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Episode3
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再び母から電話が掛かってきて、『この前の縁談、あなたの代わりに有紗が受けてくれたのよ』という話を聞いた。
私の代わりに縁談を受けた有紗。
しかも、母に頼まれた訳では無く、自ら進んで受けたという。
一体何を考えているのか、私と百瀬くんは有紗の考えや行動に戸惑うばかり。
そして、母親経由で有紗が受けた縁談は上手くいき、結婚を視野に入れながらの交際を始めたという話まで聞く事になった。
「……俺と亜夢が駄目になる事が無いと確信して、諦めた……とか?」
「うーん、私には、そんな風には思えないんだよね……」
有紗と付き合う事になった男の人は私と同い歳で教師として中学校に勤めていて、温厚で心優しい人だとの事。
今までずっと私から全てを奪わないと気が済まないはずの有紗がそんなに簡単にお見合いした相手と付き合うなんて、やっぱり納得がいかないのだけど、
(もしかしたら、心を入れ替えた……とか? 百瀬くんの言う通り、私たちの仲を引き裂くのは無理だと考えて、自分も幸せになろうとしてるとか?)
有紗の中にもどこか後悔とか反省する気持ちが芽生え、自分の幸せを考えるようになったのかもしれない。
そうだったらどんなに良いかと思っていた。
それから数週間が過ぎた頃、
「…………」
「亜夢? どうかした?」
「え? あ、ううん、何でもない」
「本当に?」
「うん、本当に大丈夫! ごめんね」
「ならいいけど……何かあったらすぐに言ってよ?」
「うん、分かってる」
そう答えはしたけど、私はここ数日、誰かに見られている気がしていた。
でもあくまでも視線を感じる程度で、何かある訳じゃない。
振り返るとその視線は消えるし、最近まで有紗の事を疑っていたせいで神経が過敏になっているだけだと。
確証も無いのに百瀬くんに心配を掛けたく無かった私は、この場で視線については何も言わなかったのだけど、実は百瀬くんはこの時点で既に視線に気付いていたと後に知る事になる。
「……ねぇ亜夢、俺に何か隠してる事、あるよね?」
視線を感じるようになってから暫く、百瀬くんの部屋でソファーに座り共にテレビを観ていた時、突然彼はそう質問してくる。
「え……?」
一瞬何の事かと思ったけれど、すぐに視線の事だ理解する。
「もしかして、百瀬くん、気付いてた?」
「決まってるでしょ。ってか俺の方も、誰かに見られてるんだよね。亜夢と一緒の時以外にも」
「え? 百瀬くんも?」
「って事は、亜夢もだね? 一人の時もって事だよね?」
「……うん」
「……はあ」
私の答えに、百瀬くんはわざとらしいくらいに大きな溜め息をつく。
「亜夢、何ですぐに言わないの? 俺、言ったよね? 何かあったらすぐに言ってって」
「ごめん……、勘違いかなって、思ったらから」
「あのね、例え勘違いでも良いんだよ。どんな事でもいいから、俺に隠し事なんてするな。俺、怒ってるよ?」
「……うん、本当にごめん……」
百瀬くんが怒るのは当たり前だ。
彼に迷惑を掛けたくないと思って言わなかったけど、そういう問題じゃないんだと改めて思い知る。
「――いいよ、もう。けど、次からはこういうのナシだからね?」
「うん、約束する」
もういいよと言いながらも拗ねるような表情を浮かべた百瀬くんが後ろから私を抱きしめると耳元で、
「けどまあ、今日はちょっとお仕置きしとこうかな?」
いつになく低い声で、呟くよう口にした。
「…………っ!」
そんな百瀬くんの言葉に、私は密かに期待してしまう。
お仕置きなんて恥ずかしいくせに、身体はそれを望んでいるのが分かる。
「あれ? もしかして、亜夢、エッチな事考えてる?」
「え!?」
「もしかして、図星?」
「ち、違っ!」
「違うの? その割には顔、紅いよ?」
「っ!!」
図星をつかれ、それを否定するも百瀬くんはまるで私の反応を楽しむようにからかってくる。
私の代わりに縁談を受けた有紗。
しかも、母に頼まれた訳では無く、自ら進んで受けたという。
一体何を考えているのか、私と百瀬くんは有紗の考えや行動に戸惑うばかり。
そして、母親経由で有紗が受けた縁談は上手くいき、結婚を視野に入れながらの交際を始めたという話まで聞く事になった。
「……俺と亜夢が駄目になる事が無いと確信して、諦めた……とか?」
「うーん、私には、そんな風には思えないんだよね……」
有紗と付き合う事になった男の人は私と同い歳で教師として中学校に勤めていて、温厚で心優しい人だとの事。
今までずっと私から全てを奪わないと気が済まないはずの有紗がそんなに簡単にお見合いした相手と付き合うなんて、やっぱり納得がいかないのだけど、
(もしかしたら、心を入れ替えた……とか? 百瀬くんの言う通り、私たちの仲を引き裂くのは無理だと考えて、自分も幸せになろうとしてるとか?)
有紗の中にもどこか後悔とか反省する気持ちが芽生え、自分の幸せを考えるようになったのかもしれない。
そうだったらどんなに良いかと思っていた。
それから数週間が過ぎた頃、
「…………」
「亜夢? どうかした?」
「え? あ、ううん、何でもない」
「本当に?」
「うん、本当に大丈夫! ごめんね」
「ならいいけど……何かあったらすぐに言ってよ?」
「うん、分かってる」
そう答えはしたけど、私はここ数日、誰かに見られている気がしていた。
でもあくまでも視線を感じる程度で、何かある訳じゃない。
振り返るとその視線は消えるし、最近まで有紗の事を疑っていたせいで神経が過敏になっているだけだと。
確証も無いのに百瀬くんに心配を掛けたく無かった私は、この場で視線については何も言わなかったのだけど、実は百瀬くんはこの時点で既に視線に気付いていたと後に知る事になる。
「……ねぇ亜夢、俺に何か隠してる事、あるよね?」
視線を感じるようになってから暫く、百瀬くんの部屋でソファーに座り共にテレビを観ていた時、突然彼はそう質問してくる。
「え……?」
一瞬何の事かと思ったけれど、すぐに視線の事だ理解する。
「もしかして、百瀬くん、気付いてた?」
「決まってるでしょ。ってか俺の方も、誰かに見られてるんだよね。亜夢と一緒の時以外にも」
「え? 百瀬くんも?」
「って事は、亜夢もだね? 一人の時もって事だよね?」
「……うん」
「……はあ」
私の答えに、百瀬くんはわざとらしいくらいに大きな溜め息をつく。
「亜夢、何ですぐに言わないの? 俺、言ったよね? 何かあったらすぐに言ってって」
「ごめん……、勘違いかなって、思ったらから」
「あのね、例え勘違いでも良いんだよ。どんな事でもいいから、俺に隠し事なんてするな。俺、怒ってるよ?」
「……うん、本当にごめん……」
百瀬くんが怒るのは当たり前だ。
彼に迷惑を掛けたくないと思って言わなかったけど、そういう問題じゃないんだと改めて思い知る。
「――いいよ、もう。けど、次からはこういうのナシだからね?」
「うん、約束する」
もういいよと言いながらも拗ねるような表情を浮かべた百瀬くんが後ろから私を抱きしめると耳元で、
「けどまあ、今日はちょっとお仕置きしとこうかな?」
いつになく低い声で、呟くよう口にした。
「…………っ!」
そんな百瀬くんの言葉に、私は密かに期待してしまう。
お仕置きなんて恥ずかしいくせに、身体はそれを望んでいるのが分かる。
「あれ? もしかして、亜夢、エッチな事考えてる?」
「え!?」
「もしかして、図星?」
「ち、違っ!」
「違うの? その割には顔、紅いよ?」
「っ!!」
図星をつかれ、それを否定するも百瀬くんはまるで私の反応を楽しむようにからかってくる。
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