?」
「一番に探したんスけど、居ませんでした」
「そう……。あの子、朝幼稚園行きたがらないところを無理矢理連れて行ったから、一人で家に帰ろうとして道に迷ったのかしら……」
「本当にすみません……」
「朔太郎くんのせいじゃないよ。昨日の今日で扱いにくいところを一生懸命歩み寄ってくれてたもの」
真彩が朔太郎に居なくなった時の経緯を詳しく聞いたところ、お昼を食べた後に行方が分からなくなったらしい。昨日同様朔太郎と距離を置きたがる悠真に配慮して、他の保育士に傍に付くように頼んでいたようなのだが、ほんの少し目を離した隙に居なくなってしまったとの事だった。
「いや、例え悠真に嫌がられようと俺が傍に居るべきでした。俺の仕事なのに、本当にすみません!」
「朔太郎くん……」
どう声を掛ければいいのか悩んでいる真彩の元に、
「朔、悠真はまだ見つからねぇのか?」
少々息を切らせた理仁が現れた。
「理仁さん、すみません、まだ見つからないです」
「そうか……。ここへ来る前に一度自宅に寄ったが、やはり帰ってない。連れ去りの線も視野に入れて、少し範囲を広げて捜索した方が良さそうだな」
「連れ去り……」
理仁の言葉に、不安気な表情を浮かべる真彩。
幼稚園にいる間に居なくなってしまった事は園の責任だと園長を始め保育士たちもひたすら頭を下げていたのだが、こればかりは誰のせいでもないような気がした真彩は誰の事も責められないでいた。
「私、もう一度あの公園に行ってみます! 悠真は公園に凄く行きたがっていたから、一人で向かうとしたらやっぱりそこだと思うんです」
居なくなった悠真を思い、連れ去りでなければ一体何処へ向かおうとしたのか今一度よく考えた真彩は理仁と朔太郎にそう告げる。
「けど、公園には……」
真っ先に公園を探しに行った朔太郎がそこには居ないのではと言おうとすると、
「……分かった。お前の気の済むようにするといい」
朔太郎を制し、真彩の意見を尊重した理仁が頷いた。
「悠真ー! 悠真!」
理仁の運転する車で公園へとやって来た真彩は降りるなり名前を呼びながら遊具などを見ながら公園内を探し回るけれど、やはり悠真の姿は無い。
「……真彩、念の為他の公園も探してみるか」
「そうですね、もしかしたら別の公園に居るかもしれませんものね」
理仁は自分絡みで悠真が誘拐されたとほぼ確信していたのだけれど、必死に探す真彩を見ると何もしないより出来ることは全てしてやりたいと思い、別の公園を探すことを提案した。
「この辺りにはあと二箇所公園がある。とりあえず東にある児童公園に――」
「あ、悠真!!」
「おい、真彩……」
車の傍に立ちながらスマホで地図を表示しながら南と東に位置する公園のどちらから探すか話していると、公園のすぐ横の道路を誰かと歩いている悠真の姿を真彩が見つけ理仁の呼びかけを無視して走り出す。
「悠真!!」
「ママ!」
悠真もまた、真彩の姿を見つけると一目散に走り出して勢いよく抱きついた。
「悠真、どうして一人で幼稚園を出て行ったのよ? 心配したのよ」
「ママ……」
悠真を思い切り抱きしめながら、泣きたいのを我慢しつつ問い掛けると、
「俺が連れ出したんだ。ママの事で話があるって言ってな。けど、少し警戒心無さ過ぎじゃねぇか?」
悠真ではなく、悠真と一緒に居た黒髪短髪でサングラスを掛けた一人の男が答え、
「真彩、悠真!」
それとほぼ同じタイミングで理仁が真彩たちの傍にやって来た。
「お前、一体どういうつもりだ? 俺に用があるなら直接俺の所に来いよ」
「ああ? 俺は別にテメェに用はねぇんだよ。用があるのはお前だよ、真彩」
言ってサングラスを外して真彩を見た男の顔を見るなり、真彩の表情が一気に青ざめ、
「あ……、……惇……也」
元彼で悠真の父親である、檜垣 惇也の名前を口にした。
0
お気に入りに追加
55
あなたにおすすめの小説

ヤクザの若頭は、年の離れた婚約者が可愛くて仕方がない
絹乃
恋愛
ヤクザの若頭の花隈(はなくま)には、婚約者がいる。十七歳下の少女で組長の一人娘である月葉(つきは)だ。保護者代わりの花隈は月葉のことをとても可愛がっているが、もちろん恋ではない。強面ヤクザと年の離れたお嬢さまの、恋に発展する前の、もどかしくドキドキするお話。
インテリヤクザは子守りができない
タタミ
BL
とある事件で大学を中退した初瀬岳は、極道の道へ進みわずか5年で兼城組の若頭にまで上り詰めていた。
冷酷非道なやり口で出世したものの不必要に凄惨な報復を繰り返した結果、組長から『人間味を学べ』という名目で組のシマで立ちんぼをしていた少年・皆木冬馬の教育を任されてしまう。
なんでも性接待で物事を進めようとするバカな冬馬を煙たがっていたが、小学生の頃に親に捨てられ字もろくに読めないとわかると、徐々に同情という名の情を抱くようになり……──
小さな恋のトライアングル
葉月 まい
恋愛
OL × 課長 × 保育園児
わちゃわちゃ・ラブラブ・バチバチの三角関係
人づき合いが苦手な真美は ある日近所の保育園から 男の子と手を繋いで現れた課長を見かけ 親子だと勘違いする 小さな男の子、岳を中心に 三人のちょっと不思議で ほんわか温かい 恋の三角関係が始まった
*✻:::✻*✻:::✻* 登場人物 *✻:::✻*✻:::✻*
望月 真美(25歳)… ITソリューション課 OL
五十嵐 潤(29歳)… ITソリューション課 課長
五十嵐 岳(4歳)… 潤の甥
思い出さなければ良かったのに
田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。
大事なことを忘れたまま。
*本編完結済。不定期で番外編を更新中です。
イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の体は溶けていく。
すずなり。
恋愛
人数合わせで参加した合コン。
そこで私は一人の男の人と出会う。
「俺には分かる。キミはきっと俺を好きになる。」
そんな言葉をかけてきた彼。
でも私には秘密があった。
「キミ・・・目が・・?」
「気持ち悪いでしょ?ごめんなさい・・・。」
ちゃんと私のことを伝えたのに、彼は食い下がる。
「お願いだから俺を好きになって・・・。」
その言葉を聞いてお付き合いが始まる。
「やぁぁっ・・!」
「どこが『や』なんだよ・・・こんなに蜜を溢れさせて・・・。」
激しくなっていく夜の生活。
私の身はもつの!?
※お話の内容は全て想像のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※表現不足は重々承知しております。まだまだ勉強してまいりますので温かい目で見ていただけたら幸いです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
では、お楽しみください。
契約結婚のはずなのに、冷徹なはずのエリート上司が甘く迫ってくるんですが!? ~結婚願望ゼロの私が、なぜか愛されすぎて逃げられません~
猪木洋平@【コミカライズ連載中】
恋愛
「俺と結婚しろ」
突然のプロポーズ――いや、契約結婚の提案だった。
冷静沈着で完璧主義、社内でも一目置かれるエリート課長・九条玲司。そんな彼と私は、ただの上司と部下。恋愛感情なんて一切ない……はずだった。
仕事一筋で恋愛に興味なし。過去の傷から、結婚なんて煩わしいものだと決めつけていた私。なのに、九条課長が提示した「条件」に耳を傾けるうちに、その提案が単なる取引とは思えなくなっていく。
「お前を、誰にも渡すつもりはない」
冷たい声で言われたその言葉が、胸をざわつかせる。
これは合理的な選択? それとも、避けられない運命の始まり?
割り切ったはずの契約は、次第に二人の境界線を曖昧にし、心を絡め取っていく――。
不器用なエリート上司と、恋を信じられない女。
これは、"ありえないはずの結婚"から始まる、予測不能なラブストーリー。
狂愛的ロマンス〜孤高の若頭の狂気めいた執着愛〜
羽村美海
恋愛
古式ゆかしき華道の家元のお嬢様である美桜は、ある事情から、家をもりたてる駒となれるよう厳しく育てられてきた。
とうとうその日を迎え、見合いのため格式高い高級料亭の一室に赴いていた美桜は貞操の危機に見舞われる。
そこに現れた男により救われた美桜だったが、それがきっかけで思いがけない展開にーー
住む世界が違い、交わることのなかったはずの尊の不器用な優しさに触れ惹かれていく美桜の行き着く先は……?
✦・━・✦・━・✦・━・✦・━・✦・━・✦・━・✦
✧天澤美桜•20歳✧
古式ゆかしき華道の家元の世間知らずな鳥籠のお嬢様
✧九條 尊•30歳✧
誰もが知るIT企業の経営者だが、実は裏社会の皇帝として畏れられている日本最大の極道組織泣く子も黙る極心会の若頭
✦・━・✦・━・✦・━・✦・━・✦・━・✦・━・✦
*西雲ササメ様より素敵な表紙をご提供頂きました✨
※TL小説です。設定上強引な展開もあるので閲覧にはご注意ください。
※設定や登場する人物、団体、グループの名称等全てフィクションです。
※随時概要含め本文の改稿や修正等をしています。
✧
✧連載期間22.4.29〜22.7.7 ✧
✧22.3.14 エブリスタ様にて先行公開✧
【第15回らぶドロップス恋愛小説コンテスト一次選考通過作品です。コンテストの結果が出たので再公開しました。※エブリスタ様限定でヤス視点のSS公開中】
あまやかしても、いいですか?
藤川巴/智江千佳子
恋愛
結婚相手は会社の王子様。
「俺ね、ダメなんだ」
「あーもう、キスしたい」
「それこそだめです」
甘々(しすぎる)男子×冷静(に見えるだけ)女子の
契約結婚生活とはこれいかに。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる