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第2編 消えた人々の行方

妹たち

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「え……妹?」
ジャンティーがホーっとしたままモールの方へ顔を向ける。
「そうだよ。アヴァールとリュゼは?どうしてるんだ?いまも一緒にいるのか?どこかの家に嫁いだのか?」
「…何言ってるの?ぼくに……妹なんていないよ?」
「は?」
今度はモールが戸惑う番だった。

──妹なんていない?どういうことだ?

わけがわからなかった。
以前は毎日のように話していた妹たちのことを、たった半年の間に忘れるなどということがあるだろうか。
わがままでまともに働かない妹たちに手を焼いているといった旨の話はしていた。
ひょっとして、そのあたりでいろいろと揉めてしまって、縁を切ったのだろうか?
仲違いして絶縁した家族をもうすでにいない者として扱うなんて、珍しくもなんともない。

だとしたら、ジャンティーの2人の妹のどちらかと結婚してジャンティーに取り入る、なんてことはもうできないだろう。
モールが悔しさに歯ぎしりしているうちに、ジャンティーはまたベッドに横たわって寝てしまった。
規則正しい寝息が、モールの耳に届いてくる。

「んん…」
ジャンティーが身じろぎすると、着ているシャツの合わせから赤く色づいた鎖骨が覗けた。
それを視界に入れたモールは、ごくりと生唾を飲んだ。
ほかの土地で高価な服や宝石に囲まれて、陽の光に晒されることなく暮らしていたジャンティーの肌のきらめきは、今までに見たどの人よりも輝いて見える。

モールは思わず、ジャンティーのシャツの合わせに手を入れた。
柔らかくてすべすべした肌の感触が手に伝わり、モールは体が昂るのを感じた。

──よく見ると、コイツはキレイな顔してるな…

そう思うが早いか、モールはジャンティーを手篭めにしようとシャツのボタンに手をかけて、裸にしようとした。
この際だ、味わえるものはとことん味わい尽くしてやろう。
たとえ男でも、出来ることは出来る。

シャツを脱がせて上半身裸になったジャンティーのスラックスを脱がそうとした瞬間、ゴォーッという地鳴りのような音が響いた。
モールが何事かと辺りを見回すと、いつの間にか、見知らぬ背の高い男が目の前に立っていた。

金髪に青い瞳が特徴的な、美しい男だ。
しかし、あまりに美しすぎて、この世のものではないような、そんな気がした。
肌は陶器のようにすべすべしていてシミひとつないが、それだけに一切の人間味を感じられない。
この雪のように白い肌の下に、血や骨がきちんと通っているのかどうか疑いたくなるほどだ。

「お前、どこのどいつだ⁈どうやってここに来たんだ⁈」
モールは焦って、ジャンティーからも男からも飛び退いた。
この男はいったい、どうやってこの家に入ってきたのだろう。
ドアを開けた音や、足音などもまるで聞こえていなかった。
そもそも、この男はいったい何者なのか。

モールの知っている人物ではない。
いかにも高価そうな服や見たこともない宝石を身に纏っていることを考えると、この街の住人でもなさそうだ。

モールの心臓が、今までにないくらいに激しく脈打つ。
その間に、男の口がゆっくりと開いた。



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