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一抹の不安
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五井とて射精したばかりで怠いには怠いのだけど、書きかけの原稿がまだある以上、寝こけてはいられない。
「うーん…」
デスク上のパソコン画面を睨みながら、五井はストーリーを考えていた。
しかし、なかなかいいアイデアは出てこない。
考えても考えても何も出てこない。
そうこうしているうち、脱衣所からピーッ、ピーッという音が聞こえてきた。
洗濯した服が乾燥したのを知らせる音だ。
五井は脱衣所に向かうと、男の子が着ていた服と、放ってあったバッグをすべてカゴに入れた。
カゴを持ったまま寝室に行き、ドアを開けると、規則正しい寝息が聞こえてきた。
どうやら、男の子はまだ寝入っているらしい。
五井は何とは無しに、男の子の顔をそっと覗き込んでみた。
長いまつ毛に縁取られた目、シミひとつ見当たらない白い肌、ほんのりピンクに染まった頬に、丸みを帯びたフェイスライン。
改めて見ると、本当に子どもみたいな顔をしている。
━━この子、ホントに大学生だよな?
今さらながら不安になってきた五井は、持っていたカゴを床に置いて、男の子のバッグを手に取った。
そして、一瞬だけ躊躇った後で、男の子のバッグの中を漁った。他人様の荷物を勝手に開いて探るなんて、人としてどうかとは思うが、今はそれどころではない。
どうしても確認しなければならないことがあるのだ。
男の子の財布を発見した五井は、カードポケットの中を血眼になって捜索した。
すると、目当ての物はすぐに見つかった。
男の子の学生証だ。
ここからそう遠くない大学の名前と学年が印字されているのが、老眼が始まったばかりの五井の目にもハッキリと確認できた。
━━ホントに成人だったか…
ホッとした五井は、学生証を財布のカードポケットにしまって、バッグの中に入れた。
男の子のバッグをその場に置いて、五井はもう一度、男の子の顔を見た。
初めて見たときから思っていたが、この子はあまり大学生らしくない。
服装も髪型も、どことなく垢抜けないし地味過ぎる。
ついこないだまで高校生だったことを差し引いても、まだまだあどけなさが残っている。
五井は10代の若者と関わる機会など無いが、さすがにここまで童顔の大学生は稀有だということはわかる。
何なら、今どきの若い子はみんな大人っぽいという気さえしていた。
街を歩いているときにすれ違う学生服の集団はどの子も大人びていて、ひょっとしたらコスプレ感覚で制服を着ている成人なのではないかと疑ってしまうほどだ。
だから、この男の子はいまどき珍しいタイプなのだと思う。
良く言えば素朴で悪く言えば芋臭い。
人によっては毛嫌いするタイプかもしれないが、顔つきは整っているから女性からの受けは悪くないように思う。
もっとも、女性目線での彼の印象など、女性に聞いてみないとわからないが。
ひと安心した五井は男の子のバッグと着替えをその場に置いて、寝室を出た。
━━もしあの子が女の子だったら、読者ウケするタイプだろうな
リビングのデスクに腰掛けた瞬間、五井はそんなことを考えた。
「うーん…」
デスク上のパソコン画面を睨みながら、五井はストーリーを考えていた。
しかし、なかなかいいアイデアは出てこない。
考えても考えても何も出てこない。
そうこうしているうち、脱衣所からピーッ、ピーッという音が聞こえてきた。
洗濯した服が乾燥したのを知らせる音だ。
五井は脱衣所に向かうと、男の子が着ていた服と、放ってあったバッグをすべてカゴに入れた。
カゴを持ったまま寝室に行き、ドアを開けると、規則正しい寝息が聞こえてきた。
どうやら、男の子はまだ寝入っているらしい。
五井は何とは無しに、男の子の顔をそっと覗き込んでみた。
長いまつ毛に縁取られた目、シミひとつ見当たらない白い肌、ほんのりピンクに染まった頬に、丸みを帯びたフェイスライン。
改めて見ると、本当に子どもみたいな顔をしている。
━━この子、ホントに大学生だよな?
今さらながら不安になってきた五井は、持っていたカゴを床に置いて、男の子のバッグを手に取った。
そして、一瞬だけ躊躇った後で、男の子のバッグの中を漁った。他人様の荷物を勝手に開いて探るなんて、人としてどうかとは思うが、今はそれどころではない。
どうしても確認しなければならないことがあるのだ。
男の子の財布を発見した五井は、カードポケットの中を血眼になって捜索した。
すると、目当ての物はすぐに見つかった。
男の子の学生証だ。
ここからそう遠くない大学の名前と学年が印字されているのが、老眼が始まったばかりの五井の目にもハッキリと確認できた。
━━ホントに成人だったか…
ホッとした五井は、学生証を財布のカードポケットにしまって、バッグの中に入れた。
男の子のバッグをその場に置いて、五井はもう一度、男の子の顔を見た。
初めて見たときから思っていたが、この子はあまり大学生らしくない。
服装も髪型も、どことなく垢抜けないし地味過ぎる。
ついこないだまで高校生だったことを差し引いても、まだまだあどけなさが残っている。
五井は10代の若者と関わる機会など無いが、さすがにここまで童顔の大学生は稀有だということはわかる。
何なら、今どきの若い子はみんな大人っぽいという気さえしていた。
街を歩いているときにすれ違う学生服の集団はどの子も大人びていて、ひょっとしたらコスプレ感覚で制服を着ている成人なのではないかと疑ってしまうほどだ。
だから、この男の子はいまどき珍しいタイプなのだと思う。
良く言えば素朴で悪く言えば芋臭い。
人によっては毛嫌いするタイプかもしれないが、顔つきは整っているから女性からの受けは悪くないように思う。
もっとも、女性目線での彼の印象など、女性に聞いてみないとわからないが。
ひと安心した五井は男の子のバッグと着替えをその場に置いて、寝室を出た。
━━もしあの子が女の子だったら、読者ウケするタイプだろうな
リビングのデスクに腰掛けた瞬間、五井はそんなことを考えた。
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