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第2編 消えた人々の行方

近づく危険

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「ジャンティー!」
街中を歩いていると、また昨日と同じようにモールが近づいてきた。
「モール!ちょうどよかった。ちょっと探し物してたんだよ。ぼく、旦那さまからいただいたブレスレットを失くしてしまって…心当たりないかな?」

「ブレスレット?どんなのだ?」
モールはしらばっくれた。
バカバカしいくらいに他人を信用するジャンティーだから、自分が疑われることはまずないだろうが、念には念を入れて知らないフリをした。
「金の装飾に濃いカイヤナイトがついたブレスレットだよ。昨日つけてたの、きみも見たでしょう?」
「ああ、あれか。いや、知らないな」
「そう…ありがとう。それじゃあ、失礼するよ」
ジャンティーがその場を去ろうとした矢先、後ろから肩を掴まれた。
「え?」
驚いたジャンティーが振り返る。
「よかったら、一緒に探してやるよ」
「ほんと?ありがとう!」
驚きは歓喜に変わり、ジャンティーは心から礼を述べた。









─────────────────────






結果、ブレスレットはどこを探しても見つからなかった。
当然といえば当然であろう。
ジャンティーは、昨日来た道しか探していないのだから。
目の前にブレスレットを盗んだ犯人がいるだなんて、夢にも思っていなかった。



「まいったなあ…」
困り果てているジャンティーの背後で、モールは含み笑いを浮かべた。
自分よりいい暮らしをしているジャンティーが、自分がやったことで悩んでいる姿を見ると、まるでジャンティー本人を影から支配しているような気持ちになって大層愉快だった。

「そうだよな。あんないかにも高価そうなものを失くしたとあっちゃあ、旦那さまもタダじゃすまさないだろ?」
モールは漏れ出してしまいそうな笑いを堪えながら、いかにも心配そうな態度を取った。

「いや、旦那さまはひとつ無くなっても気にしないと言ってくれていたよ」
どうしたわけか、ジャンティーは頬を赤らめた。
しかし、モールにとって、そんなことは今どうでもいいことだった。

あのブレスレットを売ったときに得た金は、自分が1ヶ月働いてやっと手に入れられる金額を遥かに上回っていた。
そんな高価なものを、
モールは嫉妬と羨望のあまり、歯ぎしりした。
ブレスレットを失くしたことを理由に、ジャンティーが主人に鞭打たれたり冷遇されることがあったなら、どれだけ気分がよかったことか。

あんな高価なものを若い使用人に渡すほどに気前の良い主人だから、そんなことをしないだろうと予測はついていたが、やはり面白くない。
しかし、ここで不愉快そうな態度を取ってもどうにもならない。

「なあ、よかったら。うちに来ないか?いろんなところを探し回って疲れただろう?うちで休んでから、また探さないか?」
モールは平静を装いつつ、ジャンティーを気遣うフリをした。
ジャンティーに腹が立つことはあっても、彼に取り入っていればそれなり得をするのだ。
だから、多少腹の立つことがあっても、まだ耐えられる。

「……そうだね。じゃあ、お邪魔してもいいかな?」
ジャンティーはしばらく考えた後、気遣わしげに微笑んだ。



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