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再会
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「ゆうま、くるまいや! あるいてかえる!」
作馬が真彩の事を探っていると知ってから数日が経った頃、あの日以降幼稚園の送迎は毎日車になってしまい公園に寄れなくなった悠真はついに怒りを爆発させて歩いて帰ると言い出した。
「悠真、我がまま言わないで車に乗るぞ」
「いや! こうえんいきたい!」
「公園は今度連れてってやるから。な?」
「さく、うそつき! きのうもいった!」
「……ら、来週は連れてってやるから、それなら良いだろ?」
「いや! これからいく!」
「今からは駄目だって。真っ直ぐ帰るんだ」
「いーや!」
何故公園に行ってはいけないのか分からない悠真は連れてってもらえない事が面白くないようで、言う事を聞かずに騒ぎ出してしまう。
「悠真、ママに言うぞ? いいのか?」
「しらない! さくきらい!」
「悠真! 帰るぞ」
「うわーん!!」
いくら言っても聞かない悠真に痺れを切らせた朔太郎はいつになく強い口調で名前を呼ぶと、抱き抱えて半ば強引に車へ乗せた。
「ママぁ……」
帰宅するなり真彩に泣きついた悠真とバツが悪そうに立っている朔太郎。この状況を見た真彩は帰り際に何かがあった事察し、まずは悠真を宥め始めた。
「よしよし、泣かないのよ悠真。おやつあるから食べようね」
「うっ……ひっく……」
「朔太郎くんも、良かったら一緒にお茶しない?」
「……いや、でも……」
「さくいや! ゆうま、さくといっしょいや!」
「悠真……」
先程のやり取りが余程嫌だったのか、悠真は朔太郎と一緒に居るのを酷く嫌がってしまう。
「姉さん、すみません。俺、今日は傍に居ない方がいいと思うんで……」
「分かった。ごめんね、朔太郎くん。一晩経てば悠真の機嫌も直ると思うから」
嫌がられた事がショックなのか、いつになく元気のない朔太郎に声を掛けた真彩は悠真を連れて自室へ戻って行った。
「そうか、そんな事があったのか」
「すみません、悠真が我がまま言ったみたいで」
「いや、仕方ねぇだろ。悠真からしてみれば突然公園に連れてってもらえなくなってストレス溜まってたんだろ」
「でも、仕方のない事ですから。悠真にはよく言って聞かせます」
「悪いな、不便かけて」
「いえ」
そもそも悠真が公園に行けなくなったのは莉奈や作馬が敵対関係にある箕輪組と半年程前から協力関係にある八旗組の関係者だった事が原因なのだ。
理仁の見立てでは恐らく作馬が八旗組幹部の命令で、悠真を通して鬼龍組を探っていると考え今後一切莉奈や作馬との接触を断つ為に取られた策なのだが、幼い悠真にそのような話をした所で分かる訳もなく、今日のような出来事が起こってしまった。
ただ、一晩経てば悠真の機嫌も直ってどうにかなると考えていた真彩たちだったのだけど、これが原因で飛んでもない事態に発展していく事になる。
「え? 悠真が居なくなった!?」
翌日の午後、ある程度の家事を終えた真彩が部屋でひと息吐いている最中、朔太郎から着信があり何事かと思い出てみると、幼稚園から悠真が居なくなったという報せだった。
『今、手分けして探してるんスけど、見つからなくて……もしかしたら家に戻ってるかもと思って連絡したんスけど……』
「戻ってないわ。あの、私も今からそっちへ行くわ」
『それじゃあ誰かに送ってもらってください』
「分かった」
居ても立ってもいられない真彩は自分も悠真を探しに幼稚園へ向かう事に。
「あ、金井さんちょうどいいところに」
「どうかしましたか?」
「実は、幼稚園から悠真が居なくなったみたいで、探しに行きたいんですけど……」
「え? 悠真が? 分かりました、すぐに車を出すので真彩さんは準備して表へ出ていて下さい」
「ありがとう、よろしくお願いします」
部屋を出たところに偶然通りがかった真琴を掴まえた真彩は経緯を話し、車を出してもらう事になった。
作馬が真彩の事を探っていると知ってから数日が経った頃、あの日以降幼稚園の送迎は毎日車になってしまい公園に寄れなくなった悠真はついに怒りを爆発させて歩いて帰ると言い出した。
「悠真、我がまま言わないで車に乗るぞ」
「いや! こうえんいきたい!」
「公園は今度連れてってやるから。な?」
「さく、うそつき! きのうもいった!」
「……ら、来週は連れてってやるから、それなら良いだろ?」
「いや! これからいく!」
「今からは駄目だって。真っ直ぐ帰るんだ」
「いーや!」
何故公園に行ってはいけないのか分からない悠真は連れてってもらえない事が面白くないようで、言う事を聞かずに騒ぎ出してしまう。
「悠真、ママに言うぞ? いいのか?」
「しらない! さくきらい!」
「悠真! 帰るぞ」
「うわーん!!」
いくら言っても聞かない悠真に痺れを切らせた朔太郎はいつになく強い口調で名前を呼ぶと、抱き抱えて半ば強引に車へ乗せた。
「ママぁ……」
帰宅するなり真彩に泣きついた悠真とバツが悪そうに立っている朔太郎。この状況を見た真彩は帰り際に何かがあった事察し、まずは悠真を宥め始めた。
「よしよし、泣かないのよ悠真。おやつあるから食べようね」
「うっ……ひっく……」
「朔太郎くんも、良かったら一緒にお茶しない?」
「……いや、でも……」
「さくいや! ゆうま、さくといっしょいや!」
「悠真……」
先程のやり取りが余程嫌だったのか、悠真は朔太郎と一緒に居るのを酷く嫌がってしまう。
「姉さん、すみません。俺、今日は傍に居ない方がいいと思うんで……」
「分かった。ごめんね、朔太郎くん。一晩経てば悠真の機嫌も直ると思うから」
嫌がられた事がショックなのか、いつになく元気のない朔太郎に声を掛けた真彩は悠真を連れて自室へ戻って行った。
「そうか、そんな事があったのか」
「すみません、悠真が我がまま言ったみたいで」
「いや、仕方ねぇだろ。悠真からしてみれば突然公園に連れてってもらえなくなってストレス溜まってたんだろ」
「でも、仕方のない事ですから。悠真にはよく言って聞かせます」
「悪いな、不便かけて」
「いえ」
そもそも悠真が公園に行けなくなったのは莉奈や作馬が敵対関係にある箕輪組と半年程前から協力関係にある八旗組の関係者だった事が原因なのだ。
理仁の見立てでは恐らく作馬が八旗組幹部の命令で、悠真を通して鬼龍組を探っていると考え今後一切莉奈や作馬との接触を断つ為に取られた策なのだが、幼い悠真にそのような話をした所で分かる訳もなく、今日のような出来事が起こってしまった。
ただ、一晩経てば悠真の機嫌も直ってどうにかなると考えていた真彩たちだったのだけど、これが原因で飛んでもない事態に発展していく事になる。
「え? 悠真が居なくなった!?」
翌日の午後、ある程度の家事を終えた真彩が部屋でひと息吐いている最中、朔太郎から着信があり何事かと思い出てみると、幼稚園から悠真が居なくなったという報せだった。
『今、手分けして探してるんスけど、見つからなくて……もしかしたら家に戻ってるかもと思って連絡したんスけど……』
「戻ってないわ。あの、私も今からそっちへ行くわ」
『それじゃあ誰かに送ってもらってください』
「分かった」
居ても立ってもいられない真彩は自分も悠真を探しに幼稚園へ向かう事に。
「あ、金井さんちょうどいいところに」
「どうかしましたか?」
「実は、幼稚園から悠真が居なくなったみたいで、探しに行きたいんですけど……」
「え? 悠真が? 分かりました、すぐに車を出すので真彩さんは準備して表へ出ていて下さい」
「ありがとう、よろしくお願いします」
部屋を出たところに偶然通りがかった真琴を掴まえた真彩は経緯を話し、車を出してもらう事になった。
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