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MOMOSE side
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職場はそこそこの企業で、人当たりも良い。
仕事も出来て、上司からも部下からも好かれるタイプ。
男女共に友達もそれなりにいる。
まあ、これだけ見れば良い奴だ。
けど、コイツには周りに言えない秘密があった。
「……嘘、だろ?」
亜夢と同棲して、周囲には彼女との仲が良好、結婚も視野に入れていると話している一方で、コイツには――他にも女がいた。
しかも、複数の。
これには俺ですら、目を疑った。
(有り得ねぇ……。彼女一途みたいな顔して、裏で好き放題とか……)
コイツの地元を辿り、学生時代の友人という奴から話を聞いたところ、昔から女遊びの激しい男だったという。
だけど、これはあくまでも遊び。
本命は亜夢。
何故亜夢なのかというと、派手過ぎず、男性経験も無い、裏で浮気しても気付かない程鈍感で、おまけに家庭的――要は結婚して円満家庭を持っている一方で、今のように他の女と関係を持ち続ける為には亜夢は都合の良い女で扱い易いという事なのだ。
そんな事を知っては、当然黙っていられない。いられるはずが無い。
亜夢がそんなクズな男のモノである事が、許せなかった。
何とかして、別れさせたい――けどそれには、亜夢に男が浮気している事を伝えなければならない。
仲が良いわけでも無い俺にそんな事が出来る訳もなくて……どうすればいいか悩んでいた時、俺の脳裏に有紗が思い浮かんだ。
有紗は常に自分が優位に立つ事を望んでいる。
だとすれば、当然姉が自分よりも幸せに暮らしていると知れば、面白く無いはずだ。
そこまで考えた俺は、有紗が広丘 貴将に興味を持つように仕向ける事にした。
「あれ、アンタの姉貴じゃねぇの?」
「え!?」
ある日、久しぶりに有紗を食事に誘った俺は、偶然を装って有紗に亜夢と広丘が一緒に居る所を目撃させた。
「かなり幸せそうだな。ありゃ彼氏か? あの感じじゃ、結婚も近いんじゃねぇの?」
「…………そ、そうね。最近全然会ってなかったから、びっくり……あんな格好いい彼氏がいるなんて……」
広丘を見た有紗の目の色が変わるのを、俺は見逃さなかった。
そして、俺から食事を誘ったくせに急用が出来たと言って半ば強引に有紗と別れ、一人残された彼女が思い通りに動く事を期待すると、俺の目論み通り有紗は早速行動に移した。
有紗は二人を尾行していき、住んでいる場所を知ると、それからはトントン拍子に事を運んでくれた。
考え無しにすぐ広丘の元へ向かうのかと思いきや、すぐに姿を現さない辺り、有紗らしいというかなんと言うか。
どうすれば一番自然に二人の中へ入り込めるか、広丘が自分に興味を持ってくれるか入念に下調べを繰り返し、そろそろ頃合だろうという時になると、俺を呼び出してこう告げた。
「百瀬くん、全然会ってくれないし、私、他に好きな人出来たから別れて欲しいの」
「あっそ、勝手にどうぞ」
「本当、私に何の関心も無いのね! 最低な人っ! アンタなんかよりも良い男掴まえて幸せになってみせるわ! さよなら!」
俺としては既に別れてる認識だったし、むしろようやく俺に飽きてくれて嬉しかった。
そして俺と別れた有紗は、それから暫く経った後、亜夢と広丘の元へ向かったんだ。
ここから先は、亜夢も知っている通りの展開に繋がるので、俺は一息吐いて亜夢の方へ再度視線を戻した。
「――この後の展開は亜夢も分かってると思うけど、彼女が亜夢と広丘の元に姿を現したあの日に繋がるんだ」
「……そう、だったのね」
俺の話を聞いた亜夢の表情はとても暗く落ち込んでいる。恐らく、広丘に女が居た事実に傷付いているのだと思う。
俺が全てを話した事で、亜夢が知らなくていい事を、知らせてしまったんだ。
「ごめん、そんな顔させたくは無かったんだ。妹と浮気した事だけでも傷付いただろうし許せなかっただろうに、他にも女がいたなんて……知りたく無かったよね……」
「……そう、だね。いっそ、知らないままで、いたかったかも……」
「そうだよね、ごめん……」
俺が亜夢に隠し事をしていた理由は、広丘が色んな女と浮気するようなクズ野郎だったというのを知らせたく無かった事と、二人がこの先も一緒に居る事が許せなくて、どうしても別れさせたくて……亜夢を傷付けると分かってて妹を使い、二人の仲を引き裂いた事だった。
仕事も出来て、上司からも部下からも好かれるタイプ。
男女共に友達もそれなりにいる。
まあ、これだけ見れば良い奴だ。
けど、コイツには周りに言えない秘密があった。
「……嘘、だろ?」
亜夢と同棲して、周囲には彼女との仲が良好、結婚も視野に入れていると話している一方で、コイツには――他にも女がいた。
しかも、複数の。
これには俺ですら、目を疑った。
(有り得ねぇ……。彼女一途みたいな顔して、裏で好き放題とか……)
コイツの地元を辿り、学生時代の友人という奴から話を聞いたところ、昔から女遊びの激しい男だったという。
だけど、これはあくまでも遊び。
本命は亜夢。
何故亜夢なのかというと、派手過ぎず、男性経験も無い、裏で浮気しても気付かない程鈍感で、おまけに家庭的――要は結婚して円満家庭を持っている一方で、今のように他の女と関係を持ち続ける為には亜夢は都合の良い女で扱い易いという事なのだ。
そんな事を知っては、当然黙っていられない。いられるはずが無い。
亜夢がそんなクズな男のモノである事が、許せなかった。
何とかして、別れさせたい――けどそれには、亜夢に男が浮気している事を伝えなければならない。
仲が良いわけでも無い俺にそんな事が出来る訳もなくて……どうすればいいか悩んでいた時、俺の脳裏に有紗が思い浮かんだ。
有紗は常に自分が優位に立つ事を望んでいる。
だとすれば、当然姉が自分よりも幸せに暮らしていると知れば、面白く無いはずだ。
そこまで考えた俺は、有紗が広丘 貴将に興味を持つように仕向ける事にした。
「あれ、アンタの姉貴じゃねぇの?」
「え!?」
ある日、久しぶりに有紗を食事に誘った俺は、偶然を装って有紗に亜夢と広丘が一緒に居る所を目撃させた。
「かなり幸せそうだな。ありゃ彼氏か? あの感じじゃ、結婚も近いんじゃねぇの?」
「…………そ、そうね。最近全然会ってなかったから、びっくり……あんな格好いい彼氏がいるなんて……」
広丘を見た有紗の目の色が変わるのを、俺は見逃さなかった。
そして、俺から食事を誘ったくせに急用が出来たと言って半ば強引に有紗と別れ、一人残された彼女が思い通りに動く事を期待すると、俺の目論み通り有紗は早速行動に移した。
有紗は二人を尾行していき、住んでいる場所を知ると、それからはトントン拍子に事を運んでくれた。
考え無しにすぐ広丘の元へ向かうのかと思いきや、すぐに姿を現さない辺り、有紗らしいというかなんと言うか。
どうすれば一番自然に二人の中へ入り込めるか、広丘が自分に興味を持ってくれるか入念に下調べを繰り返し、そろそろ頃合だろうという時になると、俺を呼び出してこう告げた。
「百瀬くん、全然会ってくれないし、私、他に好きな人出来たから別れて欲しいの」
「あっそ、勝手にどうぞ」
「本当、私に何の関心も無いのね! 最低な人っ! アンタなんかよりも良い男掴まえて幸せになってみせるわ! さよなら!」
俺としては既に別れてる認識だったし、むしろようやく俺に飽きてくれて嬉しかった。
そして俺と別れた有紗は、それから暫く経った後、亜夢と広丘の元へ向かったんだ。
ここから先は、亜夢も知っている通りの展開に繋がるので、俺は一息吐いて亜夢の方へ再度視線を戻した。
「――この後の展開は亜夢も分かってると思うけど、彼女が亜夢と広丘の元に姿を現したあの日に繋がるんだ」
「……そう、だったのね」
俺の話を聞いた亜夢の表情はとても暗く落ち込んでいる。恐らく、広丘に女が居た事実に傷付いているのだと思う。
俺が全てを話した事で、亜夢が知らなくていい事を、知らせてしまったんだ。
「ごめん、そんな顔させたくは無かったんだ。妹と浮気した事だけでも傷付いただろうし許せなかっただろうに、他にも女がいたなんて……知りたく無かったよね……」
「……そう、だね。いっそ、知らないままで、いたかったかも……」
「そうだよね、ごめん……」
俺が亜夢に隠し事をしていた理由は、広丘が色んな女と浮気するようなクズ野郎だったというのを知らせたく無かった事と、二人がこの先も一緒に居る事が許せなくて、どうしても別れさせたくて……亜夢を傷付けると分かってて妹を使い、二人の仲を引き裂いた事だった。
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