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Epilogue
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それから少しして打ち合わせへと向かった私たちは明日のスケジュールの最終確認を終えた後、百瀬くんに連れられてエステサロンへやって来た。
「え? どうして?」
「折角だし、もっと綺麗になってきて? 俺、親父に頼まれてお得意様のところに挨拶行かなきゃならないから、丁度時間もあるしさ」
「そうなんだ? それじゃあ、お言葉に甘えて……行ってくるね」
「うん」
前日のエステは予定していなかったけれど、百瀬くんの計らいで受ける事になり、さっき見たチャペルを思い出しながら明日自分があの場にウエディングドレスを着て立つ事を想像してみる。
ウエディングドレスは出来上がった物を事前に合わせているのでどんな感じになるのかは分かっているのだけど、百瀬くんは当日の楽しみにしたいからと未だに私のウエディングドレス姿を見ていないから、どんな反応をしてくれるのか楽しみで仕方がなかった。
二時間程でサロンを出た頃にはすっかり陽も落ちて暗くなっていて、用事の済んだ百瀬くんと共にホテルへ戻り、レストランで軽めの食事をしてから部屋へ帰った。
「昼間の景色も素敵だったけど、夜はまた違って見えて素敵だね!」
「本当だね」
部屋に入り、カーテンを開けっ放しだった事もあって目の前には綺麗な夜景が広がって見え、昼間同様テンションの上がった私が窓辺に近付いて外を眺めていると、
「亜夢、こっちに来て」
ベッドの上に腰掛けた百瀬くんに手招きをされたので何かと思って近付くと、ぐいっと手を引かれてバランスを崩した私は彼の身体にもたれるように倒れ込み、そのまま抱き竦められていた。
「百瀬、くん?」
「亜夢、さっきのエステで更に綺麗になったね?」
「そんな事……ないよ」
「ううん、綺麗になった」
「もう、百瀬くんってば……」
「明日楽しみだな、亜夢のウエディングドレス姿」
「私も、百瀬くんがどんな反応をくれるのか凄く楽しみ」
「俺、可愛くて綺麗な亜夢を前にしたら抱き締めたくなる衝動を止められるか不安だなぁ」
「えー? 人前では駄目だよ? 二人きりになるまでは我慢してね?」
「……二人きりになったら、歯止めきかないと思うけど、いい?」
「……うん、いいよ……」
「……今すぐ抱きたくなった……」
「……今日は、駄目だよ……」
「どうしても?」
「どうしても。今日は明日に備えて、早く寝なきゃ」
「……やっぱり駄目か……」
そう言って拗ねた表情を浮かべた百瀬くんが凄く可愛くて、愛おしくなる。
「えっと、それじゃあ、お風呂……一緒に入る?」
拗ねた彼の機嫌を取ろうと思ってそう提案してみたものの、
「亜夢さ、それってわざとなの?」
「え?」
「風呂なんて一緒に入ったら、余計に我慢出来ないんですけど……。やっぱり、誘ってる?」
「え? そ、そんな事ないよ……。その、深く考えて無かった……ごめんね?」
「はあ……。亜夢の天然には困ったもんだ……。いいよ、今日は我慢する。お風呂も、一緒に入りたいところだけど、理性が効かなくなるから今日はいいや。その代わり、明日は覚悟してよね? 嫌だって言っても、絶対に逃がさないし、離してあげないから」
「……っ! わ、分かった……」
不敵な笑みを浮かべる百瀬くんに戸惑いつつも、明日の事を考え、体力はもつのか、眠れるのだろうか、なんて心配をしながらも密かに期待している私がいた。
それから各々お風呂に入り、いつもより早めにベッドに横になった私たちは、明日に備えて眠る事にした。
さっき納得したはずなのに、やっぱりどこか不満そうな百瀬くんを宥めるように抱き締めてみると、それ以上の力で抱き締め返してきた百瀬くん。
見つめ合った後に軽く啄むようなキスを幾度か繰り返し、温もりを確かめ合うようにギュッと抱き締め合ったまま、私たちは眠りについた。
そして、翌日――。
予定より少し早めに向かった私たちはそれぞれに別れて準備をして貰う。
昨日エステを受けたからか、今日はいつも以上に肌のコンディションも良くて、化粧のノリも良い。
事前に打ち合わせをしていた通りのヘアスタイルやメイクを施して貰い、ウエディングドレスを着る。
今日はチャペルを貸し切っているので、三着のドレスを着てウエディングフォトも撮ってもらうのだけど、今着ているこのドレスが一番気に入っていたりする。
Aラインのこのドレスはビジューや刺繍などの装飾品が少ないもののスカート部分のタッキングが存在感をアピールしてくれている純白のアシンメトリードレスで、腰の辺りに付いているコサージュがアクセントになっていたりする。
派手過ぎず、シンプルだけど可愛い、そんなドレスにしたいと思っていたから、私的にはとても満足だった。
一番のお気に入りのドレスを身に纏い、先に着替えを済ませた百瀬くんが待っている大聖堂へと向かう。
そして、スタッフさんによってドアが開かれ、正面にある大きな窓から映し出される澄んだ青空をバックに立っている百瀬くんの元へ向かう為、白と青を基調とし、周りに沢山の花が飾られたバージンロードをゆっくり、ゆっくりと進んで行った。
「え? どうして?」
「折角だし、もっと綺麗になってきて? 俺、親父に頼まれてお得意様のところに挨拶行かなきゃならないから、丁度時間もあるしさ」
「そうなんだ? それじゃあ、お言葉に甘えて……行ってくるね」
「うん」
前日のエステは予定していなかったけれど、百瀬くんの計らいで受ける事になり、さっき見たチャペルを思い出しながら明日自分があの場にウエディングドレスを着て立つ事を想像してみる。
ウエディングドレスは出来上がった物を事前に合わせているのでどんな感じになるのかは分かっているのだけど、百瀬くんは当日の楽しみにしたいからと未だに私のウエディングドレス姿を見ていないから、どんな反応をしてくれるのか楽しみで仕方がなかった。
二時間程でサロンを出た頃にはすっかり陽も落ちて暗くなっていて、用事の済んだ百瀬くんと共にホテルへ戻り、レストランで軽めの食事をしてから部屋へ帰った。
「昼間の景色も素敵だったけど、夜はまた違って見えて素敵だね!」
「本当だね」
部屋に入り、カーテンを開けっ放しだった事もあって目の前には綺麗な夜景が広がって見え、昼間同様テンションの上がった私が窓辺に近付いて外を眺めていると、
「亜夢、こっちに来て」
ベッドの上に腰掛けた百瀬くんに手招きをされたので何かと思って近付くと、ぐいっと手を引かれてバランスを崩した私は彼の身体にもたれるように倒れ込み、そのまま抱き竦められていた。
「百瀬、くん?」
「亜夢、さっきのエステで更に綺麗になったね?」
「そんな事……ないよ」
「ううん、綺麗になった」
「もう、百瀬くんってば……」
「明日楽しみだな、亜夢のウエディングドレス姿」
「私も、百瀬くんがどんな反応をくれるのか凄く楽しみ」
「俺、可愛くて綺麗な亜夢を前にしたら抱き締めたくなる衝動を止められるか不安だなぁ」
「えー? 人前では駄目だよ? 二人きりになるまでは我慢してね?」
「……二人きりになったら、歯止めきかないと思うけど、いい?」
「……うん、いいよ……」
「……今すぐ抱きたくなった……」
「……今日は、駄目だよ……」
「どうしても?」
「どうしても。今日は明日に備えて、早く寝なきゃ」
「……やっぱり駄目か……」
そう言って拗ねた表情を浮かべた百瀬くんが凄く可愛くて、愛おしくなる。
「えっと、それじゃあ、お風呂……一緒に入る?」
拗ねた彼の機嫌を取ろうと思ってそう提案してみたものの、
「亜夢さ、それってわざとなの?」
「え?」
「風呂なんて一緒に入ったら、余計に我慢出来ないんですけど……。やっぱり、誘ってる?」
「え? そ、そんな事ないよ……。その、深く考えて無かった……ごめんね?」
「はあ……。亜夢の天然には困ったもんだ……。いいよ、今日は我慢する。お風呂も、一緒に入りたいところだけど、理性が効かなくなるから今日はいいや。その代わり、明日は覚悟してよね? 嫌だって言っても、絶対に逃がさないし、離してあげないから」
「……っ! わ、分かった……」
不敵な笑みを浮かべる百瀬くんに戸惑いつつも、明日の事を考え、体力はもつのか、眠れるのだろうか、なんて心配をしながらも密かに期待している私がいた。
それから各々お風呂に入り、いつもより早めにベッドに横になった私たちは、明日に備えて眠る事にした。
さっき納得したはずなのに、やっぱりどこか不満そうな百瀬くんを宥めるように抱き締めてみると、それ以上の力で抱き締め返してきた百瀬くん。
見つめ合った後に軽く啄むようなキスを幾度か繰り返し、温もりを確かめ合うようにギュッと抱き締め合ったまま、私たちは眠りについた。
そして、翌日――。
予定より少し早めに向かった私たちはそれぞれに別れて準備をして貰う。
昨日エステを受けたからか、今日はいつも以上に肌のコンディションも良くて、化粧のノリも良い。
事前に打ち合わせをしていた通りのヘアスタイルやメイクを施して貰い、ウエディングドレスを着る。
今日はチャペルを貸し切っているので、三着のドレスを着てウエディングフォトも撮ってもらうのだけど、今着ているこのドレスが一番気に入っていたりする。
Aラインのこのドレスはビジューや刺繍などの装飾品が少ないもののスカート部分のタッキングが存在感をアピールしてくれている純白のアシンメトリードレスで、腰の辺りに付いているコサージュがアクセントになっていたりする。
派手過ぎず、シンプルだけど可愛い、そんなドレスにしたいと思っていたから、私的にはとても満足だった。
一番のお気に入りのドレスを身に纏い、先に着替えを済ませた百瀬くんが待っている大聖堂へと向かう。
そして、スタッフさんによってドアが開かれ、正面にある大きな窓から映し出される澄んだ青空をバックに立っている百瀬くんの元へ向かう為、白と青を基調とし、周りに沢山の花が飾られたバージンロードをゆっくり、ゆっくりと進んで行った。
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