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10年前というと、彼女はまだ20代、いや10代だろうか。ここまで彼女の心を苦しめた当時の彼女の顔立ちとは、一体どんなものだったのだろう。精一杯当時の彼女を思い浮かべようとしたものの、今よりちょっと童顔な彼女しか想像できなかった。諦めて続きに耳を傾ける。
「はじめは努力していたの。でも、それも嫌になってきちゃって。毎日飲んで歩いてた。飲むのは楽しかった。酔ってひょうきんなことをしているときは、私は注目の的になれた。でも、私はそんなことをして目立ちたい訳じゃなかった。イッキしてわめき散らかして、そんなことをするために東京に来た訳じゃなかった。だから、半年もしないうちにそんな生活はやめたわ。でも、お酒だけはやめられなかった。それで、裏通りにあるスナックなんかにこっそり通ったり……。そして、ある日訪れた店で出会った」
「出会った」
「そう、 私に出会った」
女はその美しい口元に微笑を浮かべた。私は突然強烈な喉の渇きを感じ、慌ててグラスを煽った。が、空のガラスからは溶けた氷が滴るだけだった。それを見た彼女が再び酒を用意し出す。私は軽く頭を下げたのち、並々と注がれたグラスを震えた手で受け取る。
「はじめは努力していたの。でも、それも嫌になってきちゃって。毎日飲んで歩いてた。飲むのは楽しかった。酔ってひょうきんなことをしているときは、私は注目の的になれた。でも、私はそんなことをして目立ちたい訳じゃなかった。イッキしてわめき散らかして、そんなことをするために東京に来た訳じゃなかった。だから、半年もしないうちにそんな生活はやめたわ。でも、お酒だけはやめられなかった。それで、裏通りにあるスナックなんかにこっそり通ったり……。そして、ある日訪れた店で出会った」
「出会った」
「そう、 私に出会った」
女はその美しい口元に微笑を浮かべた。私は突然強烈な喉の渇きを感じ、慌ててグラスを煽った。が、空のガラスからは溶けた氷が滴るだけだった。それを見た彼女が再び酒を用意し出す。私は軽く頭を下げたのち、並々と注がれたグラスを震えた手で受け取る。
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