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第2編 消えた人々の行方

ガブリエルの家

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くすねたブレスレットを質屋に持っていけば、これまでにないくらいの大金を手に入れることができた。
これほど僥倖があるだろうか。

当初の計画とは大きく違えども、ジャンティーはいいカモになるというモールの憶測は、見事に的中した。

ジャンティーがいま仕えている屋敷がどこにあるのか、どんな主人が暮らしているのかだって、おいおいは聞き出せるかもしれない。

降って湧いた幸運に胸を躍らせているうち、モールはある疑念が浮かんだ。


──それにしても、ジャンティーはなんで妹たちについて何も話さなかったんだろう?

──普通、兄弟姉妹に何か変化があったら、真っ先話しそうなものなのに………ひょっとして、妹たちはもう別の男と結婚して遠方に行ってしまったんだろうか?

もしそうなら、どうしたものかとモールはしばらく考え込んだ。
そうしてアレコレ思索しているうち、モールはこの作戦を捨てて、別の手を考えることにした。












──────────────────────








「母ちゃん、ただいま」
ガブリエルが家に帰ると、母親がテーブルの温かい食事を用意していた。
テーブルに並ぶ料理からは湯気が立ちのぼり、香ばしい匂いが鼻腔をくすぐった。

「おかえり、ガブリエル。今日はどうだった?」
「ああ、それなんだけど、ジャンティーが来てたよ。だいぶ前に話してたでしょう?」
ガブリエルはテーブルにつくと、母親が作った料理にありついた。

「最近来なくなった子?今までどうしていたの?ケガをしていたの?病気にかかってしまっていたの?」
「ううん。新しいところで働き始めてたみたい。いいとこのお屋敷みたいでね、服とかがどれも高そうなのばかりだった。それを見たモールがすごく食いついてたよ」
「あらまあ、いいところに就けたのはよかったけど、モールに目をつけられたのは災難かもしれないわね」
母親が心配そうな顔をした。

「そうだよねえ。ジャンティーは純粋だし、騙されやすいところがあるし」
ガブリエルは、今日のモールとジャンティーの様子を思い出した後、ジャンティーのことが少しばかり心配になった。


この街で、モールの素行の悪さを知らない者はいない。
モールは容姿はそこそこに整っており、性格は陽気で社交的な反面、お金にだらしなかった。

周囲にいい顔をするためか、大した余裕もないのに飲み屋の女性や同僚に大盤振る舞いしたり、高価な服や宝石をこれ見よがしに身につけたりする。

おまけに無類の酒好きギャンブル好き。
それで作った借金やツケで、たびたび首が回らなくなる。
その返済のために周囲に泣きついて金を借りるが、返すことはほとんどない。

こんなことを繰り返していれば、彼の大盤振る舞いに応じる者も減っていく。
モールの大盤振る舞いに一度でも乗ろうものなら、後々になって恩を着せるようにして何度も金を無心してくるのだ。

用心深い人はさっさとモールから距離を取るのだけど、純粋で世間知らずで男慣れしていない生娘なんかはコロッと騙される。

不思議なことに、モールは周囲からの評判が悪い反面、魅入られる女性が途絶えることがなかった。
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