56 / 63
会って欲しい人
しおりを挟む◆◆◆
いまだ火の手がおさまらぬ王城の門前にて、兵士達が整列していた。
全員が銃を持ち、パワーアーマーを着ている。
先ほどまで戦っていたかのような風貌であり、実際その通りであった。
いまだ銃身が熱を帯びていると錯覚するほどに、兵士達の心はまだ火照っている。
その熱を帯びた視線は、前方に歩み現れたある一人の男に注がれ始めた。
その男は普通の風貌では無かった。
明らかに量産型とは違う、漆黒のパワーアーマーに男は身を包んでいた。
細かな装飾が多く、高級感すら感じられる。
しかし背中に背負った巨大な銃剣がその高級感を打ち消し、黒い威圧感だけを残している。
何者なのか、それを答えるように、兵士の一人が声を上げた。
「ガタノトーア元帥様に敬礼!」
その声が響いた直後、整列している全兵士が一挙一動そろえて敬礼の姿勢を取った。
そんな兵士達の前に立ったガタノトーアは大きく声を響かせた。
「諸君、ご苦労であった! 諸君らはいま、歴史の転換点に立っている! ここが新たな始まりの場であり、それを成しえたのは諸君ら一人一人の奮戦によるものである! ゆえに私は誇りに思う!」
言いながら、ガタノトーアは近くにある壁に視線を誘導するように手で示した。
その壁には、十名ほどの人間が並び立たされていた。
全員が縄で拘束されている。
麻の袋を頭からかぶせられているため顔はわからない。服装から性別だけは判別できる。
ガタノトーアはその者達を手で示したまま、再び声を上げた。
「その誇りと共に、最後の仕事をかつての英雄の末裔(まつえい)である、アーサーに任せたいと思う!」
その声と共に、『かつての英雄の末裔』と称された者が前に歩み出た。
その者もガタノトーアと同じく、量産型とは違うパワーアーマーに身を包んでいた。
ガタノトーアとは対照的な銀色の装甲。中世の騎士を思わせる形状をしている。
兜は着けておらず、端正な顔立ちがあらわになっていた。
その顔は、既に知る誰かに似ていた。性別が違うが、たしかに似ていた。
アーサーは壁の前に立ち、拘束されている者達に向かってライフルを構えた。
そしてアーサーは引き金に指をかけながら思った。
(この場にクラリスがいなくて良かった)と。
こんな姿を妹に晒すことにならなくて本当に良かったと、己をなぐさめながらアーサーは引き金を引いた。
第八話 ちっちゃいはかわいい。かわいいは正義。ゆえにちっちゃいは正義 に続く
0
お気に入りに追加
249
あなたにおすすめの小説

青少年病棟
暖
BL
性に関する診察・治療を行う病院。
小学生から高校生まで、性に関する悩みを抱えた様々な青少年に対して、外来での診察・治療及び、入院での治療を行なっています。
※性的描写あり。
※患者・医師ともに全員男性です。
※主人公の患者は中学一年生設定。
※結末未定。できるだけリクエスト等には対応してい期待と考えているため、ぜひコメントお願いします。


【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
ヤンデレエリートの執愛婚で懐妊させられます
沖田弥子
恋愛
職場の後輩に恋人を略奪された澪。終業後に堪えきれず泣いていたところを、営業部のエリート社員、天王寺明夜に見つかってしまう。彼に優しく慰められながら居酒屋で事の顛末を話していたが、なぜか明夜と一夜を過ごすことに――!? 明夜は傷心した自分を慰めてくれただけだ、と考える澪だったが、翌朝「責任をとってほしい」と明夜に迫られ、婚姻届にサインしてしまった。突如始まった新婚生活。明夜は澪の心と身体を幸せで満たしてくれていたが、徐々に明夜のヤンデレな一面が見えてきて――執着強めな旦那様との極上溺愛ラブストーリー!
魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました
タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。
クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。
死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。
「ここは天国ではなく魔界です」
天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。
「至上様、私に接吻を」
「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」
何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?
【完結・BL】胃袋と掴まれただけでなく、心も身体も掴まれそうなんだが!?【弁当屋×サラリーマン】
彩華
BL
俺の名前は水野圭。年は25。
自慢じゃないが、年齢=彼女いない歴。まだ魔法使いになるまでには、余裕がある年。人並の人生を歩んでいるが、これといった楽しみが無い。ただ食べることは好きなので、せめて夕食くらいは……と美味しい弁当を買ったりしているつもりだが!(結局弁当なのかというのは、お愛嬌ということで)
だがそんなある日。いつものスーパーで弁当を買えなかった俺はワンチャンいつもと違う店に寄ってみたが……────。
凄い! 美味そうな弁当が並んでいる!
凄い! 店員もイケメン!
と、実は穴場? な店を見つけたわけで。
(今度からこの店で弁当を買おう)
浮かれていた俺は、夕飯は美味い弁当を食べれてハッピ~! な日々。店員さんにも顔を覚えられ、名前を聞かれ……?
「胃袋掴みたいなぁ」
その一言が、どんな意味があったなんて、俺は知る由もなかった。
******
そんな感じの健全なBLを緩く、短く出来ればいいなと思っています
お気軽にコメント頂けると嬉しいです
■表紙お借りしました
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる