11 / 48
本編
10 【日菜子視点】辿りつきたかった壁の向こう側
しおりを挟む
一河さんは今でもサトちゃんが好きだった。
あんな台詞をわざわざ挑発して言わせてしまうなんて……。
私って、なんて馬鹿なの。
あの時、あんなこと言わなければ、そもそも出かけたりしなければ……。
たら、れば、を延々と繰り返し、考えれば考えるほど気持ちは沈んだ。
サトちゃんは、どう思った?
嬉しかった?
そりゃ……。
嬉しかったに決まっているよね。
サトちゃんの気持ちが気になって仕方なかった。
私たちは黙々と原稿を進める。
手は動かしているものの、私の心はここにあらずで。
「ピヨ、ベタはみだしてんぞ」
サトちゃんの声でようやく我にかえった。
「あ、ご……ごめん……」
サトちゃんの方を見る。
サトちゃんは特に気にしたそぶりもなく、原稿にペンを走らせていた。
昨日の出来事なんて何もなかったかのように。
本当に何もなかったのなら良かったのに。
今の私には、原稿の上のハルカを見ることすら辛い。
ましてやクルークを支えるハルカの姿なんて拷問だ。
二人の世界で、ずっとこうして漫画を描いていければそれで幸せだったのに。
いつかサトちゃんが自分ではない誰かと付きあう可能性はあった。
でもそれはまだ先のことだと考えないようにしていた。
それが急に現実味を帯びてきて、一番望まない結末を迎えようとしている。
一河さんに対するトラウマ的な胸の痛みは、呪いのように私を苦しめた。
サトちゃんはまた付き合うのだろうか。
一河さんと。
「サトちゃん」
「あ?」
「由梨おねえちゃんのこと今でも好き?」
思いきって聞いてみる。
「関係ねーだろ、お前には」
答えはそれだけ。
あっさりとしたものだった。
サトちゃんは表情ひとつ変えなかった。
私はサトちゃんから情報を何ひとつ読み取れず困惑した。
「関係あるよ、私はサトちゃんが好きだから」
ダメ押しをしてみる。
この数秒後に傷つくことを知りながら。
「俺は、お前を恋愛対象として見ていない」
胸が潰れても、それでも訊かずにはいられない。
「知ってる。由梨おねえちゃんのことを、すごく好きだったのも知ってる」
サトちゃんは答えない。
「よりを戻す?」
サトちゃんは答えない。
シャッ……シャッ……。
静かな部屋に、サトちゃんが原稿にペンを走らせる音だけが響く。
その間が息苦しく、私を急かすように心臓の音がドクドク鳴った。
二度と見たくない映像が頭の中で何度も蘇って、突如、私の中で何かが切れた。
「や……いやだっ!」
私はサトちゃんに抱きついていた。
机がガタッと音を立て、振動を受けた墨汁が瓶から飛び出す一歩手前でたじろぎ、ゆらゆらと波紋を作った。
「おまえ、原稿が汚れる」
サトちゃんは原稿を机から高く掲げて、胸に腕を回す私を呆れた顔で見下ろした。
サトちゃんは、原稿をものすごく大切にしている。
墨汁を垂らそうものならすごい剣幕で怒る。
いつもなら「バカピヨ!」という怒声と共に飛んでくる手が、今日は飛んでこない。
サトちゃんが落ち込んだ私を気遣ってくれていると、なんとなくわかる。
だから私はおずおずとサトちゃんから手を離した。
「なぁ」
仕事はできないと判断したのか。
サトちゃんは墨汁の蓋を閉めて、ペン先を水につけた。
「クラスにも男子はいんだろ」
クラスに男子はいる。
だから何だというの。
「サトちゃんは、サトちゃんだから好きなんだよ。誰でもいい訳じゃない。わかってるでしょ? わかってないわけないでしょ? 私がサトちゃんのことすごく好きなこと」
愛してるよ、好きだよ、何度も何度も繰り返した。
ふざけながらも口にしてきた。
真っ当にぶつかったって、振られることを知っているから。
本当にぶつかって砕けて、お互いの関係がぎくしゃくするのは嫌だった。
仕事にも影響する。
サトちゃんもそれを望んでいない。
だから今までしなかっただけで。
だけどわかっているだろうと思っていた。
それなのに。
他をあたれとは心外だった。
サトちゃんが原稿を片付けたのを確認して、私はもう一度サトちゃんに抱きつく。
サトちゃんは私を引き剥がすために、私の両肩に手をかけた。
「サトちゃん、一度でいい……一度でいいから! 私を女の子として見てよ!!」
私の泣き叫ぶような悲痛な声に、肩を掴むサトちゃんの力が弱まった。
私はサトちゃんの首の後ろへ、ゆっくりと両手をまわす。
緊張してどうにかなりそうだった。
唇が、手が、震えいてるのが自分でもわかって、恥ずかしくて死んでしまいそうだった。
こんなドラマの真似事みたいなことをして、自分よりずっと年上のサトちゃんに馬鹿にされないか、ぎこちなくて笑われないか心配だった。
でも、笑われたほうがマシだったかもしれない。
突き放されるような行動はなかった。
暴言も吐かれなかった。
それでも私は凍りついた。
キスをしようと顔を近づけたサトちゃんの顔は、困惑を超えて憂いさえ感じさせた。
瞳に決して私を映そうとしない、それは、拒絶の表情だった。
私、と。
そういう関係になるのはそんなに嫌?
そんなに変なこと?
悲しいことなの?
サトちゃん。
その距離が限界だった。
私は自分がどれくらい本気なのかを行動で示そうと思ってやめた。
できなかった。
サトちゃんとの間にある、壁の高さに愕然とした。
勝ち目、なんて。
元から無かったんだ。
生まれた時から、サトちゃんの恋人になれる選択肢なんて存在していなかった。
それはどんなに努力しても一生叶わないのだ。
いや、そんなことはずっと昔からわかっていた。
私はスッとサトちゃんから離れた。
溜まっていた涙は、なんとかこぼれる直前に飲み込んだ。
「ごめんね」
私は小さく謝る。
見返りなんて求めないのではなかったのか。
私はただ技術者として、サトちゃんに必要とされればそれで幸せな筈ではなかったか。
そんな当初の自分の目標を見失うほど、一河さんの存在は大きかったのか。
情けない。
「みゃはは」
とりあえず、おどけて笑ってみることにする。
サトちゃんの表情が少しだけ動いて、私は心底安心した。
「びっくりした? サトちゃんっ。大大大好きだよーって、へへ。知ってるよねー? ごめんね。お仕事中断しちゃった。4話の〆切りも近いんだよね! 頑張ろう!」
そして、私の手がけていた原稿をサトちゃんの元から返してもらった。
サトちゃんもそれ以上何も言わず、再び原稿に向かい始める。
私がふざけて告白すれば、サトちゃんは怒ったような、少しだけ照れたような声で私を牽制する。
それが嬉しくて堪らなかった。
けれど、もう軽々しくサトちゃんのことを好きだと言うのはやめよう。
でないと傍にいさせてもらえなくなる。
心でつぶやく。
これが最後。
サトちゃんが誰を好きでも、この気持ちを殺す日がきても。
俯く瞳の近くて揺れる黒髪を、愛しいと思った。
今目の前にサトちゃんの存在を感じる、この瞬間だけは私のものだ。
私はきっと一生サトちゃんが好きだよ。
誰よりも大好きだよ。
力尽き、元の姿に戻ったフェイは、クルークとハルカに短く礼を言うと命を落とす。
羽も体もボロボロに傷つき永い眠りについたフェイに、私はトーンで影を貼り、柔らかさを表現するためにカッターで削っていく。
せめてフェイには、最後は穏やかな表情でいて欲しいと願った。
あんな台詞をわざわざ挑発して言わせてしまうなんて……。
私って、なんて馬鹿なの。
あの時、あんなこと言わなければ、そもそも出かけたりしなければ……。
たら、れば、を延々と繰り返し、考えれば考えるほど気持ちは沈んだ。
サトちゃんは、どう思った?
嬉しかった?
そりゃ……。
嬉しかったに決まっているよね。
サトちゃんの気持ちが気になって仕方なかった。
私たちは黙々と原稿を進める。
手は動かしているものの、私の心はここにあらずで。
「ピヨ、ベタはみだしてんぞ」
サトちゃんの声でようやく我にかえった。
「あ、ご……ごめん……」
サトちゃんの方を見る。
サトちゃんは特に気にしたそぶりもなく、原稿にペンを走らせていた。
昨日の出来事なんて何もなかったかのように。
本当に何もなかったのなら良かったのに。
今の私には、原稿の上のハルカを見ることすら辛い。
ましてやクルークを支えるハルカの姿なんて拷問だ。
二人の世界で、ずっとこうして漫画を描いていければそれで幸せだったのに。
いつかサトちゃんが自分ではない誰かと付きあう可能性はあった。
でもそれはまだ先のことだと考えないようにしていた。
それが急に現実味を帯びてきて、一番望まない結末を迎えようとしている。
一河さんに対するトラウマ的な胸の痛みは、呪いのように私を苦しめた。
サトちゃんはまた付き合うのだろうか。
一河さんと。
「サトちゃん」
「あ?」
「由梨おねえちゃんのこと今でも好き?」
思いきって聞いてみる。
「関係ねーだろ、お前には」
答えはそれだけ。
あっさりとしたものだった。
サトちゃんは表情ひとつ変えなかった。
私はサトちゃんから情報を何ひとつ読み取れず困惑した。
「関係あるよ、私はサトちゃんが好きだから」
ダメ押しをしてみる。
この数秒後に傷つくことを知りながら。
「俺は、お前を恋愛対象として見ていない」
胸が潰れても、それでも訊かずにはいられない。
「知ってる。由梨おねえちゃんのことを、すごく好きだったのも知ってる」
サトちゃんは答えない。
「よりを戻す?」
サトちゃんは答えない。
シャッ……シャッ……。
静かな部屋に、サトちゃんが原稿にペンを走らせる音だけが響く。
その間が息苦しく、私を急かすように心臓の音がドクドク鳴った。
二度と見たくない映像が頭の中で何度も蘇って、突如、私の中で何かが切れた。
「や……いやだっ!」
私はサトちゃんに抱きついていた。
机がガタッと音を立て、振動を受けた墨汁が瓶から飛び出す一歩手前でたじろぎ、ゆらゆらと波紋を作った。
「おまえ、原稿が汚れる」
サトちゃんは原稿を机から高く掲げて、胸に腕を回す私を呆れた顔で見下ろした。
サトちゃんは、原稿をものすごく大切にしている。
墨汁を垂らそうものならすごい剣幕で怒る。
いつもなら「バカピヨ!」という怒声と共に飛んでくる手が、今日は飛んでこない。
サトちゃんが落ち込んだ私を気遣ってくれていると、なんとなくわかる。
だから私はおずおずとサトちゃんから手を離した。
「なぁ」
仕事はできないと判断したのか。
サトちゃんは墨汁の蓋を閉めて、ペン先を水につけた。
「クラスにも男子はいんだろ」
クラスに男子はいる。
だから何だというの。
「サトちゃんは、サトちゃんだから好きなんだよ。誰でもいい訳じゃない。わかってるでしょ? わかってないわけないでしょ? 私がサトちゃんのことすごく好きなこと」
愛してるよ、好きだよ、何度も何度も繰り返した。
ふざけながらも口にしてきた。
真っ当にぶつかったって、振られることを知っているから。
本当にぶつかって砕けて、お互いの関係がぎくしゃくするのは嫌だった。
仕事にも影響する。
サトちゃんもそれを望んでいない。
だから今までしなかっただけで。
だけどわかっているだろうと思っていた。
それなのに。
他をあたれとは心外だった。
サトちゃんが原稿を片付けたのを確認して、私はもう一度サトちゃんに抱きつく。
サトちゃんは私を引き剥がすために、私の両肩に手をかけた。
「サトちゃん、一度でいい……一度でいいから! 私を女の子として見てよ!!」
私の泣き叫ぶような悲痛な声に、肩を掴むサトちゃんの力が弱まった。
私はサトちゃんの首の後ろへ、ゆっくりと両手をまわす。
緊張してどうにかなりそうだった。
唇が、手が、震えいてるのが自分でもわかって、恥ずかしくて死んでしまいそうだった。
こんなドラマの真似事みたいなことをして、自分よりずっと年上のサトちゃんに馬鹿にされないか、ぎこちなくて笑われないか心配だった。
でも、笑われたほうがマシだったかもしれない。
突き放されるような行動はなかった。
暴言も吐かれなかった。
それでも私は凍りついた。
キスをしようと顔を近づけたサトちゃんの顔は、困惑を超えて憂いさえ感じさせた。
瞳に決して私を映そうとしない、それは、拒絶の表情だった。
私、と。
そういう関係になるのはそんなに嫌?
そんなに変なこと?
悲しいことなの?
サトちゃん。
その距離が限界だった。
私は自分がどれくらい本気なのかを行動で示そうと思ってやめた。
できなかった。
サトちゃんとの間にある、壁の高さに愕然とした。
勝ち目、なんて。
元から無かったんだ。
生まれた時から、サトちゃんの恋人になれる選択肢なんて存在していなかった。
それはどんなに努力しても一生叶わないのだ。
いや、そんなことはずっと昔からわかっていた。
私はスッとサトちゃんから離れた。
溜まっていた涙は、なんとかこぼれる直前に飲み込んだ。
「ごめんね」
私は小さく謝る。
見返りなんて求めないのではなかったのか。
私はただ技術者として、サトちゃんに必要とされればそれで幸せな筈ではなかったか。
そんな当初の自分の目標を見失うほど、一河さんの存在は大きかったのか。
情けない。
「みゃはは」
とりあえず、おどけて笑ってみることにする。
サトちゃんの表情が少しだけ動いて、私は心底安心した。
「びっくりした? サトちゃんっ。大大大好きだよーって、へへ。知ってるよねー? ごめんね。お仕事中断しちゃった。4話の〆切りも近いんだよね! 頑張ろう!」
そして、私の手がけていた原稿をサトちゃんの元から返してもらった。
サトちゃんもそれ以上何も言わず、再び原稿に向かい始める。
私がふざけて告白すれば、サトちゃんは怒ったような、少しだけ照れたような声で私を牽制する。
それが嬉しくて堪らなかった。
けれど、もう軽々しくサトちゃんのことを好きだと言うのはやめよう。
でないと傍にいさせてもらえなくなる。
心でつぶやく。
これが最後。
サトちゃんが誰を好きでも、この気持ちを殺す日がきても。
俯く瞳の近くて揺れる黒髪を、愛しいと思った。
今目の前にサトちゃんの存在を感じる、この瞬間だけは私のものだ。
私はきっと一生サトちゃんが好きだよ。
誰よりも大好きだよ。
力尽き、元の姿に戻ったフェイは、クルークとハルカに短く礼を言うと命を落とす。
羽も体もボロボロに傷つき永い眠りについたフェイに、私はトーンで影を貼り、柔らかさを表現するためにカッターで削っていく。
せめてフェイには、最後は穏やかな表情でいて欲しいと願った。
0
お気に入りに追加
10
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
夕陽を映すあなたの瞳
葉月 まい
恋愛
恋愛に興味のないサバサバ女の 心
バリバリの商社マンで優等生タイプの 昴
そんな二人が、
高校の同窓会の幹事をすることに…
意思疎通は上手くいくのか?
ちゃんと幹事は出来るのか?
まさか、恋に発展なんて…
しないですよね?…あれ?
思わぬ二人の恋の行方は??
*✻:::✻*✻:::✻* *✻:::✻*✻:::✻* *✻:::✻*✻:::✻
高校の同窓会の幹事をすることになった
心と昴。
8年ぶりに再会し、準備を進めるうちに
いつしか二人は距離を縮めていく…。
高校時代は
決して交わることのなかった二人。
ぎこちなく、でも少しずつ
お互いを想い始め…
☆*:.。. 登場人物 .。.:*☆
久住 心 (26歳)… 水族館の飼育員
Kuzumi Kokoro
伊吹 昴 (26歳)… 海外を飛び回る商社マン
Ibuki Subaru

手を伸ばした先にいるのは誰ですか~愛しくて切なくて…憎らしいほど愛してる~【完結】
まぁ
恋愛
ワイン、ホテルの企画業務など大人の仕事、そして大人に切り離せない恋愛と…
「Ninagawa Queen's Hotel」
若きホテル王 蜷川朱鷺
妹 蜷川美鳥
人気美容家 佐井友理奈
「オークワイナリー」
国内ワイナリー最大手創業者一族 柏木龍之介
血縁関係のない兄妹と、その周辺の何角関係…?
華やかな人々が繰り広げる、フィクションです。
愛しくて悲しい僕ら
寺音
ライト文芸
第6回ライト文芸大賞 奨励賞をいただきました。ありがとうございます。
それは、どこかで聞いたことのある歌だった。
まだひと気のない商店街のアーケード。大学一年生中山三月はそこで歌を歌う一人の青年、神崎優太と出会う。
彼女は彼が紡ぐそのメロディを、つい先程まで聴いていた事に気づく。
それは、今朝彼女が見た「夢」の中での事。
その夢は事故に遭い亡くなった愛猫が出てくる不思議な、それでいて優しく彼女の悲しみを癒してくれた不思議な夢だった。
後日、大学で再会した二人。柔らかな雰囲気を持つ優太に三月は次第に惹かれていく。
しかし、彼の知り合いだと言う宮本真志に「アイツには近づかない方が良い」と警告される。
やがて三月は優太の持つ不思議な「力」について知ることとなる。
※第一話から主人公の猫が事故で亡くなっております。描写はぼかしてありますがご注意下さい。
※時代設定は平成後期、まだスマートフォンが主流でなかった時代です。その為、主人公の持ち物が現在と異なります。
心の落とし物
緋色刹那
ライト文芸
・完結済み(2024/10/12)。また書きたくなったら、番外編として投稿するかも
・第4回、第5回ライト文芸大賞にて奨励賞をいただきました!!✌︎('ω'✌︎ )✌︎('ω'✌︎ )
〈本作の楽しみ方〉
本作は読む喫茶店です。順に読んでもいいし、興味を持ったタイトルや季節から読んでもオッケーです。
知らない人、知らない設定が出てきて不安になるかもしれませんが、喫茶店の常連さんのようなものなので、雰囲気を楽しんでください(一応説明↓)。
〈あらすじ〉
〈心の落とし物〉はありませんか?
どこかに失くした物、ずっと探している人、過去の後悔、忘れていた夢。
あなたは忘れているつもりでも、心があなたの代わりに探し続けているかもしれません……。
喫茶店LAMP(ランプ)の店長、添野由良(そえのゆら)は、人の未練が具現化した幻〈心の落とし物(こころのおとしもの)〉と、それを探す生き霊〈探し人(さがしびと)〉に気づきやすい体質。
ある夏の日、由良は店の前を何度も通る男性に目を止め、声をかける。男性は数年前に移転した古本屋を探していて……。
懐かしくも切ない、過去の未練に魅せられる。
〈主人公と作中用語〉
・添野由良(そえのゆら)
洋燈町にある喫茶店LAMP(ランプ)の店長。〈心の落とし物〉や〈探し人〉に気づきやすい体質。
・〈心の落とし物(こころのおとしもの)〉
人の未練が具現化した幻。あるいは、未練そのもの。
・〈探し人(さがしびと)〉
〈心の落とし物〉を探す生き霊で、落とし主。当人に代わって、〈心の落とし物〉を探している。
・〈未練溜まり(みれんだまり)〉
忘れられた〈心の落とし物〉が行き着く場所。
・〈分け御霊(わけみたま)〉
生者の後悔や未練が物に宿り、具現化した者。込められた念が強ければ強いほど、人のように自由意志を持つ。いわゆる付喪神に近い。
私と継母の極めて平凡な日常
当麻月菜
ライト文芸
ある日突然、父が再婚した。そして再婚後、たった三ヶ月で失踪した。
残されたのは私、橋坂由依(高校二年生)と、継母の琴子さん(32歳のキャリアウーマン)の二人。
「ああ、この人も出て行くんだろうな。私にどれだけ自分が不幸かをぶちまけて」
そう思って覚悟もしたけれど、彼女は出て行かなかった。
そうして始まった継母と私の二人だけの日々は、とても淡々としていながら酷く穏やかで、極めて平凡なものでした。
※他のサイトにも重複投稿しています。
流星の徒花
柴野日向
ライト文芸
若葉町に住む中学生の雨宮翔太は、通い詰めている食堂で転校生の榎本凛と出会った。
明るい少女に対し初めは興味を持たない翔太だったが、互いに重い運命を背負っていることを知り、次第に惹かれ合っていく。
残酷な境遇に抗いつつ懸命に咲き続ける徒花が、いつしか流星となるまでの物語。
あなたの隣で初めての恋を知る
ななもりあや
BL
5歳のときバス事故で両親を失った四季。足に大怪我を負い車椅子での生活を余儀なくされる。しらさぎが丘養護施設で育ち、高校卒業後、施設を出て一人暮らしをはじめる。
その日暮らしの苦しい生活でも決して明るさを失わない四季。
そんなある日、突然の雷雨に身の危険を感じ、雨宿りするためにあるマンションの駐車場に避難する四季。そこで、運命の出会いをすることに。
一回りも年上の彼に一目惚れされ溺愛される四季。
初めての恋に戸惑いつつも四季は、やがて彼を愛するようになる。
表紙絵は絵師のkaworineさんに描いていただきました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる