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第2編 消えた人々の行方

ガブリエルと親方

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モールと一緒に街の居酒屋まで歩いていくと、道行く人々がみんなジロジロとジャンティーを見てくるし、ときに振り返る人までいる。

いったい、どういうことなのだろうか。
ジャンティーのその素朴な疑問は、モールの一言であっという間に吹き飛んでいった。

「お前ここに来るんなら、せめてもう少しやっすい服で来いよ。そんな上等な服着てこの辺を歩いてたら、目立つに決まってるだろ」
不安そうなジャンティーの様子を見て、何かを察したらしいモールが指摘してきた。

「そ、そうかな…」
ジャンティーは人が着ているものに興味を持ったことがないから、そんなことまったく考えていなかった。

「そうだよ。お前ときたら、相変わらずのボンヤリだなあ」
モールが呆れつつもクスッと笑ってみせた。
この笑みさえ、今はとても懐かしい。



「でも、ここなんてまだいいほうだぜ。東のほうにある街はもっと治安が悪い。お前の今の格好であそこらへんを歩いていたら、きっとあっという間に身ぐるみ剥がされちまうよ。最悪の場合は殺されちまうかも」
「……気をつける。東のほうには行かないようにするよ」
「おう、いい心構えだ」

ジャンティーは、モールの言葉に身震いした。
こんなことなら、もう少しくだけた格好で行くべきだった。
そんな小さな後悔を抱いきながら歩いていると、目的地にたどり着いた。
昔よく立ち寄った居酒屋だ。

初めてここに行こうと誘われたとき、ジャンティーはお金が無いのを理由に断った。
そこから、家庭の事情から金銭的に余裕がないこと、それゆえにこうして働きに出ていること、父親が新しい商売を始めたことなどを話した。

それを聞いたモールは、家族のために働くジャンティーを労って飲食代を負担してくれた。
その上、親方にこの旨を伝えてくれたおかげで、仕事の面でもいろいろな融通が効くようになった。



「ほら、先に入りな」
モールがドアを開けて、ジャンティーを先に通してくれた。
あのときも、モールはこんなふうにジャンティーを中に入れてくれた。

懐かしさを感じながらジャンティーが店内に入れば、ずっと会いたいと感じていた顔が、その場に2つ並んでいた。
あの一軒家に住んでいたときに世話になったジョワイユ親方と、仕事仲間のガブリエルだ。

「親方あ!ガブリエル!ジャンティーだよ!ジャンティーが戻ってきた!!」
モールが2人に向かって叫ぶ。
居酒屋は騒がしいから、どんなに大声を出しても、他の人の声にかき消されそうになる。

「え、ジャンティー?」
「おお、久しぶりだな!」
名前を呼ばれたのと同時に、久しく聞いていなかった名前が出てきたので、2人は驚きのあまり、ブンッと勢いよく首を回して振り返った。

「親方、ガブリエル。久しぶりだね!」
ジャンティーは喜び勇んで2人の元へ駆け込んでいった。

「ジャンティー、久しぶりだね!」
ガブリエルが嬉しそうな顔をして、ジャンティーに突進するように抱きつく。
小柄な体にいきなり飛びかかられたものだから、もう少しで2人そろって倒れるところだった。







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