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2章 あなたと共に過ごす日々
17 伝える努力・3
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母に嫌われないか、迷惑に思われないか、怯える気持ちはもちろんあるけど。
逃げたくない。
もっと、強くなりたい。
外見も心も、雅とお似合いの恋人だって胸を張りたい。
「落ち着いた……?」
「うん……」
雅の背に両手をまわして深呼吸する。
雅にぎゅって抱きしめられると、すごく安心する。
安心ていう感情を抱くのは、恋人としてはどうなんだろう。
思い返せば、雅が私を抱きしめてくれるのは、私を安心させる時ばかりで……。
私のこの条件反射は仕方が無い気もする。
対する雅は、どういう心境で私を抱きしめてくれているんだろう……。
「…………」
おかあさん目線かな。
悔しいけど、そうなんだろうな、やっぱり。
でも、雅は母の代わりにはなれない。
だって、ホッとして幸せな気持ちになった後、胸の厚みにそわそわしてしまう。
そこに私の胸……あたってるんだけどな……。何とも思ってないのかな……。
背中にまわされた腕、胸からお腹に至るまで体が触れあう部分から伝わってくる熱に、心地いいとはまた違う感情を抱く。
頭を撫でる雅の指先が耳から首筋に触れると、思わず体がピクッと反応する。
「……あんまり落ち着けなくなってきた……」
意識し出すとキリが無くて、ひとりでちょっとやらしい気持ちになってきた自分がアホらしくて。
ぐぐ、と両手で雅を押しのけて、そっぽ向く。
「なんで?」
瞳を覗き込まれ、ぐぬっ、と思わず息を飲む。
雅が私のことを色々考えて優しくしてくれてるんだって、わかっちゃいるけど。
こうして私をフォローしている間は女として見ていないんだって、痛いほどわかる。
せめて女に見えていないんじゃなくて、意識しないよう努力してくれてるんだと思いたい……。
ちら、と恨めしく雅を見る。
私の視線に気付いた雅は、私の複雑な心境にまでは気付かずに、優しく笑う。
「好きだよ」
くっ。
恋人同士がキスするような距離で、キスのひとつもしないまま平然と言ってのけるんだから堪ったもんじゃない。
私はもう全然平気じゃないのに。
それでも今度は耳を塞いだり、わーわー騒ぐことはせず、下唇を噛みながらコクンと頷いて見せた。
今の私は、絶対変な顔してる。
「もしかして『好き』って言われるの嫌? 軽いとか、思ってる?」
眉根を寄せて複雑な顔をしている私に、不安になった雅が訊いた。
私はその問いに頭を振って答え、これ以上顔を見られているのが耐えられなくなって、雅の胸に顔を埋めた。
「『好き』って言ってもらうたびに、恥ずかしくて……。私にはもったいない言葉だって思ってた。でも、すごく嬉しかった……」
たどたどしくも素直に思っていることを伝える。
恥ずかしいことを言っている自覚はあったけど、雅もやっぱり恥ずかしかったのかもしれない。
見えてなくても頬を掻く動作をしたのが何となくわかった。
「美亜が自信を持てるまで、何度でも言うから……」
「ううん」
私は首を横に振る。
「これからは、ご褒美にするよ。私が頑張れたら『好き』って言って?」
的外れでも、不器用でも。
雅とお似合いの恋人になれるよう、ひとつひとつ頑張るから。
前を向いて、輝くから。
「そしたら……、もっと好きになってくれる?」
私も、何度だって言うから。
「雅……」
私はようやく顔を上げて、改めて雅と向き直った。
「……好きだよ……」
いつも淡々と喋る声が、震えて掠れて艶っぽくなるのが自分でわかって恥ずかしかった。
でも声にすると、音が耳や骨を通じて頭に直接響く、届くから。
ひとりで頭の中で考えるより、ずっとドキドキして気持ちが強くなっていく気がする。
今度は目を逸らさずに、雅の瞳に私が映って頬がじわじわと赤く染まっていくのを間近で見てた。
「……え……? な、え。本当にどうしたの? 美亜」
狼狽している雅に、こらえきれず笑みが零れる。
「ふふ……」
やっと少しだけ、優越感。
慌てる私を見ている雅もこんな気持ちになってたのかな。
私は自分が思っていたより、ずっと単純な生き物だったのかもしれない。
くすぐったいようなふわふわした不思議な気持ち。
幸せは、愛され満たされた時にだけ感じるものだと思ってた。
だけど、違うんだね。
雅の肩にトンと額を乗せる。
雅が好き、それだけで。
なんでもできるような気がするよ。
逃げたくない。
もっと、強くなりたい。
外見も心も、雅とお似合いの恋人だって胸を張りたい。
「落ち着いた……?」
「うん……」
雅の背に両手をまわして深呼吸する。
雅にぎゅって抱きしめられると、すごく安心する。
安心ていう感情を抱くのは、恋人としてはどうなんだろう。
思い返せば、雅が私を抱きしめてくれるのは、私を安心させる時ばかりで……。
私のこの条件反射は仕方が無い気もする。
対する雅は、どういう心境で私を抱きしめてくれているんだろう……。
「…………」
おかあさん目線かな。
悔しいけど、そうなんだろうな、やっぱり。
でも、雅は母の代わりにはなれない。
だって、ホッとして幸せな気持ちになった後、胸の厚みにそわそわしてしまう。
そこに私の胸……あたってるんだけどな……。何とも思ってないのかな……。
背中にまわされた腕、胸からお腹に至るまで体が触れあう部分から伝わってくる熱に、心地いいとはまた違う感情を抱く。
頭を撫でる雅の指先が耳から首筋に触れると、思わず体がピクッと反応する。
「……あんまり落ち着けなくなってきた……」
意識し出すとキリが無くて、ひとりでちょっとやらしい気持ちになってきた自分がアホらしくて。
ぐぐ、と両手で雅を押しのけて、そっぽ向く。
「なんで?」
瞳を覗き込まれ、ぐぬっ、と思わず息を飲む。
雅が私のことを色々考えて優しくしてくれてるんだって、わかっちゃいるけど。
こうして私をフォローしている間は女として見ていないんだって、痛いほどわかる。
せめて女に見えていないんじゃなくて、意識しないよう努力してくれてるんだと思いたい……。
ちら、と恨めしく雅を見る。
私の視線に気付いた雅は、私の複雑な心境にまでは気付かずに、優しく笑う。
「好きだよ」
くっ。
恋人同士がキスするような距離で、キスのひとつもしないまま平然と言ってのけるんだから堪ったもんじゃない。
私はもう全然平気じゃないのに。
それでも今度は耳を塞いだり、わーわー騒ぐことはせず、下唇を噛みながらコクンと頷いて見せた。
今の私は、絶対変な顔してる。
「もしかして『好き』って言われるの嫌? 軽いとか、思ってる?」
眉根を寄せて複雑な顔をしている私に、不安になった雅が訊いた。
私はその問いに頭を振って答え、これ以上顔を見られているのが耐えられなくなって、雅の胸に顔を埋めた。
「『好き』って言ってもらうたびに、恥ずかしくて……。私にはもったいない言葉だって思ってた。でも、すごく嬉しかった……」
たどたどしくも素直に思っていることを伝える。
恥ずかしいことを言っている自覚はあったけど、雅もやっぱり恥ずかしかったのかもしれない。
見えてなくても頬を掻く動作をしたのが何となくわかった。
「美亜が自信を持てるまで、何度でも言うから……」
「ううん」
私は首を横に振る。
「これからは、ご褒美にするよ。私が頑張れたら『好き』って言って?」
的外れでも、不器用でも。
雅とお似合いの恋人になれるよう、ひとつひとつ頑張るから。
前を向いて、輝くから。
「そしたら……、もっと好きになってくれる?」
私も、何度だって言うから。
「雅……」
私はようやく顔を上げて、改めて雅と向き直った。
「……好きだよ……」
いつも淡々と喋る声が、震えて掠れて艶っぽくなるのが自分でわかって恥ずかしかった。
でも声にすると、音が耳や骨を通じて頭に直接響く、届くから。
ひとりで頭の中で考えるより、ずっとドキドキして気持ちが強くなっていく気がする。
今度は目を逸らさずに、雅の瞳に私が映って頬がじわじわと赤く染まっていくのを間近で見てた。
「……え……? な、え。本当にどうしたの? 美亜」
狼狽している雅に、こらえきれず笑みが零れる。
「ふふ……」
やっと少しだけ、優越感。
慌てる私を見ている雅もこんな気持ちになってたのかな。
私は自分が思っていたより、ずっと単純な生き物だったのかもしれない。
くすぐったいようなふわふわした不思議な気持ち。
幸せは、愛され満たされた時にだけ感じるものだと思ってた。
だけど、違うんだね。
雅の肩にトンと額を乗せる。
雅が好き、それだけで。
なんでもできるような気がするよ。
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