妹に彼氏を寝取られ傷心していた地味女の私がナンパしてきた年下イケメンと一夜を共にしたら、驚く程に甘い溺愛が待っていました【完】

夏目萌(月嶋ゆのん)

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Episode2

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「お姉ちゃん、こっちこっち」

 電話から約一時間程で待ち合わせ場所のカフェに着いた私は、先に店内で待っていた有紗と落ち合った。

 ここへ来る時、万が一この場所に百瀬くんも居たら……なんて考えたりもしたけど、それが無くて安堵する。

 席に着いてアイスコーヒーを注文すると程なくして運ばれてきたので、

「……それで、何なの?  この前の話の続きって」

 もう待ちきれなかった私の方から話を切り出した。

 すると、有紗は口角を上げ、不敵な笑みを浮かべながら、

「私ね、不思議だったんだぁ、百瀬くんが全然私に靡かない事が」

 そんな台詞を口にした。

 正直、有紗はどうしてそこまで自分に自信が持てるのか、不思議でならない。彼女はきっと、世の男は全員自分の事を好きになるとでも思っているに違いない。

 まあでも、そんな事はどうでもいい。有紗が勝手に言ってるだけなのだから。

 それよりも、その先の話が、私は知りたいのだ。

「……そ、そうなの?  それで、それがなんだって言うの?」
「だからね、どうして彼が私に靡かないのか不思議だったんだけど、その理由が分かったのよ」
「……理由?」
「そ。この前はまだ不確かだったから言わなかったけど、その後で調べてみたら分かったの」

 そんなの、有紗の性格の悪さを見抜いているからに決まってるし、百瀬くんはそこまで馬鹿な男じゃないから引っかからない、そう思ってた。

 だけど、

「そもそも私、百瀬くんに初めて会った時、ずっと、どこかで会った事あるような気がしてたんだよねぇ。けど、会った事あるとしたら、あんなイケメンでハイスペックな男の子を忘れるはずがないのにって。それで、あらゆる手を使って詳しく調べて分かったんだけど、彼が私に靡かないのは当然なのよ」

 そこまで言った有紗は焦らすように一旦言葉を切ると、ミルクティーを一口飲みながら、ニヤリと笑みを浮かべ、

「私と百瀬くんはね――過去に付き合った事があったんだもん」

 耳を疑うよな言葉を言い放ったのだ。

 そんな有紗のその言葉に、私の視界は一瞬真っ暗になり、「有紗と百瀬くんが、過去に、付き合ってた?」という言葉が脳内再生されると、私の中の何かが全てが崩れ落ちていく音が聞こえていた。

(有紗と百瀬くんが、付き合ってた?)

 そんなはずが無い。

 きっと、有紗のハッタリに決まってる。

(だって、付き合ってたらいちいち調べたりしなくても気付くでしょ?)

 そう思いたかったのだけど、それは有紗の次の言葉によってハッタリでは無い事が証明されてしまう。

「まぁ、私が付き合ってたのは『荒木田  百瀬』くん、じゃなくて、『九條  百瀬』くんの方だけどね?  今の彼と全然違うから、びっくりしちゃった」
「…………」

 九條の姓を名乗っている事を知っているのはほんの一部にしか過ぎないはず。

 有紗が『九條  百瀬』という人物を知っているという事は、今のその話が真実である事を教えてくれているという訳で、それじゃあ何故、百瀬くんは有紗とは初対面のように接したり、その事を、私に隠していたのだろう。

 こうなると、有紗と付き合っていたという事実よりも、百瀬くんに不信感を抱いてしまう。

「本当、びっくりしちゃった。彼があの、百瀬くんだったなんて。私が彼と付き合ったのは今から二年くらい前かな?  きっかけは合コンだったの。見た目冴えないし暗そうな性格で最初はノーマークだったんだけど、職場は結構良いところだし、ああいう冴えない人の方が扱い易いかなって思ってアタックしたら、ようやくOKもらえてねぇ、それから暫くは付き合ってたんだけど、彼、エッチはものすごーく上手くて良いけど、冷たいし、つまらないし、やっぱり退屈しちゃってぇ、結局私から振ったのよねぇ」

 呆然と座ったままの私に、有紗は百瀬くんとの馴れ初めや別れを決めた事など、聞いてもいないのにベラベラと話してくる。

 別に、有紗と付き合ってた事をとやかくいうつもりは無い。

 私と付き合いながら有紗と付き合っていた訳じゃないし、出逢うのが有紗より後だったというだけの事だから。

 だけど、付き合っていたのなら有紗に会えば過去に付き合った彼女だってすぐに気付くはずだし、付き合ってた時は『九條』の姓を名乗っていて格好も別人だったから会ったあの場で初対面を装うのはまあ理解出来るとしても、私と二人きりの時にまで隠す必要は無かったはず。

 そんな事を考えていたせいか私の表情は凄く暗かったし動揺して落ち込んでいるのも一目瞭然のはず。

 追い打ちをかけるかのように有紗は、

「やっぱり、百瀬くんはお姉ちゃんに隠してたんだね?  どーして隠すんだろう?  きっと、何かやましい事でもあるのかもしれないね?  お姉ちゃん、そんな人と付き合ってて、本当に良いの?」

 まるで嘲笑うような表情と口調でそんな言葉を投げ掛けてきたのだった。
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