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Prologue
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「……謝って済む問題じゃ、ないでしょ?」
申し訳なさそうな表情を浮かべる貴将に、頭を抱えながら問い掛ける。
「本当にごめん……」
「ごめんって謝るくらいなら何でこんな事するのよ?」
「お姉ちゃん、貴将くんは悪くないの! 私がいけないの!」
「いや、有紗ちゃんのせいじゃないよ、俺が悪いんだ」
私が貴将を責め立てると、間髪入れずに有紗が彼を庇い出し、それを制して自分が悪いと口にする貴将。
この際、どっちが悪いとかそんな事は問題じゃない。
私が問いたいのは、何故、こんな事になっているのかという事なのだ。
「……いつから?」
「…………二週間前、初めて有紗ちゃんに会った日の後で、偶然、再会して……」
「私、色々悩んでて、相談に乗ってもらってるうちに……貴将くんの事、好きに、なっちゃって……」
「勿論、初めは断った! けど、何度も誘われて……一度だけで良いからって、言われて……」
「それで、寝たの?」
「……ごめん」
『ごめん』と謝りながら、貴将はもう、決めているのだ。
この後に、どの言葉を口にするのかを。
「それで、どうしたい訳?」
「――本当に申し訳ないって、思ってる。亜夢の事は、本気で好きだった。けど、今は、それ以上に……有紗ちゃんの事が、好きなんだ……」
そう、一度寝ただけで終われば、まだ良かった。
二人の関係も、知らずに済んだかもしれないから。
でも、一度だけで終わらなかったという事は、私よりも有紗を好きになったという事で、
そうなると、
私よりも有紗を選ぶに決まってるのだ。
有紗は可愛い。
女の私から見ても、凄く可愛いと思う。
でも、性格は最悪だ。
まあ、有紗も馬鹿じゃないから、その最悪な性格を他人に見せる事は無い。
「……お姉ちゃん……ごめんなさい……っ、ごめんなさいっ」
涙を流し、泣いて許しを乞う有紗。
本性を知らなければ、そんな風に泣いて謝られては許してしまうかもしれない。
でも、
これは演技。
全て計算された事。
「……もう、いいよ。……貴将、私はここには住めないから、後は貴方がどうにかして。私の荷物は明日、貴方が仕事に行ってる間に、纏めるから」
「……分かった」
二人が抱き合っていた部屋になんて住みたくも無いから、私は二人で借りたこのアパートから出ていく事を選ぶ。
とりあえず今日はどこかホテルにでも泊まろうと簡単に荷物を纏めている時、ふと、有紗の方に視線を向けると、未だ涙を拭いながら泣いているのだけど、その口元には、薄ら笑みが浮かんでいる。
ほらね、やっぱり嘘泣き。
思い通りに事が運んで、さぞ気分が良いでしょうね。
私は有紗の本性を知っているから、決して、騙される事は無い。
「それじゃあ、さよなら」
「――亜夢、本当にごめん……。さよなら」
一刻も早くこの場から逃げたかった私はバッグを手にすると、二人を振り返る事無く部屋を後にした。
バタンと玄関のドアが虚しく閉まる。
ああ、何て呆気ない終わり方。
三年も付き合ったのに、こんな終わり方とか、
正直笑えない。
「……これから、どうしよう……」
行き場を失った私は、一体どうすればいいのか分からず、一人途方に暮れていた。
申し訳なさそうな表情を浮かべる貴将に、頭を抱えながら問い掛ける。
「本当にごめん……」
「ごめんって謝るくらいなら何でこんな事するのよ?」
「お姉ちゃん、貴将くんは悪くないの! 私がいけないの!」
「いや、有紗ちゃんのせいじゃないよ、俺が悪いんだ」
私が貴将を責め立てると、間髪入れずに有紗が彼を庇い出し、それを制して自分が悪いと口にする貴将。
この際、どっちが悪いとかそんな事は問題じゃない。
私が問いたいのは、何故、こんな事になっているのかという事なのだ。
「……いつから?」
「…………二週間前、初めて有紗ちゃんに会った日の後で、偶然、再会して……」
「私、色々悩んでて、相談に乗ってもらってるうちに……貴将くんの事、好きに、なっちゃって……」
「勿論、初めは断った! けど、何度も誘われて……一度だけで良いからって、言われて……」
「それで、寝たの?」
「……ごめん」
『ごめん』と謝りながら、貴将はもう、決めているのだ。
この後に、どの言葉を口にするのかを。
「それで、どうしたい訳?」
「――本当に申し訳ないって、思ってる。亜夢の事は、本気で好きだった。けど、今は、それ以上に……有紗ちゃんの事が、好きなんだ……」
そう、一度寝ただけで終われば、まだ良かった。
二人の関係も、知らずに済んだかもしれないから。
でも、一度だけで終わらなかったという事は、私よりも有紗を好きになったという事で、
そうなると、
私よりも有紗を選ぶに決まってるのだ。
有紗は可愛い。
女の私から見ても、凄く可愛いと思う。
でも、性格は最悪だ。
まあ、有紗も馬鹿じゃないから、その最悪な性格を他人に見せる事は無い。
「……お姉ちゃん……ごめんなさい……っ、ごめんなさいっ」
涙を流し、泣いて許しを乞う有紗。
本性を知らなければ、そんな風に泣いて謝られては許してしまうかもしれない。
でも、
これは演技。
全て計算された事。
「……もう、いいよ。……貴将、私はここには住めないから、後は貴方がどうにかして。私の荷物は明日、貴方が仕事に行ってる間に、纏めるから」
「……分かった」
二人が抱き合っていた部屋になんて住みたくも無いから、私は二人で借りたこのアパートから出ていく事を選ぶ。
とりあえず今日はどこかホテルにでも泊まろうと簡単に荷物を纏めている時、ふと、有紗の方に視線を向けると、未だ涙を拭いながら泣いているのだけど、その口元には、薄ら笑みが浮かんでいる。
ほらね、やっぱり嘘泣き。
思い通りに事が運んで、さぞ気分が良いでしょうね。
私は有紗の本性を知っているから、決して、騙される事は無い。
「それじゃあ、さよなら」
「――亜夢、本当にごめん……。さよなら」
一刻も早くこの場から逃げたかった私はバッグを手にすると、二人を振り返る事無く部屋を後にした。
バタンと玄関のドアが虚しく閉まる。
ああ、何て呆気ない終わり方。
三年も付き合ったのに、こんな終わり方とか、
正直笑えない。
「……これから、どうしよう……」
行き場を失った私は、一体どうすればいいのか分からず、一人途方に暮れていた。
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