【完結】オメガの円が秘密にしていること

若目

文字の大きさ
上 下
2 / 63

マッチングアプリ※

しおりを挟む

土曜日の19時。
マスクとメガネで顔の大半を隠した 円まどかは、地下街の広場で人を待っていた。
「キミが『トミーさん』かな?」
マッチングアプリで使っているハンドルネームを呼ばれて、円は振り向いた。
声の主は身長約180センチ前後、歳は35歳前後の男だった。
どこといって特徴のない平べったい顔つきをしているが、清潔感があって、夜の相手としては悪くない気がした。
「そうです。あなたが『えきさん』ですか?」
「うん、そうだよ。早速だけど、ホテル行こうか。あ、先にどっかでごはん食べる?この辺、空いてる店いっぱいあると思うけど。」
「ホテル行きましょう。ボク、早くシたいし…」
円は首に巻いていたスカーフを巻き直すと、えきさんの方へ歩み寄って腕を絡めた。


近くの安いラブホテル。
室内に入るなり、2人は着ているものを全て脱ぎ捨て、ダブルベッドに上がった。
バッグやアクセサリーなんかも部屋の隅に放ってしまう。
「キミ、オメガだったんだね。」
生まれたままの姿になった円を見たえきさんが、首につけられた拘束具を指差す。
フェロモンで暴走したアルファに同意なく番にされないように、オメガがつける革の首輪だ。
「そうです、嫌ですか?」
「いや、こんなところでオメガとデキるなんて思ってなかったから、むしろ嬉しいよ。それも、こんな若くて可愛い子と。どうしてマスクしてるの?顔キレイなのに。」
「別にいいじゃないですか。そんなことより、早く楽しみましょう?」
円は質問には答えず、わざとらしく首をかしげて、かわい子ぶったポーズをとった。
「……それもそうだね。」
えきさんの瞳に、異常なほどの情欲の光が宿る。

──これなら、激しくシてもらえそう。

強い欲情の視線を浴びると、発情期なのも手伝ってか、円は腰の奥から甘い疼きを感じた。



「んっ、んふ…」
唾液を絡めて、えきさんの男根に浮いた血管をなぞるように舌を這わす。
そうすると、汗とその他の分泌液が入り混じったような、むわっとした動物的な匂いが鼻腔をくすぐってきた。
それがまた、円を昂らせてくる。
「ああ…すごくいいよ。」
ダブルベッドの上に寝転がって、円に奉仕されるがままになっているえきさんが、感嘆の声を漏らした。
「ふあっ…痛かったら、言ってくださいね。」
円は男根から口を一旦離して頬擦りしながら、えきさんの顔を上目遣いに見た。
「痛いなんて、そんな…気持ちいいよ、すごく上手。」
えきさんがため息をこぼすと同時に、円の頬にひっついた男根が膨張した。
想像以上に膨れあがった男根が胎内で暴れてくれるのを想像すると、円はいてもたってもいられなくなった。
「ねえ…ボク、もう我慢できない。挿れさせて?」
円は奉仕をやめて、えきさんの体に馬乗りになった。
「今日のオレ、ツイてるな。」
円の態度に気を良くしたえきさんが、ニンマリと笑った。
円は避妊具をえきさんの男根に被せると、尻たぶを左右に開いて、ゆっくりゆっくり腰を落としていった。
ずちゅ、ずちゅ、と生々しい音を立てながら、男根が肉襞を押し割って胎内に挿し入っていく。
「ああッ…ここっ、いいッ」
先端が欲しいところにツンッと当たると、これでもかというほどの快感が背筋を駆け巡ってくる。
「あっ…すごい、これ、すきっ、ああっ…いいッ、」
円は自ら腰を揺らして、ひたすら快楽を貪った。
男根が肉襞を穿つ感触がたまらない。
最奥を突かれるたびに、意図せず喘ぎ声が漏れてくる。
「キミ、大人しそうな顔して、エッチだな。最高だよ…」
えきさんが円の細い腰を掴んで、上下に揺すぶる。
彼も結構に興奮しているらしい。
男根が胎内でさらに膨張するのを感じて、円の快感が強まっていく。
「あんッ、そんな、深いとこ、ダメえ…」
「スッゴい締まるよ、いいね…」
すっかり熱に浮かされたえきさんが上半身を起こして、円の乳首に吸い付いた。
尖らせた舌先でツン、ツン、と乳頭を突かれると気持ちがよくて、射精感が込み上げてくる。
「あっ、アッ…むね、吸いながらはダメぇ…だめっ、もう、イクぅ!」
「オレも、もう限界。出すよ。」
円が絶頂を迎えると、えきさんも一瞬遅れて達した。


「アレ?1枚多いけど…」
事が終わった後、貰った万札の枚数を数えた円は、えきさんに確認を促した。
「思ったよりずっとヨかったから、オマケだよ。」
しわくちゃになったシーツの上、うつ伏せに寝転がったえきさんが満足げな顔で円に微笑みかけた。
「……ありがとうございます。」
円はバッグから財布を取り出し、万札をその中に入れた。
「あと、ホテル代も払っとくよ」
「いいんですか?そんなに…」
「うん、こんなところでオメガとデキるなんて思わなかったし。キミ、何でこんなことしてるの?あ…嫌なら、答えなくていいからね。」
尋ねてから、えきさんは「しまった!」というような顔をして、あわてて取り繕った。
「ボク、あまりお金無くて…保険があっても薬代がバカにならないから、発情期はこうして過ごしてるんです。」
円はなるだけ哀れっぽい表情を作って、あらかじめ用意していた逃げ口上で答えた。
「そうかい。早くいい番が見つけるといいね。君なら、お金持ちでイケメンのアルファが見つかると思う。」
えきさんの声に、同情の色が滲む。
どうやら先ほどの口上は通用したらしい。
「やだなあ、ボクみたいなのじゃ無理ですよ。」
「ええー、そんなことないよお。」
えきさんが呆けた顔で笑ってみせる。
「お金持ちでイケメンのアルファは、いい人がたくさんいますよ。」
「あー、まあね。アルファの中にはオメガの人を何人も囲ってる人がいるみたいだし。キミ若いから知らないだろうね。昔さ、それで揉めて刺された人がいたんだよ。何人ものオメガを番にして囲って、何十人も子ども産ませて、それで本妻に恨まれて、旦那のアルファをめった刺し!ああ、怖い怖い。そういうのに遭遇するかもって考えたら、ある意味ベータで良かったよ。」
えきさんは大袈裟に体を震わせた。
「そうですか…」
円は何とも思っていないようなフリをしたが、忌々しい記憶が蘇ってきて、気分が悪くなった。

──この男、よく見たら体格がアイツに似てる…

ベッドでうつ伏せに寝ているえきさんと、血まみれになって床に倒れていた記憶の中の「アイツ」とが見事に重なって、気分が降下した円は口内で軽く歯ぎしりした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

青少年病棟

BL
性に関する診察・治療を行う病院。 小学生から高校生まで、性に関する悩みを抱えた様々な青少年に対して、外来での診察・治療及び、入院での治療を行なっています。 ※性的描写あり。 ※患者・医師ともに全員男性です。 ※主人公の患者は中学一年生設定。 ※結末未定。できるだけリクエスト等には対応してい期待と考えているため、ぜひコメントお願いします。

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

ヤンデレエリートの執愛婚で懐妊させられます

沖田弥子
恋愛
職場の後輩に恋人を略奪された澪。終業後に堪えきれず泣いていたところを、営業部のエリート社員、天王寺明夜に見つかってしまう。彼に優しく慰められながら居酒屋で事の顛末を話していたが、なぜか明夜と一夜を過ごすことに――!? 明夜は傷心した自分を慰めてくれただけだ、と考える澪だったが、翌朝「責任をとってほしい」と明夜に迫られ、婚姻届にサインしてしまった。突如始まった新婚生活。明夜は澪の心と身体を幸せで満たしてくれていたが、徐々に明夜のヤンデレな一面が見えてきて――執着強めな旦那様との極上溺愛ラブストーリー!

壁乳

リリーブルー
BL
俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。 (作者の挿絵付きです。)

魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました

タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。 クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。 死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。 「ここは天国ではなく魔界です」 天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。 「至上様、私に接吻を」 「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」 何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?

【完結・BL】胃袋と掴まれただけでなく、心も身体も掴まれそうなんだが!?【弁当屋×サラリーマン】

彩華
BL
 俺の名前は水野圭。年は25。 自慢じゃないが、年齢=彼女いない歴。まだ魔法使いになるまでには、余裕がある年。人並の人生を歩んでいるが、これといった楽しみが無い。ただ食べることは好きなので、せめて夕食くらいは……と美味しい弁当を買ったりしているつもりだが!(結局弁当なのかというのは、お愛嬌ということで) だがそんなある日。いつものスーパーで弁当を買えなかった俺はワンチャンいつもと違う店に寄ってみたが……────。 凄い! 美味そうな弁当が並んでいる!  凄い! 店員もイケメン! と、実は穴場? な店を見つけたわけで。 (今度からこの店で弁当を買おう) 浮かれていた俺は、夕飯は美味い弁当を食べれてハッピ~! な日々。店員さんにも顔を覚えられ、名前を聞かれ……? 「胃袋掴みたいなぁ」 その一言が、どんな意味があったなんて、俺は知る由もなかった。 ****** そんな感じの健全なBLを緩く、短く出来ればいいなと思っています お気軽にコメント頂けると嬉しいです ■表紙お借りしました

処理中です...