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3章 恋の証明
17 カメラ越しの恋
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「あ、浅木先輩! ミスキャンのPRムービー見ましたよー。頑張ってくださいねー」
すれ違い様、面識の無い女の子3人組に声をかけられたので、私は慌てて「あ、よ、宜しくお願いします……」と頭を下げた。
廊下を曲がって女の子たちが見えなくなってから、お堅い自分のリアクションにブンブンと頭を振る。
違う。
ここは『ありがとう、頑張るねっ☆』って可愛く愛嬌を振りまく筈の場面だった……。
脳裏に笑顔でガッツポーズしている自分の姿を浮かべてみたものの、どうにも迷走しているとしか思えない自分のキャラクター性に頭を抱える。
「ネットにPRムービーが上がってから、もう1週間くらい経つよね。見た人結構いるのかな」
ドギマギしながら千夏に話を振ると「再生数とか時々自分で確認してみればいいじゃない」とご尤もな返答をくれる。
「そうだよね……」と頷きつつも、私はなんとなく怖くて未だにムービー自体を見れていなかったりする。
「私もネットに上がった当日に、見たんだけど……」
千夏の言葉に、ビクンと肩が強張る。
ふたりには色々アドバイスをしてもらったけれど、それを上手く生かせていたのか急に不安になる。
友人として距離が近い分、本音で辛辣な感想をくれるのは覚悟の上だ。
ドキドキと高鳴っていく心臓。
ごくり、と喉を鳴らして続く言葉を待てば……。
「良かったよ」
想定外の答えに、肩から力が抜けた。
「ほ……本当?」
「気取らない感じで……同性にも好印象に映ったと思う」
「私も見た、見た。美亜キレイだったよー」
「……あ、ありがとう……」
口々に褒めてくれるふたりに、どんな反応をしたらいいのか戸惑う。
意外だったけれど、ふたりから褒められることは素直に嬉しくて安堵で頬が綻んだ。
でも次の言葉を聞いて、私の顔はそのまま凍りつく。
「良い意味でも、悪い意味でも、すごく目立ってて印象に残ったと思うわよ。あれは……なんていうのかしらね。公開告白?」
公・開・告・白。
そう言われて、じわりと額に汗がにじむ。
PRムービーを撮ったあの日。
あの日の私は正気じゃなかった。
未南に会って、いつも以上に雅のことで頭がいっぱいになってしまって……。
ミスキャンに出ようと思った理由を聞かれた時に、言う筈だったお決まりの台詞は頭から飛んでしまっていた。
気づいた時には心の底にしまってあった、一番本音の部分が言葉になって出ていった。
カメラの向こう側に雅を見ているような気になって、伝えたい気持ちが溢れて出て止められなかった――とは言っても、変な所で頭は理性的で、誰に宛てて言っているのかはわからないように発言した訳なのだけど。
千夏の言葉にウンウン頷きながら、涼子も続く。
「美亜の情熱的な恋愛感が意外だったことも手伝って話題になってたよぉ。相手は誰なんだろうって憶測飛び交ってた。あれだけ美亜に熱愛されている人がいるんだから、雅くんがふられちゃっても仕方が無かったんだって言う人もいてさー。私、何度も訂正に行くべきかと悩んだよ……」
「いや、いい! いい! 相手が特定されても困るから、謎のままで……」
熱くなっていく頬を両手で覆う。
やっぱり当分、自分のPRムービーは見られそうに無い。
「まぁ、PRムービーの美亜が可愛いと思ったのは本当。美亜が一番可愛いのは、きっと雅くんのことを考えている時なんだね」
「……っ」
それ以上は聞きたくなくて、恥ずかしいのを誤魔化すように千夏の背中にしがみつく。
いつか、雅がPRムービーを見ることがあるんだろうか。
私の言葉に気づくだろうか。
そもそもミスキャンに興味あるのかが……疑問だけれど。
すれ違い様、面識の無い女の子3人組に声をかけられたので、私は慌てて「あ、よ、宜しくお願いします……」と頭を下げた。
廊下を曲がって女の子たちが見えなくなってから、お堅い自分のリアクションにブンブンと頭を振る。
違う。
ここは『ありがとう、頑張るねっ☆』って可愛く愛嬌を振りまく筈の場面だった……。
脳裏に笑顔でガッツポーズしている自分の姿を浮かべてみたものの、どうにも迷走しているとしか思えない自分のキャラクター性に頭を抱える。
「ネットにPRムービーが上がってから、もう1週間くらい経つよね。見た人結構いるのかな」
ドギマギしながら千夏に話を振ると「再生数とか時々自分で確認してみればいいじゃない」とご尤もな返答をくれる。
「そうだよね……」と頷きつつも、私はなんとなく怖くて未だにムービー自体を見れていなかったりする。
「私もネットに上がった当日に、見たんだけど……」
千夏の言葉に、ビクンと肩が強張る。
ふたりには色々アドバイスをしてもらったけれど、それを上手く生かせていたのか急に不安になる。
友人として距離が近い分、本音で辛辣な感想をくれるのは覚悟の上だ。
ドキドキと高鳴っていく心臓。
ごくり、と喉を鳴らして続く言葉を待てば……。
「良かったよ」
想定外の答えに、肩から力が抜けた。
「ほ……本当?」
「気取らない感じで……同性にも好印象に映ったと思う」
「私も見た、見た。美亜キレイだったよー」
「……あ、ありがとう……」
口々に褒めてくれるふたりに、どんな反応をしたらいいのか戸惑う。
意外だったけれど、ふたりから褒められることは素直に嬉しくて安堵で頬が綻んだ。
でも次の言葉を聞いて、私の顔はそのまま凍りつく。
「良い意味でも、悪い意味でも、すごく目立ってて印象に残ったと思うわよ。あれは……なんていうのかしらね。公開告白?」
公・開・告・白。
そう言われて、じわりと額に汗がにじむ。
PRムービーを撮ったあの日。
あの日の私は正気じゃなかった。
未南に会って、いつも以上に雅のことで頭がいっぱいになってしまって……。
ミスキャンに出ようと思った理由を聞かれた時に、言う筈だったお決まりの台詞は頭から飛んでしまっていた。
気づいた時には心の底にしまってあった、一番本音の部分が言葉になって出ていった。
カメラの向こう側に雅を見ているような気になって、伝えたい気持ちが溢れて出て止められなかった――とは言っても、変な所で頭は理性的で、誰に宛てて言っているのかはわからないように発言した訳なのだけど。
千夏の言葉にウンウン頷きながら、涼子も続く。
「美亜の情熱的な恋愛感が意外だったことも手伝って話題になってたよぉ。相手は誰なんだろうって憶測飛び交ってた。あれだけ美亜に熱愛されている人がいるんだから、雅くんがふられちゃっても仕方が無かったんだって言う人もいてさー。私、何度も訂正に行くべきかと悩んだよ……」
「いや、いい! いい! 相手が特定されても困るから、謎のままで……」
熱くなっていく頬を両手で覆う。
やっぱり当分、自分のPRムービーは見られそうに無い。
「まぁ、PRムービーの美亜が可愛いと思ったのは本当。美亜が一番可愛いのは、きっと雅くんのことを考えている時なんだね」
「……っ」
それ以上は聞きたくなくて、恥ずかしいのを誤魔化すように千夏の背中にしがみつく。
いつか、雅がPRムービーを見ることがあるんだろうか。
私の言葉に気づくだろうか。
そもそもミスキャンに興味あるのかが……疑問だけれど。
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