愛し愛され愛を知る。【完】

夏目萌(月嶋ゆのん)

文字の大きさ
上 下
24 / 69
こんなに幸せでいいのかな?

2

しおりを挟む
「お待たせしました!  悠真サンタの登場っス!」

 戻って来た悠真はサンタクロースのコスプレをして、大きな袋を抱えている。

「ママ、どうぞ!」

 そして、真彩の傍まで歩いて来た悠真は抱えていた袋を床に下ろすと、中から包装された箱を取り出して真彩に手渡した。

「これは?」
「ママに!」
「悠真サンタからのプレゼントっス!」
「せっかくだから、開けてみたらどうだ?」
「そ、そうですね……それじゃあ、開けるね?」
「うん!」

 理仁に促されて真彩がプレゼントの包みを開けてみると、そこには薄ピンク色で無地の大判ストールが入っていた。

 一見シンプルだけど、実はこのストールはカシミヤ100%ならではの肌触りと極上の暖かさが売りだという有名ブランドの品。

「これって……」

 そんな高級品を悠真一人で買える筈もない事は明白で、貰えた事は嬉しいけれど金銭面での戸惑いが出てきて素直に喜べずにいると、

「これは悠真が一生懸命貯めたお小遣いと、俺と兄貴がカンパした分で買った物っス!  悠真、この日の為に一生懸命俺や兄貴の手伝いしてくれたんスよ」

 真彩の戸惑いの原因を感じ取った朔太郎がフォローを入れた。

「ママ、うれしくない?」

 あまり嬉しそうに見えない真彩を見た悠真は不安そうな表情で問い掛ける。

「ううん、そんな事無いよ?  こんな素敵な物を貰えるなんて思って無かったからびっくりしたの!  嬉しいよ、ありがとう悠真!」
「うん!」

 嬉しさを伝えた真彩がギュッと抱き締めると、満面の笑みを浮かべた悠真が抱き締め返した。

 その後、悠真が描いた絵や工作したもの、組員一同からのプレゼントなどを貰った真彩。

「何か、すみません……私ばかり貰ってしまって……」
「気にしないでください、真彩さんには普段からお世話になってますから」
「そうですよ」

 申し訳無さそうに謝る真彩に『気にしないで』と笑顔を浮かべる組員たち。

「ありがとうございます」

 こうして真彩が主役となったパーティーは開始から二時間半程でお開きとなった。


「片付け、後は私がやるから朔太郎くんと翔太郎くんも休んで」

 お風呂と悠真の寝かしつけを終えた真彩が最後まで後片付けをしていた朔太郎と翔太郎の元へやって来て声を掛ける。

「いや、姉さんこそ今日くらい早めに休んでください」
「そうですよ、ここは俺と朔太郎で間に合いますから」
「でも……」

 家事全般が仕事でもあるのに自分の為のパーティーを開いてもらったばかりか、全ての後片付けまで任せる事に気が引けてしまう真彩。

「真彩、もう部屋に戻るところか?」

 そこへ、偶然通りがかった理仁が真彩に声を掛けた。

「あ、理仁さん……その、朔太郎くんたちには休んでもらって残りの片付けをやろうと思っていまして……」
「いやいや、本当に俺らの事は気にしなくていいですから。姉さんが休んでください!」
「真彩、今日くらい朔たちに任せておけ。それと、この後少し良いか?  話がある」
「……分かりました。それじゃあ朔太郎くん、翔太郎くん、ありがとう。よろしくお願いします」
「二人共、後は頼むぞ」
「はいっス!」
「お休みなさい」

 結局理仁から話があると言われた真彩は片付けを朔太郎たちに任せる事になり、そのまま理仁に付いて部屋へ行く事になった。

「適当に座ってくれ」
「はい」

 理仁の部屋は10畳程の和室で、元から広さはあるものの、物が少ないせいか更に広く感じられる。そんな中、一際存在感があるのは二人掛けのローソファーと、沢山の書籍が入っている本棚だろうか。

 読書が趣味の理仁はローソファーで寛ぎながら本を読むのが一番の楽しみだったりする。

 真彩がソファーの左側に腰を下ろすと、本棚横にあるPC机の引き出しから何かを取り出した理仁は彼女の右側に腰を下ろした。

「理仁さん、今日は本当にありがとうございました」
「俺は礼を言われる様な事をした覚えはねぇが?」
「でも、パーティーの事とか……」
「パーティーの顔出しは仕事の一環みてぇなものだから気にする事はねぇし、家でのパーティーは悠真がサンタに頼んで実現した事だ。感謝する相手はサンタクロースなんじゃねぇのか?」
「…………そう、ですね」

 あくまでも理仁は自分が礼を言われる様な事はしていないと言いたい様で、それに気付いた真彩はそれ以上礼を口にする事を止めた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

狂愛的ロマンス〜孤高の若頭の狂気めいた執着愛〜

羽村美海
恋愛
 古式ゆかしき華道の家元のお嬢様である美桜は、ある事情から、家をもりたてる駒となれるよう厳しく育てられてきた。  とうとうその日を迎え、見合いのため格式高い高級料亭の一室に赴いていた美桜は貞操の危機に見舞われる。  そこに現れた男により救われた美桜だったが、それがきっかけで思いがけない展開にーー  住む世界が違い、交わることのなかったはずの尊の不器用な優しさに触れ惹かれていく美桜の行き着く先は……? ✦・━・✦・━・✦・━・✦・━・✦・━・✦・━・✦ ✧天澤美桜•20歳✧ 古式ゆかしき華道の家元の世間知らずな鳥籠のお嬢様 ✧九條 尊•30歳✧ 誰もが知るIT企業の経営者だが、実は裏社会の皇帝として畏れられている日本最大の極道組織泣く子も黙る極心会の若頭 ✦・━・✦・━・✦・━・✦・━・✦・━・✦・━・✦ *西雲ササメ様より素敵な表紙をご提供頂きました✨ ※TL小説です。設定上強引な展開もあるので閲覧にはご注意ください。 ※設定や登場する人物、団体、グループの名称等全てフィクションです。 ※随時概要含め本文の改稿や修正等をしています。 ✧ ✧連載期間22.4.29〜22.7.7 ✧ ✧22.3.14 エブリスタ様にて先行公開✧ 【第15回らぶドロップス恋愛小説コンテスト一次選考通過作品です。コンテストの結果が出たので再公開しました。※エブリスタ様限定でヤス視点のSS公開中】

幸薄女神は狙われる

古亜
恋愛
広告会社で働くOLの藤倉橙子は、自他共に認める不幸体質。 日常的に小さな不幸を浴び続ける彼女はある日、命を狙われていたヤクザを偶然守ってしまった。 お礼にとやたら高い鞄を送られ困惑していたが、その後は特に何もなく、普通の日々を過ごしていた彼女に突如見合い話が持ち上がる。 断りたい。でもいい方法がない。 そんな時に思い出したのは、あのヤクザのことだった。 ラブコメだと思って書いてます。ほっこり・じんわり大賞に間に合いませんでした。

王子の片思いに気付いたので、悪役令嬢になって婚約破棄に協力しようとしてるのに、なぜ執着するんですか?

いりん
恋愛
婚約者の王子が好きだったが、 たまたま付き人と、 「婚約者のことが好きなわけじゃないー 王族なんて恋愛して結婚なんてできないだろう」 と話ながら切なそうに聖女を見つめている王子を見て、王子の片思いに気付いた。 私が悪役令嬢になれば、聖女と王子は結婚できるはず!と婚約破棄を目指してたのに…、 「僕と婚約破棄して、あいつと結婚するつもり?許さないよ」 なんで執着するんてすか?? 策略家王子×天然令嬢の両片思いストーリー 基本的に悪い人が出てこないほのぼのした話です。

政略結婚かと思ったら溺愛婚でした。

如月 そら
恋愛
父のお葬式の日、雪の降る中、園村浅緋と母の元へ片倉慎也が訪ねてきた。 父からの遺言書を持って。 そこに書かれてあったのは、 『会社は片倉に託すこと』 そして、『浅緋も片倉に託す』ということだった。 政略結婚、そう思っていたけれど……。 浅緋は片倉の優しさに惹かれていく。 けれど、片倉は……? 宝島社様の『この文庫がすごい!』大賞にて優秀作品に選出して頂きました(⁎ᴗ͈ˬᴗ͈⁎) ※表紙イラストはGiovanni様に許可を頂き、使用させて頂いているものです。 素敵なイラストをありがとうございます。

ヤクザの若頭は、年の離れた婚約者が可愛くて仕方がない

絹乃
恋愛
ヤクザの若頭の花隈(はなくま)には、婚約者がいる。十七歳下の少女で組長の一人娘である月葉(つきは)だ。保護者代わりの花隈は月葉のことをとても可愛がっているが、もちろん恋ではない。強面ヤクザと年の離れたお嬢さまの、恋に発展する前の、もどかしくドキドキするお話。

月城副社長うっかり結婚する 〜仮面夫婦は背中で泣く〜

白亜凛
恋愛
佐藤弥衣 25歳 yayoi × 月城尊 29歳 takeru 母が亡くなり、失意の中現れた謎の御曹司 彼は、母が持っていた指輪を探しているという。 指輪を巡る秘密を探し、 私、弥衣は、愛のない結婚をしようと思います。

小さな恋のトライアングル

葉月 まい
恋愛
OL × 課長 × 保育園児 わちゃわちゃ・ラブラブ・バチバチの三角関係 人づき合いが苦手な真美は ある日近所の保育園から 男の子と手を繋いで現れた課長を見かけ 親子だと勘違いする 小さな男の子、岳を中心に 三人のちょっと不思議で ほんわか温かい 恋の三角関係が始まった *✻:::✻*✻:::✻* 登場人物 *✻:::✻*✻:::✻* 望月 真美(25歳)… ITソリューション課 OL 五十嵐 潤(29歳)… ITソリューション課 課長 五十嵐 岳(4歳)… 潤の甥

恋とキスは背伸びして

葉月 まい
恋愛
結城 美怜(24歳)…身長160㎝、平社員 成瀬 隼斗(33歳)…身長182㎝、本部長 年齢差 9歳 身長差 22㎝ 役職 雲泥の差 この違い、恋愛には大きな壁? そして同期の卓の存在 異性の親友は成立する? 数々の壁を乗り越え、結ばれるまでの 二人の恋の物語

処理中です...