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こんなに幸せでいいのかな?
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「あの、理仁さん。もう一つのパーティー会場に向かっていたのではなかったんですか?」
陽も傾きかけた夕暮れ時、二箇所目のパーティー会場へ向かっていた筈の車は何故か鬼龍家の屋敷へ辿り着いていた。
それも、かなりの遠回りをした後に。
「そうだ。ここが二箇所目のパーティー会場だ」
「え……?」
その言葉の意味が分からない真彩は不思議に思いながらも車を降り、翔太郎や理仁と共に家の中へ入ると、
「鬼龍家パーティー会場へようこそ!!」
「ようこそー!!」
玄関で朔太郎と悠真、他の組員たちが皆クラッカーを手にして三人を歓迎した。
「こ、これは……?」
この状況に驚いているのは真彩一人だけ。実は皆は全て知っていて、これは真彩へのサプライズだったのだ。
このサプライズが計画されたのは数週間前、悠真がサンタに手紙を書くと言った事が全ての始まりだった。
「姉さん、悠真がサンタに手紙を書くって言ったの、覚えてますか?」
「うん」
「実はあの時、悠真が描いた絵の意味を聞いたんスよ。そしたら、『ママがお姫様みたいに綺麗な服着てご馳走を沢山食べれますようにって』そういう絵を描いてたんです」
「悠真が……そんな事を?」
そう、あの時悠真がサンタに願った事は自分の欲しい物ではなくて、大好きなママを笑顔にしたいという願いだったのだ。
「ママ、おひめさまみたい! はやくきてー!」
真彩のドレスアップ姿を見た悠真はお姫様みたいと喜び、早く上がるように促した。
「うわー! 凄い! これ、みんなで……?」
「そうっス! 俺と悠真発案なんスけど、手の空いてた皆も手伝ってくれて、結構な仕上がりになりました!」
リビングに入ると、いつもとは様変わりした風景に驚きの声を上げる真彩。
部屋は折り紙で作った輪っかやペーパーフラワー、風船などで色とりどりに飾り付けられ、テーブルには品数豊富な料理が並べられている。
「ママ、うれしい?」
「うん、凄く嬉しい! ありがとう悠真」
「えへへ」
リビングを見せた悠真は真彩に嬉しいか聞くと、『嬉しい』と笑顔で抱きしめられてご満悦の様子。
「ささ、皆さん座ってください! 乾杯しますよ!」
流石に全員は席に着けないので、悠真、真彩、理仁、翔太郎、朔太郎と数人の組員が座り、残りは立ちながらグラスを持って、
「メリークリスマス! 乾杯!」
朔太郎の音頭で乾杯して、鬼龍家のパーティーが始まった。
「悠真、そろそろいいんじゃねぇか?」
「うん!」
「ちょっと、俺ら準備して来るんで」
パーティー開始から一時間と少し経った頃、朔太郎に声を掛けられた悠真は真彩から離れ、何やら準備をするとリビングを出て行った。
「真彩、楽しめてるか?」
「はい」
「悪かったな、騙すような感じになっちまって」
「いえ! 寧ろこんな素敵な時間を過ごさせてもらって凄く感謝してます。悠真が考えてくれたって言っても、朔太郎くんや皆さんの協力が無かったら実現していない事ですから」
「いや、今日のこのパーティーは殆ど悠真と朔が考えたんだ。俺や他の奴らなんて大した事はしてねぇさ。この飾りなんて、毎日悠真と朔で作ってたみたいだしな」
「そうだったんですね」
「悠真は母親思いの良い子供だな」
「ありがとうございます。正直、私もびっくりしてるんです。あの子がこんな事を考えてくれるようになった事に」
「子供の成長ってのは早いモンなんだな」
「そうですね。最近特にそう感じます。ここへ来るまでは悠真の事を構ってあげられる時間も少なかったから、成長を感じている余裕が無かっただけかもしれないですけどね」
「……そうか。ならこれからは悠真との時間を沢山作ってやればいい」
「はい。ありがとうございます」
理仁と真彩が話をしていると、準備を終えた朔太郎と悠真が再びリビングに戻って来る。
陽も傾きかけた夕暮れ時、二箇所目のパーティー会場へ向かっていた筈の車は何故か鬼龍家の屋敷へ辿り着いていた。
それも、かなりの遠回りをした後に。
「そうだ。ここが二箇所目のパーティー会場だ」
「え……?」
その言葉の意味が分からない真彩は不思議に思いながらも車を降り、翔太郎や理仁と共に家の中へ入ると、
「鬼龍家パーティー会場へようこそ!!」
「ようこそー!!」
玄関で朔太郎と悠真、他の組員たちが皆クラッカーを手にして三人を歓迎した。
「こ、これは……?」
この状況に驚いているのは真彩一人だけ。実は皆は全て知っていて、これは真彩へのサプライズだったのだ。
このサプライズが計画されたのは数週間前、悠真がサンタに手紙を書くと言った事が全ての始まりだった。
「姉さん、悠真がサンタに手紙を書くって言ったの、覚えてますか?」
「うん」
「実はあの時、悠真が描いた絵の意味を聞いたんスよ。そしたら、『ママがお姫様みたいに綺麗な服着てご馳走を沢山食べれますようにって』そういう絵を描いてたんです」
「悠真が……そんな事を?」
そう、あの時悠真がサンタに願った事は自分の欲しい物ではなくて、大好きなママを笑顔にしたいという願いだったのだ。
「ママ、おひめさまみたい! はやくきてー!」
真彩のドレスアップ姿を見た悠真はお姫様みたいと喜び、早く上がるように促した。
「うわー! 凄い! これ、みんなで……?」
「そうっス! 俺と悠真発案なんスけど、手の空いてた皆も手伝ってくれて、結構な仕上がりになりました!」
リビングに入ると、いつもとは様変わりした風景に驚きの声を上げる真彩。
部屋は折り紙で作った輪っかやペーパーフラワー、風船などで色とりどりに飾り付けられ、テーブルには品数豊富な料理が並べられている。
「ママ、うれしい?」
「うん、凄く嬉しい! ありがとう悠真」
「えへへ」
リビングを見せた悠真は真彩に嬉しいか聞くと、『嬉しい』と笑顔で抱きしめられてご満悦の様子。
「ささ、皆さん座ってください! 乾杯しますよ!」
流石に全員は席に着けないので、悠真、真彩、理仁、翔太郎、朔太郎と数人の組員が座り、残りは立ちながらグラスを持って、
「メリークリスマス! 乾杯!」
朔太郎の音頭で乾杯して、鬼龍家のパーティーが始まった。
「悠真、そろそろいいんじゃねぇか?」
「うん!」
「ちょっと、俺ら準備して来るんで」
パーティー開始から一時間と少し経った頃、朔太郎に声を掛けられた悠真は真彩から離れ、何やら準備をするとリビングを出て行った。
「真彩、楽しめてるか?」
「はい」
「悪かったな、騙すような感じになっちまって」
「いえ! 寧ろこんな素敵な時間を過ごさせてもらって凄く感謝してます。悠真が考えてくれたって言っても、朔太郎くんや皆さんの協力が無かったら実現していない事ですから」
「いや、今日のこのパーティーは殆ど悠真と朔が考えたんだ。俺や他の奴らなんて大した事はしてねぇさ。この飾りなんて、毎日悠真と朔で作ってたみたいだしな」
「そうだったんですね」
「悠真は母親思いの良い子供だな」
「ありがとうございます。正直、私もびっくりしてるんです。あの子がこんな事を考えてくれるようになった事に」
「子供の成長ってのは早いモンなんだな」
「そうですね。最近特にそう感じます。ここへ来るまでは悠真の事を構ってあげられる時間も少なかったから、成長を感じている余裕が無かっただけかもしれないですけどね」
「……そうか。ならこれからは悠真との時間を沢山作ってやればいい」
「はい。ありがとうございます」
理仁と真彩が話をしていると、準備を終えた朔太郎と悠真が再びリビングに戻って来る。
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