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学校に

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結局、ピノキオはカルロを自身の務める学校へ案内することになった。

もっとも、今日は学校が休みだから門は閉まっているし、校内には誰もいない。
それを説明してもなお、カルロは引き下がらない。

「いつかは我が子を通わす場所ですから、場所ぐらい知っておきたいのです」
理由を聞けば、そんなふうに返された。
「お子様がいらっしゃるので?」
「今はいませんよ。ですが、いつか私も結婚して子どもを持つことがあるかと思うのです。その子どもを学校に通わす日が必ず来る。そのときのために、ここらの子どもが通っている学校を知っておきたいのです。未来の我が子が通う学校を知っておきたいのです」

なるほど、それならまだ納得がいく。
「それに、あなたが勤めるところですからね。なおさら知りたいのです」
この言い分は理解できなかった。
「……左様でございますか」
ピノキオは大雑把に相槌を打った。
金をもらっているし、今後は極力関わらなければ済む話なので、なぜそんなことを言うのかピノキオは聞かなかった。

そんなわけで、ピノキオは人目を気にしながら、学校までカルロを案内してやった。
その間、カルロは異様に機嫌良く話しかけてきて止まらなかった。
カルロが何か楽しそうに話すたびに、ピノキオは大雑把に相槌を打ち、話しかけられては大雑把に相槌を打つを繰り返しながら学校に向かった。

学校に着くと、2人は門の前で立ち止まった。
背の低い門が2人の目の前に、
「こちらです、カルロさん」
「ここが……」
カルロは校門を前にして、ジッと前を見つめていた。

──ガッカリしたんだろうな…

ピノキオはそう思った。
何せ、この学校は古くから建っているだけあって、あちこちにガタがきている。

門は錆びて赤茶色に変色しているし、ところどころ塗装が剥げている。
門の前には猫の額程度の花壇があるけれど、そこには何も植わっておらず、殺風景なことこの上ない。

校門の向こうにある校舎も同様だ。
木造二階建ての古ぼけた校舎の壁は、経年劣化のためか変色しているし、うっすらヒビも入っている。

きっと、カルロはがっかりしたに違いない。
将来、まだ見ぬ我が子をこんなところに通わせるとなんて、考えたくもないだろう。
ピノキオはそう思って、隣に立つカルロの顔をちらりと見た。

ピノキオの予想とは裏腹に、カルロは異様なまでに真剣な表情で、門の向こうにある校舎を見つめて、何やらブツブツ呟く呟いていた。

「…カルロさん?」
「……ああ!これは失敬、ピノキオさん。すみません、考えごとをしておりました!」
不審に思ったピノキオが声をかけると、カルロがハッとしたような顔をした。

「考え事?」
こんな寂れた建物を前にして、何をそんなに考えることがあるのだろう。

「ええ…まあ……あの、次は、町役場のほうへ案内してはくれませんか?あそこに少しばかり用があるのです」
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