4 / 44
古城の中
しおりを挟む
そんなシャルルに、さらなる悲運が訪れる。
気温が下がってきて、雪まで降り始めた。
それがだんだん強くなっていき、やがては吹雪に変わっていく。
横殴りに降りしきる雪の中、冷たく凍った強風に何度もよろめきながら、シャルルはなすすべもなく森の中をさまよっていた。
──ああ、どうしたものだろう…
霞む視界の先、シャルルは行く手の先にぼーっと大きな古城がたたずんでいるのを発見した。
どうしたことかと迷いはしたものの、もう足は冷えきって棒のようになっていて、お腹の中は空っぽだ。
シャルルは決心して、一夜の宿を求めるべくお城のほうへと向かっていった。
そうすると不思議なことに、森の中で複雑に絡み合っていた木々の枝や蔦がひとりでにほどけていき、自然と道を開けていく。
吹雪に邪魔されながら、歩きやすくなった道を辿っていくと、硬く閉ざされた鉄の門扉に出迎えられる。
さらに不思議なことに、その鉄の門扉が何の前触れもなく勝手に開いた。
その先には、何十年も何世紀も経たような壮麗な古城が、玉座に座る王のように厳かにドンと建っていた。
そのあまりの物々しさに、シャルルは圧倒されそうだった。
門内に入って石段を上がり、城の前まで足を踏み進めていけば、またしてもアーチ型の鉄の扉が勝手に開いて、シャルルを迎えてくれた。
おそるおそる入ってみれば、石造りの回廊がはるか奥のほうまで伸びていて、その先はまったく見えない。
なんとかそこを通り抜けて、大理石の階段を上がっていくと、暖炉の火が暖かく燃えている大広間に出くわした。
広間の真ん中にドンと鎮座した大きなテーブルの上には、陶器の大皿に盛られた、見るからに美味しそうなご馳走がたくさん並べられている。
どれもつい先ほど作ったばかりかのように、湯気が立っていた。
いったいここは誰の住居なのだろうか。
さっきからの不思議なできごとは、何を意味しているのだろうか。
考えているうちにシャルルは不安になってはきたものの、空腹と疲労が極限に達しているいまでは、そんな疑問と向き合う余裕さえもなかった。
シャルルは無我夢中でテーブルまで向かっていき、きれいに並んだご馳走を次々に平らげていった。
──────────────────────
「……ごめんくださいませ。どなたかいらっしゃいませんか?」
翌朝に目が覚めて、無断で泊まって飲食したことを謝罪しようと、この城の主を探してあちこち呼びかけて回ってはみたが、返答はいっさいない。
ここは無人の城なのだろうか。
だとすれば、あのたくさんのご馳走はいったい誰のためのものなのか。
あの燃えさかる暖炉はいったい誰がつけたのか。
だんだん気味が悪くなったきたシャルルは、もうここから去ってしまおうと、玄関先まで走っていった。
しかし、門のそばまで来たときに、思わず足を止めた。
門の脇に広い花壇があり、真冬だというのに、そこにきれいな赤い薔薇が咲いているのを発見した。
結構に目立つところに咲いていたが、昨夜は吹雪で視界が悪かったから、気がつかなかったのだ。
「おお、なんてありがたい…」
気温が下がってきて、雪まで降り始めた。
それがだんだん強くなっていき、やがては吹雪に変わっていく。
横殴りに降りしきる雪の中、冷たく凍った強風に何度もよろめきながら、シャルルはなすすべもなく森の中をさまよっていた。
──ああ、どうしたものだろう…
霞む視界の先、シャルルは行く手の先にぼーっと大きな古城がたたずんでいるのを発見した。
どうしたことかと迷いはしたものの、もう足は冷えきって棒のようになっていて、お腹の中は空っぽだ。
シャルルは決心して、一夜の宿を求めるべくお城のほうへと向かっていった。
そうすると不思議なことに、森の中で複雑に絡み合っていた木々の枝や蔦がひとりでにほどけていき、自然と道を開けていく。
吹雪に邪魔されながら、歩きやすくなった道を辿っていくと、硬く閉ざされた鉄の門扉に出迎えられる。
さらに不思議なことに、その鉄の門扉が何の前触れもなく勝手に開いた。
その先には、何十年も何世紀も経たような壮麗な古城が、玉座に座る王のように厳かにドンと建っていた。
そのあまりの物々しさに、シャルルは圧倒されそうだった。
門内に入って石段を上がり、城の前まで足を踏み進めていけば、またしてもアーチ型の鉄の扉が勝手に開いて、シャルルを迎えてくれた。
おそるおそる入ってみれば、石造りの回廊がはるか奥のほうまで伸びていて、その先はまったく見えない。
なんとかそこを通り抜けて、大理石の階段を上がっていくと、暖炉の火が暖かく燃えている大広間に出くわした。
広間の真ん中にドンと鎮座した大きなテーブルの上には、陶器の大皿に盛られた、見るからに美味しそうなご馳走がたくさん並べられている。
どれもつい先ほど作ったばかりかのように、湯気が立っていた。
いったいここは誰の住居なのだろうか。
さっきからの不思議なできごとは、何を意味しているのだろうか。
考えているうちにシャルルは不安になってはきたものの、空腹と疲労が極限に達しているいまでは、そんな疑問と向き合う余裕さえもなかった。
シャルルは無我夢中でテーブルまで向かっていき、きれいに並んだご馳走を次々に平らげていった。
──────────────────────
「……ごめんくださいませ。どなたかいらっしゃいませんか?」
翌朝に目が覚めて、無断で泊まって飲食したことを謝罪しようと、この城の主を探してあちこち呼びかけて回ってはみたが、返答はいっさいない。
ここは無人の城なのだろうか。
だとすれば、あのたくさんのご馳走はいったい誰のためのものなのか。
あの燃えさかる暖炉はいったい誰がつけたのか。
だんだん気味が悪くなったきたシャルルは、もうここから去ってしまおうと、玄関先まで走っていった。
しかし、門のそばまで来たときに、思わず足を止めた。
門の脇に広い花壇があり、真冬だというのに、そこにきれいな赤い薔薇が咲いているのを発見した。
結構に目立つところに咲いていたが、昨夜は吹雪で視界が悪かったから、気がつかなかったのだ。
「おお、なんてありがたい…」
1
お気に入りに追加
86
あなたにおすすめの小説
【完結】ただの狼です?神の使いです??
野々宮なつの
BL
気が付いたら高い山の上にいた白狼のディン。気ままに狼暮らしを満喫かと思いきや、どうやら白い生き物は神の使いらしい?
司祭×白狼(人間の姿になります)
神の使いなんて壮大な話と思いきや、好きな人を救いに来ただけのお話です。
全15話+おまけ+番外編
!地震と津波表現がさらっとですがあります。ご注意ください!
番外編更新中です。土日に更新します。
【完結】僕の大事な魔王様
綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
BL
母竜と眠っていた幼いドラゴンは、なぜか人間が住む都市へ召喚された。意味が分からず本能のままに隠れたが発見され、引きずり出されて兵士に殺されそうになる。
「お母さん、お父さん、助けて! 魔王様!!」
魔族の守護者であった魔王様がいない世界で、神様に縋る人間のように叫ぶ。必死の嘆願は幼ドラゴンの魔力を得て、遠くまで響いた。そう、隣接する別の世界から魔王を召喚するほどに……。
俺様魔王×いたいけな幼ドラゴン――成長するまで見守ると決めた魔王は、徐々に真剣な想いを抱くようになる。彼の想いは幼過ぎる竜に届くのか。ハッピーエンド確定
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/11……完結
2023/09/28……カクヨム、週間恋愛 57位
2023/09/23……エブリスタ、トレンドBL 5位
2023/09/23……小説家になろう、日間ファンタジー 39位
2023/09/21……連載開始
総受けルート確定のBLゲーの主人公に転生してしまったんだけど、ここからソロエンドを迎えるにはどうすればいい?
寺一(テライチ)
BL
──妹よ。にいちゃんは、これから五人の男に抱かれるかもしれません。
ユズイはシスコン気味なことを除けばごくふつうの男子高校生。
ある日、熱をだした妹にかわって彼女が予約したゲームを店まで取りにいくことに。
その帰り道、ユズイは階段から足を踏みはずして命を落としてしまう。
そこに現れた女神さまは「あなたはこんなにはやく死ぬはずではなかった、お詫びに好きな条件で転生させてあげます」と言う。
それに「チート転生がしてみたい」と答えるユズイ。
女神さまは喜んで願いを叶えてくれた……ただしBLゲーの世界で。
BLゲーでのチート。それはとにかく攻略対象の好感度がバグレベルで上がっていくということ。
このままではなにもしなくても総受けルートが確定してしまう!
男にモテても仕方ないとユズイはソロエンドを目指すが、チートを望んだ代償は大きくて……!?
溺愛&執着されまくりの学園ラブコメです。
男装の麗人と呼ばれる俺は正真正銘の男なのだが~双子の姉のせいでややこしい事態になっている~
さいはて旅行社
BL
双子の姉が失踪した。
そのせいで、弟である俺が騎士学校を休学して、姉の通っている貴族学校に姉として通うことになってしまった。
姉は男子の制服を着ていたため、服装に違和感はない。
だが、姉は男装の麗人として女子生徒に恐ろしいほど大人気だった。
その女子生徒たちは今、何も知らずに俺を囲んでいる。
女性に囲まれて嬉しい、わけもなく、彼女たちの理想の王子様像を演技しなければならない上に、男性が女子寮の部屋に一歩入っただけでも騒ぎになる貴族学校。
もしこの事実がバレたら退学ぐらいで済むわけがない。。。
周辺国家の情勢がキナ臭くなっていくなかで、俺は双子の姉が戻って来るまで、協力してくれる仲間たちに笑われながらでも、無事にバレずに女子生徒たちの理想の王子様像を演じ切れるのか?
侯爵家の命令でそんなことまでやらないといけない自分を救ってくれるヒロインでもヒーローでも現れるのか?
異世界ぼっち暮らし(神様と一緒!!)
藤雪たすく
BL
愛してくれない家族から旅立ち、希望に満ちた一人暮らしが始まるはずが……異世界で一人暮らしが始まった!?
手違いで人の命を巻き込む神様なんて信じません!!俺が信じる神様はこの世にただ一人……俺の推しは神様です!!
某国の皇子、冒険者となる
くー
BL
俺が転生したのは、とある帝国という国の皇子だった。
転生してから10年、19歳になった俺は、兄の反対を無視して従者とともに城を抜け出すことにした。
俺の本当の望み、冒険者になる夢を叶えるために……
異世界転生主人公がみんなから愛され、冒険を繰り広げ、成長していく物語です。
主人公は魔法使いとして、仲間と力をあわせて魔物や敵と戦います。
※ BL要素は控えめです。
2020年1月30日(木)完結しました。
【完結】運命さんこんにちは、さようなら
ハリネズミ
BL
Ωである神楽 咲(かぐら さき)は『運命』と出会ったが、知らない間に番になっていたのは別の人物、影山 燐(かげやま りん)だった。
とある誤解から思うように優しくできない燐と、番=家族だと考え、家族が欲しかったことから簡単に受け入れてしまったマイペースな咲とのちぐはぐでピュアなラブストーリー。
==========
完結しました。ありがとうございました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる