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2章 あなたと共に過ごす日々
03 彼女たちの恋・3
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問題無いでしょ! という顔のふたりを前に。
頭からネジが数本抜け落ちました、というか。
意識が遥か彼方まで飛んでいきました、というか。
なんというか……。
衝撃的……。
「あ、もしかして美亜。まだ最初の頃に言ってたやつに拘ってるの?」
「え? 何々?」
「美亜ったらさ、雅くんと付き合って早々『私、雅に恋してないし』とか『恋が知りたいから付き合ってみる』とか失礼なこと言ってたじゃん」
「あぁ……言ってたね。ちょっと呆気にとられたけど」
「う……うぅ……」
失礼。確かに失礼だったけど。
それがあの時の私の正直な気持ちだったんだから仕方ないじゃない。
「恋愛を前提に付き合ってください! って意味わかんないよね。笑えるよねー」
そう言う涼子に、ちょっとムッとしてしまう。
私としてはそれでも精一杯の誠意なのだ。
「でもね。ちゃんと雅には言った! 正直に言った! 私は恋愛感情がよくわかんないって。私と一緒にいても馬鹿を見るかもって。でも雅は、私に雅と一緒にいたい気持ちがあれば、それでいいって言ってくれた。だから私も恋愛感情がわかるまではせめて……」
「まどろっこしいなぁ。美亜は」
最後まで言い終わらないうちに、涼子にバッサリと切り捨てられた。
「キスとか頻繁にしてる?」
「……え……や、いや……」
「キスとかハグとかエッチしてるうちに自然にスイッチって入んないかなぁ」
え? えぇ?
そういう力技も……有りなの……?
「や……う……どう、だろう。あんまり積極的でも雅に拒まれそうだし……」
「えー。絶対に拒否らないと思うけどなぁ~」
ありえないよー、という涼子に、いや、ありえるんだよ……と心の中でツッコミを入れる。
「拒まれたとしたら美亜の誘い方が悪かったわね」
「!?」
千夏が意味深に口にすると、「絶対に拒否らない」なんて言ってた涼子も「あぁ……」とあっさり同意した。
「え、え?」
まぁ確かに。
雅がその気にならない理由があるとしたら、私が心に整理をつけるのを待ってくれているからだ。
私の問題……なら。
誘い方を変えれば……いい、の……?
初対面で一線越えた、あの頃と今とでは状況が違う。
そういうシーンでも、雅は私のことを「好きだよ」とか言うんだろうか。
今度はミナとして、ではなく?
私を見て?
「……む、無理。無理。無理無理無理…………」
ぶわっと額から汗が噴き出た。
雅にそんなこと言われて色々されたら死ぬ気がする。
「え、何。美亜、赤面してるの?」
千夏に顔を覗きこまれて、顔の温度がまた上がる。
「あ、え? 嘘っ! 初めて見たんだけど! するんだ。こういう反応!」
「あははっ。何考えたの? 美亜ってば、やらしーの」
涼子もニヤニヤしながら、私の頬をプニと人差し指で押す。
代わる代わる千夏と涼子に顔を覗きこまれ、珍しい&面白いものを見たように輝く瞳に、ぐぐっ……と唇を噛む。
「それでも恋愛してませんとか言うんだ!? 美亜は!!」
涼子の言葉に、思わず目が点になった。
「そ……そうなの!? なんか無性に恥ずかしいってことは、そういうことでいいの!?」
「意識してるってことで大いに結構! いいんじゃないのぉっ!?」
興奮した涼子が身を乗り出してきたので、私も引かずに涼子に向かって前のめりになった。
「意識したら、恋ってことにしてもいいの!?」
ヤケになって叫ぶ私に、千夏が「ふたりとも落ち着きなさいよ……」となだめに割って入る。
「ね、美亜。恋愛の線引きなんて結局どこかで自分でつけるものだから。目に見えるものじゃないから、正しいとか、間違ってるとか、そんなのきっと無いんだよ。誰かがそう言ったから、とか。一般的にどうだから、とか。そういうので恋だって思わなくていいと思うよ」
「……ん……」
そう言われて下を向く。
本当、そうだ。
自分のことなのに。
自分で答えを出すしかないのに。
私が誰かの恋愛に対して、有りだの無しだのなんて、偉そうに言う資格ないのに。
しゅん……と自己嫌悪する私に、千夏は人差し指をピンと立てて満面の笑みで言った。
「まぁ。何だかんだ言って美亜が雅くんのこと大好きなのは、わかったけどね☆」
私は首が痛くなるくらい勢いをつけて顔を上げる。
「!?」
「まぁ、その好きが恋なのかは私も知らないけどね」
「…………う……ぅ」
「好きなんでしょ?」
「え……」
「大好きなんでしょ?」
「え……あ、だ、だって、そりゃ……」
ぷぷ……と横で笑いを堪える涼子と、私の答えを待ちながら意地悪く笑っている千夏に居た堪れなくなる。
「なんで私がふたりに告白しなくちゃいけないのよ!」
私たちのガールズトークはタチが悪い。
いつも私が一方的にふたりに弄ばれるんだから。
角田さん、開原さん、早く戻って来て。ふたりを止めて……。
頭からネジが数本抜け落ちました、というか。
意識が遥か彼方まで飛んでいきました、というか。
なんというか……。
衝撃的……。
「あ、もしかして美亜。まだ最初の頃に言ってたやつに拘ってるの?」
「え? 何々?」
「美亜ったらさ、雅くんと付き合って早々『私、雅に恋してないし』とか『恋が知りたいから付き合ってみる』とか失礼なこと言ってたじゃん」
「あぁ……言ってたね。ちょっと呆気にとられたけど」
「う……うぅ……」
失礼。確かに失礼だったけど。
それがあの時の私の正直な気持ちだったんだから仕方ないじゃない。
「恋愛を前提に付き合ってください! って意味わかんないよね。笑えるよねー」
そう言う涼子に、ちょっとムッとしてしまう。
私としてはそれでも精一杯の誠意なのだ。
「でもね。ちゃんと雅には言った! 正直に言った! 私は恋愛感情がよくわかんないって。私と一緒にいても馬鹿を見るかもって。でも雅は、私に雅と一緒にいたい気持ちがあれば、それでいいって言ってくれた。だから私も恋愛感情がわかるまではせめて……」
「まどろっこしいなぁ。美亜は」
最後まで言い終わらないうちに、涼子にバッサリと切り捨てられた。
「キスとか頻繁にしてる?」
「……え……や、いや……」
「キスとかハグとかエッチしてるうちに自然にスイッチって入んないかなぁ」
え? えぇ?
そういう力技も……有りなの……?
「や……う……どう、だろう。あんまり積極的でも雅に拒まれそうだし……」
「えー。絶対に拒否らないと思うけどなぁ~」
ありえないよー、という涼子に、いや、ありえるんだよ……と心の中でツッコミを入れる。
「拒まれたとしたら美亜の誘い方が悪かったわね」
「!?」
千夏が意味深に口にすると、「絶対に拒否らない」なんて言ってた涼子も「あぁ……」とあっさり同意した。
「え、え?」
まぁ確かに。
雅がその気にならない理由があるとしたら、私が心に整理をつけるのを待ってくれているからだ。
私の問題……なら。
誘い方を変えれば……いい、の……?
初対面で一線越えた、あの頃と今とでは状況が違う。
そういうシーンでも、雅は私のことを「好きだよ」とか言うんだろうか。
今度はミナとして、ではなく?
私を見て?
「……む、無理。無理。無理無理無理…………」
ぶわっと額から汗が噴き出た。
雅にそんなこと言われて色々されたら死ぬ気がする。
「え、何。美亜、赤面してるの?」
千夏に顔を覗きこまれて、顔の温度がまた上がる。
「あ、え? 嘘っ! 初めて見たんだけど! するんだ。こういう反応!」
「あははっ。何考えたの? 美亜ってば、やらしーの」
涼子もニヤニヤしながら、私の頬をプニと人差し指で押す。
代わる代わる千夏と涼子に顔を覗きこまれ、珍しい&面白いものを見たように輝く瞳に、ぐぐっ……と唇を噛む。
「それでも恋愛してませんとか言うんだ!? 美亜は!!」
涼子の言葉に、思わず目が点になった。
「そ……そうなの!? なんか無性に恥ずかしいってことは、そういうことでいいの!?」
「意識してるってことで大いに結構! いいんじゃないのぉっ!?」
興奮した涼子が身を乗り出してきたので、私も引かずに涼子に向かって前のめりになった。
「意識したら、恋ってことにしてもいいの!?」
ヤケになって叫ぶ私に、千夏が「ふたりとも落ち着きなさいよ……」となだめに割って入る。
「ね、美亜。恋愛の線引きなんて結局どこかで自分でつけるものだから。目に見えるものじゃないから、正しいとか、間違ってるとか、そんなのきっと無いんだよ。誰かがそう言ったから、とか。一般的にどうだから、とか。そういうので恋だって思わなくていいと思うよ」
「……ん……」
そう言われて下を向く。
本当、そうだ。
自分のことなのに。
自分で答えを出すしかないのに。
私が誰かの恋愛に対して、有りだの無しだのなんて、偉そうに言う資格ないのに。
しゅん……と自己嫌悪する私に、千夏は人差し指をピンと立てて満面の笑みで言った。
「まぁ。何だかんだ言って美亜が雅くんのこと大好きなのは、わかったけどね☆」
私は首が痛くなるくらい勢いをつけて顔を上げる。
「!?」
「まぁ、その好きが恋なのかは私も知らないけどね」
「…………う……ぅ」
「好きなんでしょ?」
「え……」
「大好きなんでしょ?」
「え……あ、だ、だって、そりゃ……」
ぷぷ……と横で笑いを堪える涼子と、私の答えを待ちながら意地悪く笑っている千夏に居た堪れなくなる。
「なんで私がふたりに告白しなくちゃいけないのよ!」
私たちのガールズトークはタチが悪い。
いつも私が一方的にふたりに弄ばれるんだから。
角田さん、開原さん、早く戻って来て。ふたりを止めて……。
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