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結婚生活初日
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総治郎の自宅は高級住宅街の真ん中に位置する3階建ての一軒家だ。
20畳のリビングに、9畳の部屋が1つ、6畳の部屋が2つ、4畳の部屋が1つ、トイレが2ヶ所、ウォークインクローゼットが2ヶ所、ホームエレベーターが1基。
コンロが3口あるシステムキッチン、テレビ番組が視聴可能なモニターとジェットバスがついたバスルーム、3台分が駐車可能な車庫。
駅からは徒歩5分の場所に位置しており、駅前周辺は小洒落た飲食店やショッピングモール、デパートが立ち並んでいて、活気にあふれている。
ここは総治郎が起業して、商売が起動に乗り始めた40歳の頃に購入した家で、住んでからもう10年が経つ。
直生からしてみれば、ここが新しい住処となるわけだ。
「必要なものや欲しいものは、全部これで買いなさい。現金が必要になったときは、私に直接言ってくれ」
総治郎は、新しく発行しておいたクレジットカードを直生に渡した。
挙式の翌日の朝、妻に初めて話した内容がこれだった。
「はい…」
総治郎に差し出されたクレジットカードを、直生はおずおずと受け取った。
その声は、変声期をとうの昔に過ぎた成人とは思えないほどに、高くてあどけない。
「今日は都合が悪くて来ていないけど、家のことは、いつも世話になってる家事代行の中野さんに頼むといい。
電話の横に彼女が所属してる家事代行サービス会社の電話番号が貼ってあるから、家のことで困ったことがあったら、来て欲しい日時を言って呼びなさい。
優秀な人だから、きっと頼りになるぞ」
「はい」
総治郎が部屋の隅にある電話台を指さすと、直生がそれに応えるように、指さした方向を向き、家政婦の電話番号を確認した。
「ほかに何か、聞いておきたいことはないか?」
「……ありません」
「そうか、じゃあ行ってくる」
言うと総治郎は廊下を伝って、玄関まで歩いていく。
「…はい」
直生がペコリとしおらしい態度で頭を下げると、短くて癖のある蒸栗色の髪がふわりと揺れた。
その仕草はどことなく上品で、直生の育ちの良さが垣間見える。
「お仕事がんばってくださいね。でも、無理はなさらないで」
玄関の上がり框に腰掛けて靴を履く総治郎の背中に向かって、直生が声をかける。
「ああ…わかってる」
答えながら総治郎は、シューズクローゼットのドアノブにかけられた靴べらを手に取った。
「今日は何時ごろに帰られるんですか?」
「あー…今日は泊まりがけの仕事だから、帰ることはできない」
靴べらを踵に差し込みながら、総治郎は答えた。
「…そうなんですね」
「うん、だから、今日一日は私に構わず好きに過ごしなさい。この辺りはオシャレで美味い店がたくさんあるし、映画館やフィットネスジムやブティックなんかもたくさんあるから、行ってみるといい」
総治郎は靴べらを引き抜くと、シューズクローゼットのドアノブにかけ戻した。
「わかりました。いってらっしゃい、総治郎さん」
「ああ、いってくる」
玄関ドアを開けて、総治郎は家を出た。
20畳のリビングに、9畳の部屋が1つ、6畳の部屋が2つ、4畳の部屋が1つ、トイレが2ヶ所、ウォークインクローゼットが2ヶ所、ホームエレベーターが1基。
コンロが3口あるシステムキッチン、テレビ番組が視聴可能なモニターとジェットバスがついたバスルーム、3台分が駐車可能な車庫。
駅からは徒歩5分の場所に位置しており、駅前周辺は小洒落た飲食店やショッピングモール、デパートが立ち並んでいて、活気にあふれている。
ここは総治郎が起業して、商売が起動に乗り始めた40歳の頃に購入した家で、住んでからもう10年が経つ。
直生からしてみれば、ここが新しい住処となるわけだ。
「必要なものや欲しいものは、全部これで買いなさい。現金が必要になったときは、私に直接言ってくれ」
総治郎は、新しく発行しておいたクレジットカードを直生に渡した。
挙式の翌日の朝、妻に初めて話した内容がこれだった。
「はい…」
総治郎に差し出されたクレジットカードを、直生はおずおずと受け取った。
その声は、変声期をとうの昔に過ぎた成人とは思えないほどに、高くてあどけない。
「今日は都合が悪くて来ていないけど、家のことは、いつも世話になってる家事代行の中野さんに頼むといい。
電話の横に彼女が所属してる家事代行サービス会社の電話番号が貼ってあるから、家のことで困ったことがあったら、来て欲しい日時を言って呼びなさい。
優秀な人だから、きっと頼りになるぞ」
「はい」
総治郎が部屋の隅にある電話台を指さすと、直生がそれに応えるように、指さした方向を向き、家政婦の電話番号を確認した。
「ほかに何か、聞いておきたいことはないか?」
「……ありません」
「そうか、じゃあ行ってくる」
言うと総治郎は廊下を伝って、玄関まで歩いていく。
「…はい」
直生がペコリとしおらしい態度で頭を下げると、短くて癖のある蒸栗色の髪がふわりと揺れた。
その仕草はどことなく上品で、直生の育ちの良さが垣間見える。
「お仕事がんばってくださいね。でも、無理はなさらないで」
玄関の上がり框に腰掛けて靴を履く総治郎の背中に向かって、直生が声をかける。
「ああ…わかってる」
答えながら総治郎は、シューズクローゼットのドアノブにかけられた靴べらを手に取った。
「今日は何時ごろに帰られるんですか?」
「あー…今日は泊まりがけの仕事だから、帰ることはできない」
靴べらを踵に差し込みながら、総治郎は答えた。
「…そうなんですね」
「うん、だから、今日一日は私に構わず好きに過ごしなさい。この辺りはオシャレで美味い店がたくさんあるし、映画館やフィットネスジムやブティックなんかもたくさんあるから、行ってみるといい」
総治郎は靴べらを引き抜くと、シューズクローゼットのドアノブにかけ戻した。
「わかりました。いってらっしゃい、総治郎さん」
「ああ、いってくる」
玄関ドアを開けて、総治郎は家を出た。
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