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決意

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「それは一理ございますがね…」

「あら、何むずかしい顔してるのよ。わたしは浮気したことではなくて、面倒だからと自分がまいた種から逃げたことに怒ったのよ?目の前のことから逃げる人に、国を負う資格など無いと思うのよね、わたし」
アレキサンドリアの言葉に、アルベルティーナは「なるほどそれもそうか」と少し納得もした。

「さて、そうと決まったら、さっそく王子様をこの屋敷にお呼びしましょう」
アレキサンドリアがパンッと両手を叩いて鳴らした。

「アルフレッド王子を?お呼びしてどうするおつもりなのです?」
「ジェヌビエーブと引き合わせるのよ!そのとき、どういう態度をとるかで今後を考えることにするわ。さあ、待っていなさい、アルフレッド王子!ああ、彼がどんな顔をするのか楽しみだわ!!」
オーホッホッホと高笑いを始めるアレキサンドリアに、アルベルティーナは内心血の気が引いていた。

──これじゃあ、どちらが悪人なのか、わかったもんじゃありませんわね…


「ああ、それと、ジェヌビエーブに話を聞いておかないとね!」
言ってアレキサンドリアは、屋敷の一室で休ませていたジェヌビエーブのところへ向かった。

「ジェヌビエーブ、入っていいかしら?」
「ええ…」
ドアをノックしてから部屋に入ると、長椅子に腰掛けていたジェヌビエーブが立ち上がった。

「座っていなさい。ジェヌビエーブ、赤ちゃんと体に障るわよ」
「はい…」
アレキサンドリアが言うと、ジェヌビエーブは腰を元の位置に下ろした。

「話があるの」
アレキサンドリアが、ジェヌビエーブが腰掛けている長椅子に近づいてく。
「…何でしょうか?」
「あなた、今後の身の振り方は決めたの?」
「いえ…」
「あなた自身はどうしたいの?産むの?堕すの?」
ジェヌビエーブは顔を俯かせると、しばらく黙り込んだ。



「わたし、この子を産みたいです!何があっても!!」
ジェヌビエーブが語調を強めて言い放った。
「それが、あなたの本心なのね?」
「そうです。わたし、この子を産みます。この子には、何の罪もありませんし。だから…」

「もういいわ、「産みたい」の一言を聞けたならわたしはそれで充分よ」
ジェヌビエーブが何か言おうとしたところ、アレキサンドリアはそれを制止した。

「聞きたいことが聞けたから、わたしは失礼するわ。出産費用もそれまでの生活も、すべて負担するから、あなたは自分と赤ちゃんのことだけ考えてなさい」
「よ、よろしいのですか?そんな…」

「いいのよ。そうと決まれば、行動開始ね!」
アレキサンドリアがニヤリとほくそ笑んだ。
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